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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー次世代のための政党として維新を育てていく。 日本維新の会・岩谷良平幹事長 就任インタビュー

次世代のための政党として維新を育てていく。 日本維新の会・岩谷良平幹事長 就任インタビュー

投稿日2025.2.13
最終更新日2025.02.13

※本インタビューは、2024年12月18日に実施しました。

日本維新の会は全国政党としての成長を目指し、2024年3月には安全保障改革調査会を設置するなど、政権を担い得る責任政党として国家政策の柱となる安全保障政策に注力しています。また、12月1日には吉村新代表のもと新たな体制へと移行されました。

今回のインタビューでは、日本維新の会で防衛部会長として活動し、吉村代表の下、幹事長および安全保障改革調査会長に就任された岩谷良平議員に、憲法および安全保障政策について、また日本維新の会のさらなる発展を実現するためのビジョンについてお伺いしました。

(取材日:2024年12月18日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)

岩谷 良平(いわたに りょうへい)議員
1980年大阪府出身。早稲田大学法学部卒、京都産業大学法科大学院修了。
会社員、行政書士を経て、2011年大阪府議会議員に初当選(1期)。
米国カフェチェーン日本本部長を経て、2021年衆議院議員選挙に当選(2期)。
日本維新の会幹事長、選挙対策本部長、安全保障改革調査会長を務める。

(1)大阪維新の会結党に衝撃を受け、政治の道へ

ー岩谷議員はもともと行政書士をされていました。政治の世界へ入るきっかけとはなんだったのでしょうか。

大きなきっかけは2010年の大阪維新の会の結党です。当時、私は東京で行政書士事務所を立ち上げ、ようやく事業が軌道に乗り始めたところでした。開業したばかりの頃は、家を借りるお金すらなく、友人の家に居候し、通勤時間も2時間以上かかる厳しい環境でしたが、それでも少しずつ成果が出てきて、これから本格的に事業を拡大しようというタイミングでした。

そんなある日、テレビで大阪府知事だった橋下徹さんが「大阪都を作って大阪を再生する。大阪から日本を変える」と熱く語っている姿を目にしました。その内容に「これは本当にすごいことを考えているな」と衝撃を受けたのを覚えています。

私は大阪府の出身ですが、当時の私は「大阪はこれからますます厳しい状況になるだろう」と考えて、東京で事業を進めていました。しかし、その一方で、大阪を本気で変えようとしている人たちが現れたことに驚き、興味を持ちました。それまで政治には全く関わりがありませんでしたが、大学の先輩でもあった中司宏さん(現日本維新の会衆議院議員)にお話したところ、挑戦してみたらどうかと背中を押していただき、議員を目指すことを決意しました。

ー2011年に大阪府議会議議員として初当選をされましたが、どのようなチャレンジをしていきたいと思っていたのでしょうか。

大阪府議会議員になった理由は「大阪都構想」を実現し大阪を成長させるためでした。同じく、都構想の実現を目指して議員になった同期には、日本維新の会の代表でもある大阪府知事の吉村洋文さんや、新しく大阪市長になられた横山英幸さんなどがいます。私たちは「都構想の実現のために活動し、1期4年で辞めます」と誓約書に署名して、議員活動をスタートさせました。

2015年には、1回目の大阪都構想に関する住民投票が行われましたが、結果は否決に終わりました。この結果を受け、私は政治家としての役目を一度終えたと判断し、引退することにしました。その後は民間の世界に戻り、経営者として新たな道を歩み始めました。

ー大阪都構想を実現しようと考えた背景はなんだったのでしょうか。

私たちが議員になった当時、大阪は「破産会社」と呼ばれるほど厳しい状況にありました。失業率や犯罪率も高止まりし、子どもたちの学力も伸び悩んでいました。さらに、企業は次々と大阪を見限り、撤退する状況が続いていました。まさに最悪の状況でした。

その一方で、大阪は「公務員天国」とも揶揄され、公務員も政治家も私利私欲で動いているという風潮が根強くあり、まず、この状況を変えなければならないと考えました。そこで、大阪府と大阪市がバラバラに進めている政策や事業を一つにまとめる「都構想」を掲げました。この構想によって、大阪を再生し、成長を促し、最終的には東京に並ぶ都市にしようと考えていたのです。

ー2021年には衆議院選挙に挑戦し、当選されました。再び政治を志したきっかけはなんだったのでしょうか

子どもが生まれたとき、「この子が大人になる頃、日本はどうなっているのだろう」と考えました。その未来を想像したとき、日本は非常に厳しい状況に直面しているのではないかと思いました。経済力の低下や手取り収入が増えない中で税金が上昇を続け、年金をはじめとする社会保障制度も破綻しかかっている。そして、安全保障を取り巻く環境もさらに厳しくなっている。どう考えても明るい未来が見えなかったのです。

正直、政治家を辞めたあとの私は、経営者としてそれなりの暮らしをしていました。しかし、今後の人生はそれだけでいいのか、と自問するようになりました。日本の子どもたちが、「日本に生まれて良かった」「日本で育って良かった」と心から思えるような社会を作ることが、今を生きる私たち大人の責任だと考えるようになったのです。

さらに、維新の仲間たちが変わらず政治の世界で奮闘している姿を見て、もう一度政治の場で力を尽くそうと決意しました。妻も、本当は心配していたかもしれませんが「政治家時代の方がイキイキして輝いていた。」と、送り出してくれました。

(2)安全保障政策で維新の会の存在感を高めたい

ー岩谷議員は安全保障政策に注力されています。どのような背景があったのでしょうか。

私たちは道州制の導入を目指しています。道州制には、地方分権と国の機能強化という2つの視点があります。内政についてはそれぞれの地方に任せる一方で、外交、安全保障、マクロ経済や通貨政策といった国にしかできない分野は国が責任を持つべきだと考えています。それ以外の業務は地方に任せることで、より効率的で強い国を作ることができると考えています。

日本維新の会が、政権を担える政党となるためには、国が担うべき分野の政策強化が必要です。外交安全保障分野において、外交では元外交官出身の議員もいる一方で、これまで安全保障に関しては人材が不足していると言われてきました。そうした中で、私自身が名乗りを上げ、課題に取り組むことを決意しました。

ー現在の安全保障の課題についてどのように感じていますか。

これまで日本の防衛予算は非常に少なかったと感じています。中国は過去10〜20年で数倍に増えてきています。この点については、以前より主張を続けてきたかいもあり防衛予算の増額が決まりました。しかし、予算が増えた一方で国内の防衛産業は既に弱体化しています。日本独自の防衛力を強化するために必要な装備品の確保が難しい状況で、サプライチェーンの立て直しも急務だと考えています。

さらに、防衛力強化の最大のネックは憲法9条だと感じています。この問題に対処するため、安全保障政策の強化に加えて、憲法改正にも取り組んでいきたいと考えています。

ー日本維新の会が、2024年3月に「安全保障改革調査会」を設置した経緯はなんだったのでしょうか。

維新には、大阪の地域政党というイメージが根強くあります。国内の行政改革や教育無償化などで評価されていますが、外交や安全保障では目立つ存在とは言えません。政権担当能力を持った全国政党化を目指す上でこの状況は課題であると考え、調査会を設立しました。

調査会では、週1回のペースで有識者を招き、勉強会と議論を重ねています。たとえば、日本には情報機関、いわゆるインテリジェンスを司る機関がありません。新たにインテリジェンス機関を設立するのは容易ではなく、内政を地方に任せる道州制を導入し、国が外交や安全保障に注力すべきだという指摘もありました。こうした議論を通じて政策の方向性を模索しています。

今後、安全保障分野では大きく分けて3つの課題に取り組みたいと思います。

第一に、防衛産業の強化です。日本の防衛産業は過去の防衛予算の不足により弱体化しており、防衛装備移転も進める必要があります。国内需要だけでは防衛産業の維持は難しく、輸出も認めるべきだという声があります。与党である自民党内でも防衛装備移転を進めたい動きはありますが、実は公明党との連立関係もあり進められないのが現状だろうと考えています。私たちは、自民党以上に現実的な安全保障政策を主張していきたいと考えています。

第二に、自衛官の待遇改善です。これは政府が現在進めている政策なので、しっかりこの政策実現を後押ししたいと思っています。防衛装備の議論以前に、自衛官の募集定員割れが続いている状況は深刻です。特に自衛官の給料引き上げ法案は早急に実現すべきだと考えており、我が党でも賛成方針に転換しましたし、さらなる抜本的な処遇改善を提案しています

最後に憲法改正です。自衛官OBの方から「憲法9条により自衛隊は憲法上存在しない組織とされ、悔しい思いをしてきた」という声を聞きました。命を懸けて職務にあたる自衛官のためにも、この問題に取り組む必要があると考えています。賛否があるとは思いますが、憲法改正はやらなければいけないことだと思います。

このような1つ1つの政策については財政的な課題もあるので、無駄な人員や施設を抱えている部分については徹底的な合理化が必要です。維新では、イーロンマスク氏が唱えたような、日本版「政府効率化省」を設立し、民間の知恵を活用して行政の効率化や経費削減を進めることや一般歳出の半分以上を占める社会保障費削減のための改革を提案しています。

(3)次世代のための政党として日本維新の会を育てていく

ー岩谷議員は2024年12月1日に日本維新の会の幹事長に就任されましたが、率直な感想をお聞かせください。

就任して2週間ほど経ちましたが、かなり忙しい毎日です。役職の責任は非常に重く、常に緊張状態にあります。歴代の執行部の皆さんがどれほどの努力をされてきたのか、改めてその苦労を理解しています。それと同時に、この与党の過半数割れという激動の国会の中でキャスティングボードを握る維新の幹事長をさせて頂いていることには大きなやりがいを感じています。

ー幹事長として、今の日本維新の会の課題はどこにあるとお考えですか。

先の選挙で議席数を減らし、国会では維新の存在感が薄れているとの指摘があります。その原因を考えると、維新がどのような政党で、何を目指しているのかが有権者に十分に伝わっていないことが大きいと思います。新しい吉村代表のもとで、維新は次世代のための党であるというメッセージを強く発信していきたいです。具体的には、現役世代の社会保険料の引き下げと教育無償化を目標に掲げています。この2点を柱に据え、国民に訴えかけたいと考えています。

ー日本維新の会が全国的な支持を集めるためにはどうしていくべきでしょうか。

教育無償化や社会保険料の値下げで具体的に結果を出すことがまずは重要だと思います。さらに、我が党は大阪で生まれ、本部も大阪にあるため、大阪で高い支持を得ている強みがあります。しかし、全国政党化を目指すには「脱大阪」が必要です。大阪に偏りすぎない政党であることを示さなければなりません。実際、現時点で大阪に偏っているわけではありませんが、そのイメージを払拭する努力が求められます。前原誠司さんに共同代表になっていただいたのも、そのような視点を持った吉村代表の判断によるものだと思います。

各都道府県の総支部の強化も重要な課題です。現在、全国の総支部は党の選挙対策本部が管理していますが、今回の選挙では選挙対策本部を大幅に拡充しました。地方議員がより活躍しやすい環境を整えることが、全国政党化への近道だと考えています。

ー今後の日本維新の会のこういう部分に注目して欲しいといったものはございますか。

自民党はさまざまな組織団体の利益を代表し、立憲民主党や国民民主党も労働組合をはじめとする組織と深い関係があります。一方で、維新はそうしたしがらみがない政党です。これまで国民の利益を真に代表する政党がなかった中で、その役割を担うのが日本維新の会だと考えています。

特に現役世代に焦点を当てた政策に注力しています。現役世代が活性化すれば経済が成長し、次世代の人たちが教育や投資を受けることで日本の発展に貢献します。その結果、恩恵は高齢者を含む全世代に広がります。

現状では逆の構図が続いています。既得権を持つ人々が優先され、その結果、現役世代が苦境に立たされています。現役世代が疲弊すれば消費が伸びず、経済成長が停滞し、貧困が次世代に引き継がれる悪循環が生まれます。この負の連鎖を断ち切る政党として、日本維新の会に注目していただきたいです。

(4)子どもたちが「日本に生まれてよかった」と思える国にしたい

ー岩谷議員は日本をどのような国にしていきたいと考えていますか。

日本に生まれ、日本で育った子どもたちが「日本に生まれてよかった、日本で育ってよかった」と思えるような国を目指しています。子どもたちがしっかりと夢や希望を持てる国を作り直すこと、これこそが日本維新の会の存在意義であり、目標だと考えています。

その実現には、目先の政策だけでなく、大きな仕組み作りが必要です。政治の世界で言えば、政権交代可能な政治に変えることが重要です。このようなシステムを構築すれば、結果的に政策も改善されていくと確信しています。

私個人としては、政治家として「公平で公正、効率的な社会」を作ることが信条です。従来のような「革新か保守か」「右か左か」といった枠にとらわれることなく、不公正を象徴する裏金問題のようなことがない社会を目指しています。公平とはたとえば、我が党が掲げる教育無償化はその一環です。どこに生まれ、どのような家庭環境で育ったかによって、教育格差や所得格差が生まれるような社会は不公平です。それを是正していくことが必要です。また、効率的な社会という意味では、先ほど述べた行政改革や道州制の導入も、公正な社会の実現には欠かせません。公平で公正、効率的な社会の実現こそが、私の目標です。

この記事の監修者
株式会社PoliPoli 政府渉外部門マネージャー 秋圭史
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。その傍ら、株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当している。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)

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