内閣とは、内閣総理大臣及び国務大臣で構成される意思決定を行う組織です。
内閣は三権分立の一角である「行政権」を担っています。
今回は
- 内閣の概要
- 内閣の構成員
- 内閣の仕事内容
などについて詳しくご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、内閣とは
画像出典:首相官邸・初副大臣会議・記念撮影
内閣とは内閣総理大臣及び国務大臣で構成される行政機関です。
より厳格な定義は「国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣によって構成される合議体」となります。
国の重要な法案や予算案を審議し、方針の決定を行います。
ここでは内閣についてより詳しく見ていきましょう。
(1)国の行政を担う組織
行政とは、法律や条例などにより決定された内容を実際に行うことです。
具体的には
- 道路をつくる
- 上下水道を整備する
- ゴミを収集・処理する
- 国公立学校を運営する
- 諸外国と交流を図る
- 国の安全を確保する
- 経済を促進する
などが当たります。
行政の仕事は多岐にわたり、内閣は国全体の行政を担当し、地方自治体は地方の行政(住民が安心して暮らせるサービスの提供など)を担当しています。
(2)三権分立の行政権を担う組織
内閣にはもう1つ重要な役割があり、それは三権分立の一角である行政権を担っていることです。
三権とは
- 行政権
- 立法権
- 司法権
の3つの国家権力のことです。
画像出典:衆議院
そしてこの3つの権力は、互いに抑制しあいバランスを保っています。
これにより、1箇所に権力が集中して暴走すること(国民の人権を侵害するなど)を防げるのです。
行政は内閣が、立法は国会が、司法は裁判所が担います。
3つ機関の関係は以下のようになっています。
- 内閣:内閣は国会がつくる法律の範囲内でしか行政を行えず、裁判所から適法性の審査を受ける。
- 国会:国会のうち衆議院は内閣によって解散させられることがあり、裁判所は国会のつくった法律が、憲法に違反していないかを審査する違憲立法審査権を持つ。
- 裁判所:裁判所の実質的な人事は、内閣が行う。最高裁判所長官は内閣が指名し、その他の裁判官も内閣が任命する。国会は、裁判所の運営に関わる法律をつくることができ、裁判官に相応しくない裁判官を辞めさせる弾劾裁判所を用いて裁判官を罷免できる。
2、内閣はどのようなメンバーで構成されているか
ここでは内閣の構成員についてご紹介します。
(1)内閣は首相及び国務大臣によって構成される
内閣のトップは「内閣総理大臣(首相)」で、国会議員のなかから投票で選ばれます。
総理大臣のなり方や職務については以下の関連記事でご紹介しています。
総理大臣になるには?4つのプロセスを簡単解説
内閣は首相が選んだ国務大臣で組織されます。
基本的に国務大臣は16人以内です。
特別な事情がある場合は、3人を上限としてその人数を増やすことができます。
ただし国務大臣の過半数は国会議員で組織しなければなりません。
これを満たしていれば、国会議員でない人を国務大臣にすることも可能です。
参考:首相官邸
(2)全員文民である必要がある
内閣のメンバーは全員文民でなければなりません。
文民とは、軍人ではない人のことです。
内閣に関するルールは「憲法第66条」などに書かれてあり、その条文は以下のとおりです。
憲法第66条
第1項:内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する
第2項:内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない
第3項:内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う
引用:日本国憲法
憲法第68条第1項
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。ただし、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない
引用:日本国憲法
(3)特命担当大臣
国務大臣には、官房長官などの省庁を所管する大臣の他に、特命担当大臣がいます。
特命担当大臣は、内閣の重要政策を迅速に実行するためにつくられた職位です。
例えば、以下のような特命担当大臣があります。
- 金融の特命担当大臣
- マイナンバー制度の特命担当大臣
- 男女共同参画の特命大臣
- 沖縄及び北方対策、消費者及び食品安全、少子化対策、海洋政策の特命大臣
- クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策の特命大臣
- 原子力損害賠償・廃炉等支援機構の特命大臣
- 地方創生、規制改革の特命大臣
- 経済財政政策の特命大臣
- 防災の特命大臣
- 原子力防災の特命大臣
参考:内閣府 大臣
特命担当大臣には、法律上必ず設置しなくてはならないとされているものもあります。
一方任意に設置されるものもあります。
また、特命担当大臣は期間限定である場合があります(東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当など)。
参考:参議院法制局
3、内閣の仕事とは
ここでは内閣の仕事について詳しく見ていきましょう。
(1)内閣の仕事概要
内閣は大きく
- 国民の暮らし
- 経済活動
- 予算と税金
- 諸外国との連携
に関わる仕事を行います。
こうした仕事を行うために法案や予算案を作成し、国会に提出しているのです。
それぞれの具体的な内容について見ていきましょう。
①国民の暮らし
国民の暮らしを支える仕事としては
- 子供の教育
- 病気などから国民の健康を守る
- 労働者の環境整備
などが一例として挙げられます。
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②経済活動
また、経済活動を支える仕事としては
- 科学技術発展の促進
- 人の移動や物の輸送をスムーズなものに
- 国民が食糧に困らないようにする
- 企業の経営を支援
などが挙げられます。
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③予算と税金
予算と税金に関わる仕事では
- 政策を実施するための予算案をつくり国会に提出する
- 税金を集める
などが考えられます。
集められた税金や予算は政策の実行や社会保障費用にあてられます。
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④諸外国との連携
また諸外国との関わり合いにおいては
- 困っている(貧困や災害など)国や地域に援助を行う
- 貿易を行う
- 地球環境を保全するための取り組み(低炭素社会の実現、CO2の排出抑制など)
- 国防
- 世界平和に向けた活動
などが一例として挙げられます。
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参考:首相官邸
(2)憲法に定められた内閣の仕事
ここでは更に詳しく憲法に規定されている内閣の仕事についてご紹介します。
まず、内閣の関わる仕事には以下のようなものがあります。
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国会の指名に基づく内閣総理大臣の任命
-
内閣の指名に基づく最高裁判所の長たる裁判官の任命
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憲法改正、法律、政令及び条約の公布
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国会の召集
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衆議院の解散
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国会議員の総選挙の施行の公示
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国務大臣等の任免の認証
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全権委任状及び大使・公使の信任状の認証
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大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の認証
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栄典の授与
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条約の批准書及びその他の外交文書の認証
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外国の大使、公使の接受
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儀式の挙行
引用:内閣制度の概要
以上は天皇の国事行為でもあります。
天皇の国事行為は、内閣の助言と承認が必要であり、天皇ではなく内閣がその責任を負うことになっています。
また、「憲法第73条」では内閣の所管する事務として、次の7つの行政事務を掲げています。
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法律を誠実に執行し、国務を総理すること
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外交関係を処理すること
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条約を締結すること
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法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること
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予算を作成して国会に提出すること
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憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること
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大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること
引用:内閣制度の概要
更に以下のような役割も担っています。
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最高裁判所の長たる裁判官の指名(日本国憲法第6条)
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最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官及び下級裁判所の裁判官の任命(第79条、第80条)
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国会の臨時会の召集の決定(第53条)
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議案の国会への提出(第72条)
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参議院の緊急集会の請求(第54条)
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予備費の支出(第87条)
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決算の国会への提出(第90条)
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財政状況についての国会及び国民への報告(第91条)
引用:内閣制度の概要
まとめ
内閣の仕事である行政は、国会で定められた法律の範囲内でしか行えません。
また裁判所は、内閣が法律に沿った行動をしているかチェックすることで、適切な行政を実現しています。
行政の理解を深めるためにも、内閣の動向に注目してみましょう。