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観光産業とは?国家戦略にも組み込まれる観光政策について簡単解説

投稿日2021.2.15
最終更新日2021.02.15

観光産業とは、観光資源(地域特有の文化やリゾート地)を用いて観光客を誘致する事業です。
政府は観光産業を重視し、これを利用して日本の経済成長を促進させることを目指しています。

そこで今回は

  • 観光産業の概要
  • 観光庁について
  • 国の観光政策
  • 観光産業の課題

などについてご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、観光産業とは?

観光産業
観光産業とは、観光資源を整備、開発、保護をして、観光客をもてなす事業を指します。
観光産業では

  • さまざまな業種の企業が参入できる
  • 多くの雇用を生み出すことができる
  • 地域の活性化につながる
  • 自国民と外国人の両方を集客できる

といったメリットがあるので、政府も成長戦略の柱に据えているほどです。

2、観光庁とは

観光庁とは、国の観光に関する事務を管轄する行政機関です。
観光庁は国土交通省の外局という位置づけになります。

観光庁の業務は主に以下のとおりです。

  • 観光政策の企画、立案
  • 観光統計や経済分析
  • 観光産業の発展や改善の全体統括
  • 民泊事業や観光ファンドの監督
  • 地方との連携
  • 訪日プロモーションの統括
  • 国際観光支援
  • 国際機関との連絡、調整
  • 観光を通じた地域振興の支援
  • 地域へのコンサルティング
  • 観光地域づくり
  • 観光資源の磨き上げ

国土交通省は地方に出先機関の「運輸局」を持ち、各地の運輸局には「観光課」があります。
観光課は地方自治体や地元の観光協会と連携しながら、きめ細やかな観光振興を実施しています。

参考:観光庁

3、国の観光政策について

観光産業
政府は自国における観光を

  • 地方創生の切り札
  • GDP600兆円達成に向けた成長戦略の柱

と位置付けて、観光産業の発展に力を入れています。

政府の観光関連の具体的目標は以下のとおりです。

  • 訪日外国人旅行者を2030年までに6000万人にする
  • 訪日外国人旅行者の消費額を2030年までに15兆円にする

この目標を達成するために、政府と観光庁は

  1. アクション・プログラム
  2. 観光地域づくり
  3. 国際観光

といったさまざまな策を講じています。各内容について詳しく見ていきます。

参考:首相官邸

(1)アクション・プログラム

政府は、首相をトップにした観光立国推進閣僚会議を立ち上げ、「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」を策定しました。

2020年版は「観光ビジョン実現プログラム2020」と呼ばれ、主に以下のような内容になっています。

  • コロナ禍で打撃を受けた観光産業で、雇用の維持と事業の継続を支援する
  • 観光需要の回復に向けた基盤を整備する
  • 観光消費の8割を占める国内旅行需要を強力に喚起する
  • 誘客可能となった海外の国や地域からインバウンドの回復を図る

参考:観光庁政策について

(2)観光地域づくり

観光庁はまた、観光地域づくりに力を入れています。

観光産業は、観光資源の魅力だけでは成長させることができません。
観光客の受け入れ環境を整備し、効果的な宣伝を行うことで、観光地域づくりを促進することができます。

そこで観光庁は、観光地域づくりとして、

  • 相談窓口の開設
  • 支援団体「観光地域づくり法人」の設立
  • 観光庁の支援メニューの周知

などに取り組んでいます。

参考:観光庁政策について

(3)国際観光

日本の観光産業は、国民だけではなく、外国人にも選ばれる魅力を生み出す必要があります。
これを実現するために、政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。

同ビジョンでは主に以下の内容に取り組むことを示しています。

  • 魅力ある公的施設を広く国民に、そして世界に開放
  • 文化財を保存優先から観光客目線での理解促進、そして活用へ
  • 国立公園を世界水準のナショナルパークへ
  • おもな観光地で景観計画をつくり美しい街並みへ
  • 古い規制を見直し生産性を大切にする観光産業へ
  • 新しい市場を開拓し長期滞在と消費拡大を同時に実現
  • 疲弊した温泉街や地方都市を未来発想の経営で再生・活性化
  • ソフトインフラを飛躍的に改善し世界一快適な滞在を実現
  • 地方創生回廊を完備し全国どこへでも快適な旅行を実現
  • 働き方と休み方を改革し躍動感あふれる社会を実現

参考:観光庁政策について

4、観光産業の課題

日本の観光産業には、さまざまな課題があります。
今回は主な課題である

  1. 訪日外国人の旅行地の偏り
  2. 長期的滞在の伸び悩み
  3. 環境保全
  4. 人手不足と人余り

の4つについて紹介します。

(1)訪日外国人の旅行地の偏り

コロナ禍の影響以前では、訪日外国人の人数は順調に増えていました。
しかし、地方圏の訪日外国人宿泊客数のシェアは、東京・名古屋・大阪の3大都市圏と比較すると少ないことが分かります。

外国人の宿泊地は、東京・名古屋・大阪などの大都市に偏る傾向にあるようです。
参考:インバウンド需要の地方圏への波及に向けた鍵は何か

(2)長期的滞在の伸び悩み

観光客の長期滞在が伸び悩んでいる点も、解決しなければなりません。
観光客に長期滞在してもらうことで、現地の宿泊業や飲食業での利益が上がり、地域の活性化に繋げることができます。

どのようにすれば長期間、宿泊してもらえるのかを検討していく必要性があります。
参考:国土交通省 観光をめぐる諸事情

(3)環境保全

観光資源が自然環境の場合、観光客の誘致は自然破壊に繋がる可能性があります。

また観光客が増えて高層のホテルなどが乱立してしまうと、景観を損ねてしまい、美しい自然や古都などの観光的な価値が下がってしまうかもしれません。

そのため、観光振興をしながらも環境保全に取り組む必要があります。

参考:国土交通省 観光をめぐる諸事情

(4)人手不足と人余り

少子高齢化に伴う労働人口の減少により、観光産業でも現地の人手不足が問題となっています。

その一方で、コロナ禍のような大規模な経済危機を誘発する出来事が発生すると、観光客が大幅に減少し、人余りといった事態が起きてしまいます。

また、ブームが過ぎた観光地では、職場が少なくなる傾向にあるようです。

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参考:国土交通省 観光をめぐる諸事情
参考:観光新興国ニッポン “おもてなし”人手不足 人材の確保は

まとめ

ここまで観光産業についてご紹介してきました。
政府は、経済を発展させるために観光産業に力を入れています。
取り組むべき課題もありますが、観光立国を実現することで、日本全体の活性化に繋がるのは大きな魅力です。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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