イデオロギーとは「思想体系」あるいは「政治的観念」を指す言葉です。
今回はイデオロギーについて、以下の通り解説します。
- イデオロギーの意味
- 経済的・社会的なイデオロギー
- その他のイデオロギー
本記事がお役に立てば幸いです。
1、イデオロギーの意味とは
イデオロギーは、観念や思想の形態という意味です。
近代に入り「政治的観念」や「思想の傾向」といった意味で使われることが増えました。
平たく言うと「考えや思想などの体系」という意味になり、政治的な場面以外に
- 社会
- 民族
- 宗教
の分野でも用いられます。
スペルは、英語のideologyを当てられることが多いです。
イデオロギーは様々な分野で用いられる言葉ですが、学問の分野によってはごく限られた意味を持つ専用用語として使われることもあります。
そのため場面によって、使い方に注意を払う必要があります。
2、経済的・社会的なイデオロギーについて
ここでは経済的・社会的なイデオロギーの一例として
- 資本主義
- 社会主義
- 共産主義
の3つをご紹介します。
(1)資本主義
資本主義とは、自由競争に基づく経済体制を指します。
同じ資本主義国家でも、国によって政治の方針は異なります。
資本主義のきっかけは、イギリスの産業革命であり、この革命で経済活動に必要な土地や設備を自分の財産として所有できる考え方が広まりました。
また生産手段を持たない人は、労働でお金を得るようになりますが、これを「労働力の商品化」と言います。
日本では明治維新により個人が好きな職業に就けるようになったことが、資本主義の始まりとされています。
1930年代に世界恐慌が起こると、政府が公共事業を推進するという「修正資本主義」が登場し、社会保障制度も充実しはじめました。
またマルクスは資本論で資本主義を批判、生産体制を国家が所有する社会主義を提唱しました。
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(2)社会主義
社会主義とは、資本主義による格差を解消し、公平かつ平等な社会を作ろうとする思想です。
社会主義では、生産のための手段は国家が所有します。
生産計画もその時の政府が立てるので、市民の中で雇用者・被雇用者といった関係は生まれません。
市民は皆平等に国に雇われた労働者となり平等に扱われ、資本主義のような貧富の差を生まないよう指向されました。
世界で初めて労働者階級による自治が行われたのは、1871年のパリ・コミューンで、国家としては1917年のロシア革命等を経て誕生したソビエト連邦です。
初めて国家単位で社会主義が導入されたソビエト連邦では、教育・医療・住宅が提供されました。
社会主義国家では競争による報酬の違いは生まれませんが、それ故に労働意欲の低下に繋がり、経済の停滞を招く恐れもあります。
社会主義を採用していた中国では、1970年代から経済改革をはじめ、1990年代に入ると社会主義市場経済を始めます。
社会主義市場経済とは、社会主義を保ちながら市場経済を導入する混合経済対策で、ベトナムでも取り入れられています。
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(3)共産主義
共産主義とは、財産の全部または一部を共同所有することで、平等な社会を目指す思想です。
社会主義とよく混同されることもありますが、社会主義は共産主義に至る前段階であるとされています。
社会主義では生産計画や給与の支払いを政府が行いますが、共産主義では国や政府すら不要で利益や資産すべてを社会で共有することを目指します。
3、その他のイデオロギー
イデオロギーには他にも様々なものがあります。
- 国家や民族の伝統を守る「ナショナリズム」
- 国家の廃止を目指す「アナキズム」
- 性差別に影響されない平等な社会を目指す「フェミニズム」
- 環境保護や現状の環境に対する改善を目指す「環境主義」
もイデオロギーの一種です。
大きなイデオロギーの中にも細分化したジャンルがあり、多様性が重んじられる現代においては新たなイデオロギーが誕生しやすい傾向にあります。
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まとめ
今回は「イデオロギー」についてご説明いたしました。
イデオロギーは思考や行動の元になる観念体系ですが、歴史の中で絶えず新たなイデオロギーが生まれ、時にはそれが激しい闘争に発展することもあります。
国家や民族の定義が多様化する昨今では、イデオロギーはより複雑化していくかもしれません。