利上げが市場に与える影響とはどのようなものなのでしょうか。
利上げをすることで貸出金利が上昇し、消費や投資が抑制されるため、インフレを防ぎ、円安を抑制します。私たちの生活は大きく変化するでしょう。
今回は、以下の4点について解説いたします。
- 利上げの概要や目的、事例
- 利上げが市場に与える影響
- 利上げのメリット・デメリット
- 今後の日本の利上げ
この記事が、利上げについて知りたいと考えている方の参考になれば幸いです。
1、利上げとは?
まずは、利上げの概要と目的、事例についてみていきましょう。
(1)利上げの概要
利上げとは、各国の中央銀行が政策金利(※1)の引き上げを行うことです。日本においては、利上げを行うのは日本銀行(日銀)となります。
(※1)各国の中央銀行が景気や物価を安定させ金融政策上の目的を達成させるために設定する短期金利(誘導目標金利)のこと。金融機関の預金金利や貸出金利に影響を与える。
(2)利上げの目的
利上げは、景気上昇によって過熱した市場の抑制を目的として行われます。
度を超えた利上げを行うと、景気が低迷してしまう恐れもあります。
一方で、利上げをせずに市場が過熱し続けると、インフレ(※2)が懸念され景気動向が不安定となるのです。
以上のように、利上げは経済に大きな影響を与えるので、各国の中央銀行は国内だけでなく世界の経済状況もみながら利上げを検討する必要があります。
(※2)物価などが上がり続ける状態のことで、言い換えるとお金の価値が下がることになる。
(3)利上げの事例
直近で行われた大きな利上げとして、アメリカが例に挙げられます。アメリカでは年に8回FOMC(米国連邦公開市場委員会)が開催され、政策金利が決定されます。
2022年1月から、連続して金利が上がっています。
公表日時 | 金利 |
2023年03月23日 | 5.00% |
2023年02月02日 | 4.75% |
2022年12月15日 | 4.50% |
2022年11月03日 | 4.00% |
2022年09月22日 | 3.25% |
2022年07月28日 | 2.50% |
2022年06月16日 | 1.75% |
2022年05月05日 | 1.00% |
2022年03月17日 | 0.50% |
2022年01月27日 | 0.25% |
2021年12月16日 | 0.25% |
2021年11月04日 | 0.25% |
2021年09月23日 | 0.25% |
2021年07月29日 | 0.25% |
2021年06月17日 | 0.25% |
2021年04月29日 | 0.25% |
2021年03月18日 | 0.25% |
2021年01月28日 | 0.25% |
FOMCについて知りたい方は以下の記事もご覧ください。FOMCとは?2023年日程・日本市場への影響・円安の理由を解説
2、利上げが市場に与える影響
ここからは利上げが市場へ与える4つの大きな影響についてご紹介します。
- 金利が上昇する
- インフレが抑制される
- 株価の下落・停滞
- 為替変動の可能性
(1)金利が上昇する
利上げが市場に与える影響として最も大きいものは、なんといっても企業融資などの金利が上昇することです。
また、住宅ローンの金利についても、政策金利と銀行間競争によって決まるため利上げの影響を強く受けます。
(2)インフレが抑制される
インフレが抑制されることも、利上げによる市場への大きな影響の1つです。
急激なインフレが起こると、市場価格と消費者の収入にギャップが生まれます。
このように急激なインフレが起きている状態で利上げを行うと、資金調達コストが増加することから、インフレが抑制されるのです。
(3)株価の下落・停滞
インフレは、企業の業績拡大に強く影響します。企業が事業拡大や新規事業の開拓をする場合、株価が上昇するケースがあるのです。
事業拡大や新規事業の開拓には金融機関からの融資が必要となりますが、利上げによって借入コストが上がり、事業拡大や新規事業の開拓にブレーキがかかります。
結果として、利上げによって株価の上昇幅が緩やかになり、場合によっては株価の下落や停滞を引き起こす可能性があります。
(4)為替変動の可能性
投資家はできるだけ高い金利で預金や資産運用をしたいと考える傾向にあります。
例えば、日本が低金利で米国が高金利の場合、円よりも米ドルの需要が高まることから、円の価値が下がり米ドルの価値が上がる「円安ドル高」の現象が起こります。
一方で、日本で利上げが行われて日本の金利が米国よりも高くなった場合には、円の需要が高まることから「円高ドル安」になります。
以上のように、利上げによって為替が変動する可能性も高くなります。
3、利上げのメリット・デメリットとは
利上げのメリットとデメリットについて、それぞれみていきましょう。
(1)利上げのメリット
利上げをする最大のメリットは、前章でも説明したようにインフレを抑制できる点です。
また、インフレを抑制できることに付随して、市場価格と消費者の収入のギャップを解消できます。
(2)利上げのデメリット
利上げのデメリットは、前章でも説明したように金利が上がることによって資金調達コストが増えたり、株価や為替が変動したりすることです。
市場全体にマイナスの雰囲気が漂う可能性がある点も利上げのデメリットといえるでしょう。
4、今後の日本の利上げ
2023年の4月時点で、日銀の植田和男新総裁は大規模な金融緩和策(※3)について「継続することが適当だ」と述べ、金利を大幅に上げるというような状況ではないとしています。
また「金融政策だけで、経済の中長期的な成長率を持続的に上げていくのはなかなか難しい」と回答し、政府の政策との連携を強めることが重要であると示しています。
引用:NHK
(※3)中央銀行が景気浮揚を促すために実施する金融政策のこと。景気悪化の局面で政策金利を引き下げたり、資金供給量を増やしたりすることで、投資や消費などの経済活動を促す。
金融緩和について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
金融緩和とは?その仕組みやメリット・デメリットについて解説
まとめ
今回は「利上げ」とはどのようなものなのか、目的や市場へ与える影響、メリットとデメリットなどについて解説しました。
利上げは過熱した市場を抑制するために行われますが、市場に大きな影響を与えるため、実施する際には慎重に検討されることになるでしょう。