県議会議員とは、各都道府県の代表者です。
各都道府県から選挙によって選出されています。
国会や国会議員については何となくイメージできても、県議会議員についてはよくわからないという人もいるのではないでしょうか。
県議会議員は、各都道府県で開かれる議会に参加して、各都道府県の
- 条例の制定
- 予算決定
に関する議決を行っています。
今回は、県議会議員について、以下のとおり詳しく解説します。
- 県議会議員、県議会の概要
- 県議会議員のなり方
- 県議会議員と問責決議について
本記事がお役に立てば幸いです。
1、県議会議員とは
県議会議員とは、各都道府県から選挙によって選出された、各都道府県の代表者です。
県議会議員を選ぶ選挙は4年ごとに行われます。
県議会議員の主な仕事は、
- 条例の制定
- 予算の決定
- 県の活動の監視(決算の審査)
- 適切な議決や政策立案を行うための調査・研究
など、各都道府県において市民がより暮らしやすくなるように課題などに対処しています。
国会議員が国政全体に関わる一方、県議会議員は所属する都道府県の政治に範囲を絞って活動しているのです。
また以下の関連記事では市議会議員についてもご紹介しています。
市議会議員とは?仕事内容や市議会議員になる方法を簡単解説
2、県議会とは
県議会議員の活動は、県議会を中心に行われますが、そもそも県議会とは何なのでしょうか。
県議会は各都道府県で、条例の制定や改正・予算の決定などを行う機関です。
47都道府県全てに置かれていますが、ここでは茨城県議会を参考にご紹介します。
会期は以下のとおりです。
- 定例会:年4回(6月・9月・12月・2月:20~25日程度)
- 臨時会:県議会議員の選挙後や大規模災害が発生した場合など、必要に応じて開会
県議会では、都道府県の選挙で選ばれた県議会議員が県民を代表して議論を行っています。
このような相談・決定の場を、議決機関と言います。
国会では参議院・衆議院と2つに別れていますが、県議会は1つだけです。
県議会で決められたことは、
- 知事部局
- 教育委員会
- 公安委員会
などの執行機関で実行に移されます。
決められたことに基づいて、実際に仕事をする所を、執行機関といいます。
県議会は、県議会で決められたとおりに物事が進められているかどうか、執行機関の仕事が適正かどうか、調査する権限を持ちます。
議論をして決定するだけではなく、滞りなく進んでいるかについても確認しているのです。
議決機関(県議会)と執行機関(知事部局・教育委員会・公安委員会など)は、それぞれ独立した機関として対等の立場です。
お互いに協力して都道府県の政治を運営し、県民のより良い暮らしの実現を目指しています。
3、県議会議員の具体的な仕事内容
続いて、県議会議員の具体的な仕事内容を紹介します。
県議会への出席が主な業務となりますが、会期は100日程度です。
議会への出席以外には、どのような活動を行っているのでしょうか。
(1)基本的な業務
会期中は議会への出席が主な業務です。
会期中は分刻みで動くことも多く、非常に多忙な毎日を送るようです。
議会の出席以外にも、
- 議会の打ち合わせ、準備
- 勉強会参加
- 委員会出席
- 所属団体の会合出席
などの活動を行います。
県議会議員も国会議員と同じく、「自民党」や「日本維新の会」などの政党に所属することが多く、会合への出席も重要な仕事の1つです。
また、議会閉会中も暇ではなく、会期中と同じように多忙です。
次の議会開催に備えて、
- 県政が抱える課題を調査、研究
- 県民の意見や要望をヒアリング(タウンミーティングなど)
などの活動を行っています。
あわせて、次期選挙を意識した以下のような活動も必要です。
- 街頭演説
- 後援会や支援者への挨拶まわり
- 祭りなどの地域イベントへの参加
- 活動報告会や地域懇親会への参加
票を集めるため、多くの人たちに顔と実績を知ってもらう必要があります。
このような地道な活動も重要な仕事の1つと言えるでしょう。
(2)請願や陳情についての対応
都道府県民自身が、県政に要望や意見を訴える手段としては「請願」や「陳情」があり、その対応も県議会議員の仕事の1つです。
引き続き、茨城県議会の例を参考に紹介します。
まず、請願と陳情には以下の違いがあります。
- 請願:議員の紹介があるもの、憲法で保障された国民の基本的権利
- 陳情:議員の紹介がないもの
請願は、議員の紹介を必要とし、その方式や処理の手続きなどが定められています。
とはいえ、請願を受けたからといって、必ず受け入れなければならないわけではありません。
おおまかに、以下の流れで進みます。
- 委員会で審査をする
- 本会議において採否を決定する(採否の結果を請願者に通知)
- 採択となった事案において執行機関にて処理すべきものがあれば、知事などに送付する
- 執行機関に経過や結果の報告を求める
陳情は、委員会で審査をされますが、本会議にかけられることはありません。
4、県議会議員の収入
総じて多忙な県議会議員の仕事ですが、気になる収入はどのくらいなのでしょうか。
以下では徳島県の例を参考に紹介します。
徳島県の例ですので、他都道府県とは違いがあることをご理解ください。
まず、月額報酬は以下の通りです。
- 議長:95万円(92万円)
- 副議長:86万円(84万円)
- 議員:81万円(79万円)
※2020年4月~2021年3月までは、()内のとおり減額
次に、期末手当は報酬月額の3〜4か月分(6月期、12月期の年2回に分けて受領)です。
大まかに計算すると、以下のとおりです。
- 議長:285〜380万円
- 副議長:258〜344万円
- 議員:243〜324万円
通常年度の月額報酬で計算しています。
よって、年収を単純計算するとおおよそ以下のとおりです。
- 議長:1472.5万円
- 副議長:1333万円
- 議員:1255.5万円
このほかにも、使い道が決められている政務活動費や献金、パーティーなどで収入が見込めますが、政治活動には高額な費用がかかることも現実です。
一般的には高収入に見える県議会議員ですが、その収入の多くが政治活動資金に消えている人も少なくないでしょう。
5、県議会議員の立候補条件及び当選までの流れ
県議会議員になるためにはどうしたらよいのでしょうか?
なる方法を一言で言えば「選挙で選ばれる」に尽きます。
具体的にその流れを見ていきましょう。
(1)立候補(出馬)条件
条件はたった3つです。
- 満25歳以上の日本国民であること
- 3か月以上その都道府県内の同一の市区町村に住所のある人
- 供託金60万円を提出できること
供託金とは、法務局に一時的に預けるお金です。
選挙で規定の得票数に達しなかった場合や、立候補をとりやめた場合は没収されますが、規定の得票数を上回れば返還されます。
金額については、例えば衆議院小選挙区選挙で必要な300万円と比較するとそれほど高額ではありません。
条件自体のハードルが高いものではありませんが、県政に関わる上で政治知識は欠かせませんし、医療・介護問題なども含めた幅広い専門知識が求められます。
立候補にあたっては、それ相応の準備が必要となるでしょう。
(2)当選までの道のり
先にご紹介した通り、県議会議員になるためには、選挙に立候補して当選するしかありません。
いきなり立候補して当選する人もいますが、一般的には地盤づくりを行うのが先です。
地元の有力者のもとで働きながら政治知識を蓄えたり、親族の地盤を引き継いだりして足場を固めます。
また、都道府県単位という広い範囲で指示を得る必要があるため、多くの企業や団体の支持を得ないと当選するだけの得票が望めません。
政党の公認や推薦を得ることもポイントの一つとなるでしょう。
6、県議会議員と問責決議について
新型コロナウイルス関連で起きた県政の大きな出来事といえば、静岡県政史上初となった県議会議員に対する問責決議でしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが品薄状態の中、焼津市選出の諸田洋之県議(無所属)が、インターネットオークションに大量のマスクを出品していた問題が発覚しました。
高額転売を助長する行為であり、批判が殺到しました。
実際に、県議会事務局当てに全国から千件を超える苦情が殺到しました。
そこで、県議会は2月定例会最終本会議において、「道義的、政治的な責任は極めて重い」とする諸田氏の問責決議案を全会一致で可決したのです。
問責決議とは、首長や議員の不適当な発言や行動に対して「ふさわしくない、責任を問う必要がある」と議会が判断した場合に提出されます。
過半数で可決されますが、法的拘束力はありません。
実際、諸田氏は決議後に「県議の仕事でお返ししたい」と述べて議員辞職を否定しました。
議員辞職とはならなかったものの、県議の品位やモラルが問われる大きな問題となったのです。
まとめ
今回は県議会議員について詳しくご紹介しました。
県議会議員や県議会の概要、なり方だけではなく、昨今のコロナウイルスの問題とあわせた議員の不祥事についてもおわかりいただけたのではないでしょうか。
収入だけを見ると高収入で良い暮らしをしているようにも思えますし、立候補するための条件もそれほど厳しいものではありません。
しかし実際の活動は多忙を極め、議員自らが負担する政治活動費も多いです。
また、県民を代表して政治を行おうと思った時点で、政治に関する知識やもちろん、暮らしに関わる幅広い分野の専門知識が必要です。
本記事が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。