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衆議院の優越とは?特権や参議院には無い理由、優越の限界を解説

投稿日2020.3.4
最終更新日2020.09.07

衆議院の優越とは参議院と意見の合致ができない場合に衆議院の意思が優先される制度です。
日本の国会は、衆議院と参議院の2つの議院で成り立っています。
これを二院制といい、どちらも国民の代表で権力を持ちます。

日本が二院制を用いるのは、一般的には以下のような理由があげられます。

・議題に対し二重のチェックを行い慎重な判断を下す

・政治的空白(政治を運営する機関が一時的に無くなる状態)をつくらない

しかし、2つの院は平等に権力を保持しているわけではないのです。
衆議院の方が衆議院の優越により強い権力を保持しています。それは何故なのでしょうか?

そこで今回は、「衆議院の優越とは?」という疑問に対して、具体的な権利内容に触れながらわかりやすく解説します。
この記事がお役に立てば幸いです。

1、衆議院の優越とは?

衆議院の優越(画像はイメージです)

衆議院と参議院は、ほぼ対等な関係性を持っています。
しかし一定の条件のもと法律案や予算案の議決の際に、衆議院の意思が優先されます。
これを「衆議院の優越」と呼びます。

その権限は大きく2つに分けられ

  • 憲法上の優越
  • 国会法上の優越

となっています。

それぞれの権利について具体的に解説していきます。

また、このような特徴を持つ衆議院に対して参議院は「良識の府」と呼ばれています。
参議院は衆議院と比べ議員の任期も長く、解散も無いので多様な人材が揃っているとみなされています。
そのため充実した議論により、優遇されている衆議院を抑制し行き過ぎを抑えることが役割として期待されています。
これが良識の府と呼ばれる由縁です。

(1)憲法上の優越

憲法上の優越とは、具体的に以下に挙げた6つのことを指します。

  • 法律案の再議決
  • 予算先議権
  • 予算案の議決
  • 条約の承認
  • 内閣総理大臣の指名
  • 内閣不信任決議

1つ1つ解説していきます。

①法律案の再議決

法律案を再議決する場面において、参議院が法律案に異議を申し立てても、衆議院で出席議員の3分の2以上の特別可決で再可決すればその法案は成立します(憲法59条2項)。

また衆議院で可決済みの法律案を参議院が受けて、60日以内に何も結論を出さないときは参議院の否決とみなされます(憲法59条4項)。
この場合も同様に法律案の再議決になりますので、衆議院で上記の通りに可決すれば法案が成立します。

参議院がどんな意見を出したとしても、上記ケースに該当すれば意見は無視されることになります。
ここでのポイントは「再議決」です。
案を通すためには最低60日の待機期間の後、もう1度議決をして賛成多数を得なければならないという点に注意しましょう。

②予算先議権

予算に関しては衆議院が先に先議・議決できます(憲法60条)。
これを「予算先議権」といいます。

予算が無ければ国費の支出や法の執行などはできず、国の機能は止まってしまいます。
この規定はそのような事態を避けるため、予算執行が迅速におこなわれるよう設けられたと言えます。

③予算案の議決

衆議院と参議院で予算案について意見がそろわないときは、衆議院の意思を優先させる形で予算が決定されます。
なぜなら、予算が決まらなければ、国政が先に進まないためです。

具体的には、以下の場面に当てはまる場合に、衆議院の意見が国会の議決として優先的に採用されます。(憲法60条2項

  • 両院協議会(各議院から10人ずつ、合計20人の代表議員から構成され、意見がそろわないときに話し合う場)でも折り合いがつかない
  • 30日以内に参議院が考えをまとめない

このいずれかに該当する場合は、自動的に衆議院の決めた予算で決定されます。
ただし上記の30日という日程期限は国会の休会中を除きます。

④条約の承認

意見がそろわない場合のシステムは、予算案と同様衆議院の意思が優先されます。(憲法61条

  • 両院協議会でも折り合いがつかない
  • 30日以内に参議院が考えをまとめない

ただしこの30日は国会の休会中を除きます。
条約を衆議院が承認しており、上記のいずれかに当てはまる場合その条約はそのまま条約締結となります。
予算と違って先議権はないため、両議院のどちらが先に条約の承認の決議をおこなっても憲法上問題ありません。

⑤内閣総理大臣の指名

日本政界のトップにふさわしい人物を両議院から各1名ずつ指名し、その人物が同じであれば問題ありません。
ですが、お互いの指名が異なるケースももちろんあります。

いつまでも国の総理大臣が決まらず、日本の政治がストップしたままでは困りますよね。
万が一他国が日本に攻めてきた場合、首相の命令がなければ自衛隊も動けません。

そこで、国政が停滞しないよう以下のいずれかに該当するときは、衆議院の意思が優先的に採用されます。(憲法67条2項

  • 両院協議会を開いても折り合いがつかない
  • 10日以内に参議院が考えをまとめない

つまり衆議院で選ばれた者がそのまま首相に就任するのです。
ただし、上記の日程期限は国会の休会中を除きます。

⑥内閣不信任決議権

これは衆議院だけが持っている権利です。
不信任案決議が決まった場合、内閣は10日以内に総辞職か、衆議院を解散しなければなりません。

(2)国会法上の優越

国会法上で衆議院が優先される権限についてもみていきましょう。

具体的には以下の3つが挙げられます。

  • 国会会期の延長
  • 臨時会・特別会の会期延長
  • 両院協議会の開催請求(法律案)

上記の延長について両議院の折り合いがつかない、もしくは参議院が考えをまとめないときは衆議院の意見が重視されます。
そのため実際には、多くの場合、参議院では会期延長についての議決をおこなっていません。

ほかにも法律案に対する意見がまとまらないときに、協議会の開催を求めることも優越権に含まれています。
そこで決着がつかなければ、最終的に衆議院のもつ優越権が発動します。

2、両院協議会とは

両院協議会参議院ホームページから引用

各議院から10人ずつ、合計20人の代表議員から構成され、意見がそろわないときに話し合う場のことです。
絶大な力を誇る「衆議院の優越」ですが、予算や条約など特に重要な事項を決めるときは両院協議会を開くことが前もって決められています。

開催が義務化されているのは以下の3つです。

  • 予算の議決
  • 条約の承認
  • 内閣総理大臣の指名

これらにおいて両議院の折り合いがつかない場合、両院協議会が開かれます。
ここで意見が調整できない場合「衆議院の意思=国会の議決」として採用されます。

一方、法律案の場合は「任意的に」開かれます。
開催を衆議院が求めたとき、参議院に拒否権はなく応える必要があります。
しかし、参議院から請求したときは、衆議院は拒否してもかまいません。

3、衆議院の優越の目的|参議院ではない理由

一方に対して強い権限を与える理由は、「国政を順調に進ませる」ためです。
たとえば、予算に対して両議員が反対意見ばかりでいがみ合っていたら、その年の消防や警察、年金などが成り立たず国民の生活に悪影響を及ぼしかねません。

このような事態にならないために、二院制といえども、衆議院に「憲法」と「国会法」上の2種類の優越権が与えられているのです。

(1)優越権が参議院ではなく衆議院に与えられている理由

なぜ参議院ではなくて、衆議院に与えられているのでしょうか。
主に3つの理由が挙げられます。

  • 任期が4年
  • 議員数が480名
  • いつも解散の可能性がある

参議院の任期は6年です。
しかも1度選挙が行われたら、6年後の次の選挙まで解散はありません。

一方、衆議院は4年という短さに加え、4年経たないうちに解散する可能性もあります。
つまり、参議院よりも選挙の回数が多い分、衆議院は国民の意思を反映させやすいと考えられているのです。

日本は国民主権の国であるため、より国民の意見に近い存在である衆議院に強い権力を与えることで国政のバランスをとっています。

(2)憲法改正の発議に衆議院の優越はない

絶大な力をもつ衆議院の優越も、「憲法改正の発議」については認められていません。
国家の基礎法である憲法を改正すれば、国民全体の生活に大きく影響します。
慎重な検討が必要と考えられるため、通常の法律案とは異なり、憲法改正の発議についての衆議院の優越は無効とされているのです。

改正については、衆参各議院の総議員3分の2以上の賛成という厳しい規定が憲法改正の発議の要件として定められています。これは、安易に憲法を変えられることが無いようにしているためです。

提案された改正案についての国民投票は、国会での発議から60~180日後に実施されます。
有権者の有効投票のうち過半数の賛成があれば改正案成立です。

ちなみに日本国憲法が戦後制定されて70年以上経ち、昨今盛んに改憲議論がなされていますが、まだ1度も実際に憲法が改正されたことはありません。

憲法の改正について更に詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。

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4、衆議院の優越の限界

これまで見てきたように衆議院の優越は国政が停滞することが無いように存在している制度です。
しかし実際のところ衆議院の優越があったとしても衆議院と参議院は現在ほとんど対等な関係になっています。

法案の再議決を例に挙げて解説します。

前述したように衆議院で可決済みの法律案を参議院が受けて、60日以内に何も結論を出さないときは参議院の否決とみなされます(憲法59条4項)。

この場合参議院が法律案に異議を申し立てても、衆議院で出席議員の3分の2以上の特別可決で再可決すればその法案は成立します(憲法59条2項)と説明しましたが、参議院がこの60日という日程の限界まで結論を先延ばしにしたとします。

しかし通常会期は150日と決まっています。
この150日間の内に占める60日間はかなり大きな数字であり、実際に予算の審議にかかる日数などの別途かかる時間を差し引くとほとんど時間は残りません。

こうなると多数の法案を成立させることはとても困難になります。
結果的に国政は停滞し、衆議院の優越に期待されるものが得難くなっているのが現状です。

まとめ

日本は、衆議院と参議院という二院制議会で成り立っています。
もちろん両議院はお互いをチェックする間柄であり、予備費の支出や決算、憲法改正の発議などでは対等な権限が与えられています。

しかし参議院と意見がそろわない場合や参議院が議決をしなかった場合などには衆議院の優越という権限が発揮されます。
是非このことを意識して、政治ニュースをチェックしてみてください。