市議会議員とは市政(市の政治)を担う議員を指します。
市議会議員は市民がよりよく暮らせるように市議会にて議案について話し合います。
しかしこれだけでは市議会議員がどのような存在なのかイメージがつかない方も多いと思われます。
そこでこの記事では、
- 市議会議員及び市議会の役割
- 市議会議員の報酬や定数
- どうしたら市議会議員になれるのか
などについて解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、市議会議員とは
市議会議員は、市民の代表として選挙で選ばれ、「市議会」という組織を構成しています。
市議会では市議会議員が市民のために様々な議案について話し合い、街の課題などに対して具体的にどうしていくかを決定します。
これが市議会議員の主な役割です。
市民の要望をきちんと市政に反映させる必要があるため、市議会議員はその街の財政などについて把握していなければなりません。
また、議会が閉会している際はブログやSNSなどを通して市民に「街の課題などに対してこのような対応をすることになった」という報告を行うこともあります。
例えば小金井市の市議会議員である白井亨氏はブログにて積極的な発信を行なっています。
参考:もっと小金井市を、おもしろく。〜白井亨(小金井市議会議員)blog
市議会議員の仕事内容については更に後述します。
(1)市議会議員の具体的業務
市議会議員の仕事内容をより詳しく見ていきましょう。
市議会議員の主な仕事は、本会議や委員会に出席して、議案の内容を精査・検討して、議案を承認するかどうか決めることです。
例えば、市長が「市道をつくりたい」と考え、必要な予算を承認してほしいと市議会に承認を求めたとします。
市議会の承認なしに市長が政策を執行することはできません。
このとき市長は市議会に対し、新たな市道が必要になる理由を説明します。
しかし、その説明が本当に合理的であるか慎重に判断する必要があります。
これは財源が税金であるためです。
そこで市議会議員が委員会や本会議の場で、さまざまな角度から質問をします。
また、市議会議員は、市議会の外でも仕事をします。
この外での仕事は主に住民のニーズや困りごとを探ることです。
例えば市議会議員が、既存の市道の損壊が激しいことを見つけることができたら、市長から新しい道路の建設を提案されたとき、「新しい道路をつくるのではなく、その予算を既存の壊れた市道の修復に使ったらどうか」と意見することができます。
したがって市議会議員は、普段から「アンテナ」を張っておく必要があります。
また、市議会に対して政策を提案するのは市長だけというわけではなく、市議会議員が政策を提案することもあります。
(2)市議会議員たちは市長の仕事をチェックする
市長は市という行政機関のトップでありながら、政治も行ないます。
市議会議員と市長の関係において、「市長は市議会議員及び議会よりも権力が強い」という印象を持たれるかもしれませんが、それは正しい認識とは言えません。
市長が提案する予算案や政策案を承認するかどうかは、市議会議員たち(市議会)が決めるのです。
市議会が予算案を承認して初めて、政策を執行することができます。
そのため、市議会議員は市長の仕事をチェックしているのです。
ただ市長は、市議会内に与党と呼ばれるグループをつくることがあります。
与党とは、市長の行政方針を支持する仲間のような存在です。
与党に所属する市議会議員が市議会の過半数に達すれば市長の予算案を承認することができます。
市長が強くなるか、市議会議員が強くなるかは、市議会制度のルールと彼らの政治力によって決まります。
(3)国会議員は市議会議員より「上」というわけではない
国家議員は市議会議員より漠然と「偉い」と思われる方もいるかもしれませんが、法律的に上下関係が定められているわけではありません。
それでも多くの人が、国会議員を「議員のトップ」としてみなすのは、彼らが法律をつくっているからかもしれません。
市議会議員も条例をつくり、市の行政運営をコントロールしていますが、条例は法律に違反してはいけません。
地方自治体法第14条では
「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて(中略)条例を制定することができる」
と定められています。
つまり、市議会議員たちがつくる条例より、国会議員がつくる法律のほうがルールとして強いので、そのイメージから「国会議員は市議会議員より偉い」という印象が生まれてしまったのでしょう。
また、国の事業の規模は、市の事業規模に比べるとはるかに大きいので、国会議員のほうがより大きな利権に関わります。
しかし、市などのことを地方自治体と呼ぶように、市区町村民には自治が認められています。
自分たちで自分たちの地域のことを治めていくことは地域運営の理想の形であり、市議会議員はその重要な担い手になっているので、「国会議員より下」ということはありません。
2、市議会とは
繰り返しになりますが、市議会は市という行政機関をチェックする議会で、市議会議員で構成されます。
市議会の運営方法と権限についてみていきましょう。
(1)市議会はどのように運用されるのか
市長の行政をチェックするのが市議会で、議会制度は民主主義の根幹をなします。
まず市長は、市議会の「本会議」に議案を提出します。
本会議は、市議会議員全員が参加する会合です。
議案を提出することで、市長は「私はこういうことをしたい」と表明するわけです。
市長の議案の内容は、
- インフラ整備
- 教育
- 経済
- 観光
など多岐にわたります。
そのため、市議会議員全員が出席する本会議ですべての議案を検討することは非効率です。
そこで市議会は、検討するテーマごとに各種委員会をつくっています。
それぞれの委員会に市議会議員を配置して、テーマごとの議案を検討します。
また、委員会で「議案を承認する」と決めても、それで正式に承認されるわけではありません。
委員会で承認された議案は、本会議に回され、市議会議員全員で最終決定するかどうか決めます。
ただ最終決定といっても、委員会での検討が重視される傾向にあるようです。
そのため、委員会で否決された議案は本会議で可決されることはないので、市長はやりたかったことを諦めるか、議案を修正して次の市議会に提案するかを決めることになります。
(2)市議会の権限
市議会は、多くの権限を有しています。
最も強い権限は「議決権」で、市長が出した議案をどうするか決めることができます。
市議会はその他に、
- 市の行政活動を調査する「調査権」
- 市の行政運営を監視する「監視権」や「検査権」
- 議長や副議長などを選出する「選挙権」
などの権限を持ちます。
3、市議会議員の定数
市議会議員は複数人で構成され、2014年時点では、831の市に19,570人の市議会議員がいます。
市議会議員の平均人数は平成26年時点で1市あたり24.1人になります(東京23区を含む)。
市議会議員の定数は、それぞれの市議会ごとに決めることができます。
以前は地方自治法で定員が決められていましたが、現在はそのルールは撤廃されています。
4、市議会議員の平均報酬月額は407,000円
全国都道府県議会議長会によると、2019年の全国の市議会議員の平均報酬月額は407,000円で、2002年の431,000円より5.6%減っています。
都道府県議会議員は、2002年の838,000円/月から2019年の813,000円へと3.0%減でした。
町村議会議員は、2002年の382,000円/月から2019年の314,000円へと17.8%減でした。
報酬額は「町村議会議員<市議会議員<都道府県議会議員」となっていて、行政機関の規模が大きくなるにつれて報酬が上がることがわかります。
市議会議員の報酬については以下の関連記事で更に詳しくご紹介しています。
市議会議員の給料はどれ位?市議会議員の報酬事情を解説
5、市議会議員になるには
市議会議員になるには、原則4年に一度行われる市議会議員選挙に立候補して当選しなければなりません。
市議会議員に立候補できるのは、その市に住み始めて3カ月以上が経過している満25歳以上の日本人です。
- 国会議員
- 都道府県知事
- 都道府県議会議員
- 市区町村長
の立候補の条件は主に「日本人であること」と「年齢(25歳以上または30歳以上)」の2つですが(厳密には法務局に定められた共託金を預けるなどの条件もあります)
- 市議会議員
- 区議会議員
- 町村議会議員
にはさらに「その場所に3カ月以上住んでいなければならない」という条件が加わります。
まとめ
市議会議員は最も身近な政治家であり、彼らの仕事は日本の民主主義のベースになっているといっても過言ではありません。
また、市議会議員から市長になったり、国会議員になったりすることもあります。
市議会議員を知ることで、日本の民主主義や日本の政治が見えてくるかもしれません。