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金融緩和とは?その仕組みやメリット・デメリットについて解説

投稿日2021.1.30
最終更新日2023.05.02

金融緩和とは、景気を回復させるために行われる金融政策の一つであり、金利を下げることで企業や個人の資金調達を促進し、経済を活性化させることが目的で実施されます。

この記事では、以下についてわかりやすく解説します。

  • 金融緩和のメリット・デメリット
  • コロナ禍での日本の金融政策

金融緩和とは、誰がどのような時に実施するものなのか、理解を深めてみましょう。

1、金融緩和とは

金融緩和
金融緩和とは、景気を回復させる目的で、金利を下げる金融政策です。

日本銀行が主体となり、金融緩和を実施します。
金利が下がることで、企業や個人が銀行からお金を借りやすくなります。

そうして市場に流れるお金の量が増え、全体として経済が活発化するのです。
また金融緩和の対義語は『金融引き締め』です。

金融引き締めは、金利を上げることで、市場に出回るお金の量(通貨供給量)を減らします。

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金融緩和をより理解するために

  • 公開市場操作
  • 金利操作

をそれぞれ解説していきましょう。

(1)公開市場操作

公開市場操作とは、日本銀行が一般の金融機関にお金を貸したり、国債の売買をすることで、市場のお金の量を調整する方法です。

金融市場に流れるお金の量を増やしたい場合には、金融機関にお金を貸したり、国債を買ったりします。

公開市場操作は、一般に『オペレーション(略称:オペ)』と呼ばれ、

  • 資金供給オペレーション
  • 資金吸収オペレーション

の2種類の方法があります。

資金供給オペレーションは金融緩和で、資金吸収オペレーションは金融引き締めで実施される方法です。

参考:オペレーション(公開市場操作)にはどのような種類がありますか? 日本銀行

(2)金利操作

金利操作とは、日本銀行による一般の銀行に対する金利を調整することです。

基本的に

  • 景気が良い場合、金利を上げる
  • 景気が悪い場合、金利を下げる

という形で、市場に流れるお金を調整します。
金利とは、お金を借りる際にかかる手数料の割合です(手数料自体は利子という)。

もし景気が悪ければ、金利を下げることで、お金が借りやすくし、停滞していた市場を活発化させる可能性を高めるのです。

参考:金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか? 日本銀行

2、金融緩和のメリットとデメリット

金融緩和のメリットは、景気回復に効果的であることです。
日本銀行が市場の通貨量を増やすことで、企業・個人の投資や消費が増え、経済の活発化が望めます。

一方金融緩和のデメリットは、タイミングを間違えると不景気を招くリスクがあることです。
1980年代から1990年代に起きたバブルを例に挙げてみましょう。

当時の日本銀行は景気を回復させるために金融緩和を実施しました。
金融機関への貸付金利(手数料)の引き下げが行われたことで、景気は回復しバブルが発生しました。

その後、バブルによって高騰しすぎた株価や地価を抑えるために、日本銀行は1989年に金融引き締めを実施したのです。

この金融引き締めによって、株価や地価が急激に下がってしまい、結果『失われた10年』と呼ばれる、長期的な不景気をもたらしてしまいました。

このように金融緩和には、長期的な不景気を引き起こしてしまうリスクもあるのです。

参考:資産価格バブルと金融政策:1980年代後半の日本の経験とその教訓 日本銀行金融研究所

3、日本とアメリカの金融政策の違い

(1)アメリカの金融政策の特徴

① インフレーション率が主な目的

アメリカの金融政策は、利上げと緩和を通じてインフレーション率をコントロールすることに注力しています。具体的には、経済が過熱烈な時期には利上げを、景気後退期には緩和を行うことで、インフレーション率を目標水準に近づけます。

参照:https://www.bbc.com/japanese/63981733 

②インフレーション率のコントロール

アメリカの金融政策は、インフレーション率を2%前後に保つことを目標としています。この目標水準は、世界的な通貨としてのドルの信用を維持するために重要です。インフレ率が低すぎる場合はデフレーションリスクがあるため、インフレーション率の維持は重要です。

参照:https://jp.reuters.com/article/instantviews-powell-speech-idJPKBN25N2AD 

③市場主義を尊重する立場

アメリカは市場主義を尊重する立場をとっており、市場力による価格決定を重視しています。市場が健全な状態であれば、価格の変動によって経済活動が自然な形で調整されるため、中央銀行が介入する必要がないと考えられています。

(2) 日本の金融政策の特徴

①デフレーション防止が主な目的

日本の金融政策は、デフレーションを防止することが主な目的とされています。これは、日本の経済が長期間にわたりデフレーションに苦しんでいたためです。中央銀行は、インフレ率を1%程度に抑えることを目標に、長期金利のコントロールや国債の買い入れを通じて市場に影響力を持っています。

②長期金利のコントロール

日本の金融政策では、長期金利のコントロールが重要な役割を果たしています。長期金利は、住宅ローンや企業の投資など、長期的な経済活動に大きな影響を与えるためです。中央銀行は、金融市場に流動性を供給することで、長期金利を引き下げることができます。

③中央集権的な体制

日本の金融政策は、国債の買い入れを通じて市場に影響力を持っています。中央銀行が国債を買い入れることで、金融市場に流動性を供給することができます。また、長期金利が低下することで、企業の投資や住宅ローンなどの需要が増加することが期待されます。

4、コロナ禍での日本の金融政策

金融緩和
2020年12月18日に日本銀行が発表した『当面の金融政策運営について』をもとに、日本の金融政策をご紹介します。

日本銀行では新型コロナウイルスの影響を受け、企業等への支援として以下の金融政策を実施する予定です(本記事では金融政策の一部をご紹介します)。

  • CP、社債等の増額買入れ
  • 新型コロナ対応金融支援特別オペ
  • 長短金利操作
  • ETFおよびJ-REITの買入れ方針

それぞれ確認していきましょう。

参考:当面の金融政策運営について 日本銀行

(1)CP、社債等の増額買入れ

CPとは、コマーシャルペーパーの略で、企業が資金を調達するために発行する約束手形を指します。

約束手形とは、決められた期日までに、借りたお金の支払いを約束する有価証券です。
社債とは、企業が投資家から資金を調達するために発行する債券です。

債券は、決められた期日に、利子を付けて支払うことを約束する有価証券になります。
コロナウイルスの影響で、CPや社債などの支払いや資金調達が困難になる企業が増えてしまいました。

そこで『当面の金融政策運営について』では、CP・社債などの増額買入れの期限を半年間延長し、2021 年9月末までを期限とすることを発表しました。

合計約20兆円の残高を上限に買入れを実施し、追加買入枠はCPと社債の合計で15兆円と設定されました。
市場の状況に応じて、それぞれに配分するとされています。

(2)新型コロナ対応金融支援特別オペ

新型コロナ対応金融支援特別オペとは、新型コロナウイルスに対応するための資金供給オペレーションです。

当面の金融政策運営について』では、新型コロナ対応金融支援特別オペの期限を半年間延長し、2021年9月末までを期限とすることが発表されました。

また民間金融機関による、中小企業等への新型コロナ対応融資を支援するため、プロパー融資における一金融機関当たりの上限(1,000 億円)を撤廃することになりました。

プロパー融資とは、保証がなくても(信用保証協会を中継しなくても)借りられる直接融資を指します。

参考:新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ 日本銀行

(3)長短金利操作

当面の金融政策運営について』では、長期金利と短期金利でそれぞれ以下の操作が発表されました。

・短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に、0.1%のマイナス金利を適用する

・長期金利:10 年物国債金利が0%程度で推移するように上限を設けず、必要な金額の長期国債を買入れる(金利は経済や物価情勢等に応じてある程度変動)

(4)ETFおよびJ-REITの買入れ方針

ETFとは、投資信託の1つで、上場投資信託とも呼ばれます。
J-REITとは、不動産投資信託を指します。

『当面の金融政策運営について』では、

  • ETF:年間約12兆円
  • J-REIT:年間約1800億円

に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行うことが発表されました。

参考:ETFの仕組み 一般社団法人投資信託協会 

そもそもJ-REITとは? 一般社団法人投資信託協会

まとめ

本記事では金融緩和について解説しました。

日本銀行は国債の売買や金利調整によって、市場をコントロールしていることがご理解いただけたと思います。

今後の日本銀行の金融政策に注目していきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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