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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー立憲民主党・枝野幸男議員に聞く! これからの日本の将来像

立憲民主党・枝野幸男議員に聞く! これからの日本の将来像

投稿日2024.9.20
最終更新日2024.09.20

少子高齢化や急激な人口減少、厳しさを増す安全保障環境など日本を取り巻く国内外の情勢は厳しさを増しているとされます。その中で政治にはこれからの日本が進む方向を指し示し、日本社会のあるべき姿を描いていく役割が求められています。今回のインタビューでは、立憲民主党代表選挙に立候補を表明した枝野幸男議員に、これからの日本の将来像についてお伺いしました。

枝野幸男(えだの ゆきお)議員
1964年 栃木県宇都宮市生まれ。東北大学法学部卒業。1993年初当選(10期)
党政調会長を経て、2011年菅直人政権にて史上最年少の官房長官に就任。
2017年立憲民主党を結党。

大きな危機感から代表選挙への立候補を決意

ー投票日が来週の月曜日(9月23日)に迫っています。率直に今はどのような心境でしょうか。

ラストスパートの最終段階まで来て、何だかさわやかな気分です。代表選挙は始まるまでが結構大変です。国会議員のみなさんに推薦をお願いし、選挙運動のためのチームづくりをするなどやることがたくさんあります。実際に選挙運動が始まると前半は地方を回ります。地方議員やサポーターの方は郵便投票で開票日よりも早く投票しなければいけませんから。告示日以降、慌ただしく全国を走り回ってきて、最終盤に入り東京中心の日程になってきました。いよいよゴールが見えてきた感じですね。

ー現時点での手応えはどのような感じでしょうか。

正直に言ってわからないですね。立憲民主党の有権者って全有権者の500人に1人ぐらいなわけですから、単純に世論調査の500倍しないと正確なところはわからない。感触は悪くないと思っていますが、実際に投票箱を開けてみないとわからないんですよね。

ー代表選挙に出馬を決断した決め手は何でしたか?

大きな危機感を抱いたからです。経済や社会に対応できていない政治を変えなければ、そのまま回復不能なところまで落ちていってしまうのではないかという危機感です。

この30年間、日本の経済は低迷をし続けてきました。その低迷の先にある崖のようなものが見えてきた感覚を持っています。これまで円安と物価高が続いていました。円安を何とか軌道修正しようと思ったら、今度は株価が乱高下した。

その中で政府は賃金を上げようと躍起になっていますが、その恩恵は一部の人だけが受けています。中小零細企業で働く人やフリーランス、非正規の方々には物価が上がっているだけで賃上げの実感は及んでいません。

このような経済状況・家計の状況では回復に非常にエネルギーがかかるところまで転落してしまうのではないか。そんな危機感がありました。

ー民主党政権が終わってから12年ほどが経過しました。これまでの12年間をどのように感じていますか?

安倍さんはアベノミクスを通じて20年間の停滞を少しでも上向けようという努力をされたと思うんです。ただ結果的にアベノミクスは課題を先送りしてきただけに終わりました。

大きな方向転換ができなかった。安倍さんの政策に悪意があったとはまったく思わないけど、先送りした結果、いよいよ崖が近づいているような状況だと思うんです。

民主党政権の反省を活かせる自信がある

ー前回の民主党政権の反省や経験を活かして政権交代を目指していくと思います。民主党で政権を経験したことで得られた学びや教訓はどのようなものですか。

前回の政権交代は明らかに経験不足でした。民主党全体として閣僚を経験していた人は何人かいましたが、やはりチーム全体として過去の政権のことをしっかりと学んでいなかった。特に政権をお預かりした時のプロセスをしっかり学ばずに、よくわからないまま色々なことをやってしまった。あれもこれもって何でもかんでも横並びで公約に並べてしまったんですよね。

圧倒的な議席数を持ち、政権与党に慣れている自民党でも、取り組む政策は一年に二つか三つくらいなものです。大きな変化を一気にやろうとしたら国会での審議にも時間がかかります。また政権をとる前後では災害などで経済や社会の状況が大きく変化することがあります。東日本大震災がその典型です。

だからこそすぐにできることはちゃんと具体的に約束する。次に中長期の方向性を示すことが重要だと思っています。いつまでに何をやるのかを細かく決めすぎるとそれに縛られて、結局何もできなくなった。これが民主党政権時代の一番の教訓です。このこと自体は今の立憲民主党でもかなり共有されているはずです。現在の立憲民主党では、当時の1回生でも与党としての経験をしているみなさんが集まっているので、前回と同じ失敗を繰り返さない自信があります。

ー政権交代を目指す中で逆にもう少し頑張らないといけないポイントは何ですか?

やはり今は議員の数が決して多くはありません。いざ政権をお預かりするとなると、内閣に大臣や副大臣、政務官で50人規模で入ることになる。そのほかのメンバーで国会を運営しないといけないわけですよね。

国会を運営するためには特に与党の立場にある人間が野党に協力してもらい、その運営をスムーズにしないといけません。そのためには国会対策が重要です。国会対策委員長はもちろんのこと、それぞれの委員会の運営を担う筆頭理事を務めるためにもそれなりの経験と能力がある方が好ましいです。スムーズに運営できなければ与党だとしても法案を通せません。国会対策を担ってくれる中堅若手の層が厚くなるといいなと思います。

ー自民党政権12年間で絶対に変えないといけないポイントはありますか?

これは各論ではなく、大きな方向性なんですよね。自民党の総裁選挙で小泉進次郎さんは解雇規制を緩和すると言いました。これは僕らからすると明らかに古い感覚で政治をしているなと思うんです。

実はこの30年間、解雇規制をどんどん緩やかにしてきたんです。雇用が流動化するとより能力を発揮できる職業に人が移動することを想定していたのでしょう。

ただ結局非正規が増え、低所得の人が増え、低賃金で人を雇うことに慣れた企業や業界には人が集まらなくなりました。賃金が上がらなくなった結果、消費も増えず、 一部の人だけに恩恵があったんですね。

目指すべき方向性は逆で、まず安定した仕事に就かなければ意味がない。安定した仕事がなければ家庭を持ったり子供を産み育てたりしようとは思えないですよね。だからこそここで安定した雇用をちゃんと作る方向に大きく転換していこうと思っています。

裾野を広げる政策で安心と安全を作り出す

ーヒューマンエコノミクス:人間中心の経済をコンセプトとして打ち出した背景は何ですか?

私はこれまでずっと支え合う社会を目指すと言ってきました。少子高齢化の社会の中にあって、一人で出来ることって限られているじゃないですか。それであれば社会全体で支え合わなければならない。

50年前と比べたら親戚の数も減っていますし、家族の形態も変わっています。隣近所の人間関係も薄くなっています。身近なところで支え合うことが難しい世の中になっています。

であれば社会全体で支え合うために政治があり、支え合う社会を作ろうと。ただやっぱり国民のみなさんの大きな関心は経済です。支え合う社会という私のビジョンを経済という切り口から整理しなおしたのが、ヒューマンエコノミクスという考え方です。

ー外交安全保障についてはどのように進めていく想定ですか。

外交は相手があることなので、大きな方向は変わりません。日米同盟を基軸にしない限り、日本の安全保障はままならないことは明らかですから。

ただその中でも自民党と違うのは自衛隊についても人間中心で進めるということです。どんな戦闘機を買おうがどんなミサイルを買おうが、結局使うのは自衛隊のみなさんです。

ところが自衛隊は定員を充足したことが一度もないんです。23万から24万人ほどの定員がもう20万人を切っている。応募者も激減しています。人手不足の分野が山ほどある中で、自衛隊がなかなか選ばれないようになっています。

自衛官が優秀でなければ、どんな兵器を持っていてもうまく使いこなすことができません。自衛官の方々には目的意識を持っていざという時に頑張っていただく必要がある。安全保障を日米同盟を基軸にする以上、もしかするとどの分野よりもちゃんと英語が喋れないと困るかもしれない。だから本当は自衛隊員の数を増やして、処遇をよくして、教育訓練をする必要があるんです。

6年前に僕らの仲間が国会質疑で問い正したのですが、自衛隊の官舎ではトイレットペーパーが足りなくて、隊員が自腹切って揃えていたことがあるらしいんです。それくらい自衛官の処遇については、国会で指摘されるまで放置されていた問題なんです。

基本的な処遇改善に加えて、自衛隊員の方々のセカンドキャリアも充実させることも必要です。自衛官は定年が早いので、若い頃に使命感を持って働き、ある年齢になったら経験を活かして別の道で活躍する。このパッケージを見せることでより自衛官になろうと思う人が増えるのではないかと思います。

ースタートアップや規制改革に関連する分野の政策についてはどのように進めていきますか?

資金調達がスムーズに進み、製品を流通プロセスに載せることへのノウハウを共有することで、成功するスタートアップが増えるだろうと考えています。この二つに加えて意欲と能力が必要ですね。これまでの政府による投資は何となく儲かりそうな分野に資金を集中させていました。私はもう少し薄く広くやったらいいのではないかと思います。100件投資をしたうち、2-3件しか成功しないかもしれません。それでは民間は投資を渋ってしまうかもしれませんが、だからこそ政府の役割があるのだろうと思います。確実に成功するわけではないが、ちゃんとしたプランのあるところに公的なお金を突っ込んでいって、仮に成功したら民間からの資金調達はいくらでも可能になると思います。

生み出した製品やサービスを販路に乗せる過程では、気づくとあっという間に既存の大手がアイデアの真似をして、市場を押さえてしまうことがあります。ノウハウを保護することは簡単ではありません。独占禁止法の発想だけでは簡単に解決できない課題があります。ただ新しい芽を育てるためには取り組むべき発想だと思います。ベンチャーで新しい事業を始めた人の権利がしっかり守られるような制度を作りたいですね。

ー最後に読者へのメッセージをお願いします。

私のヒューマンエコノミクスは裾野の広い山を作ることがコンセプトです。山が高くなるのは基本的には裾野が広くないといけない。これまで30-40年、日本は裾野をどんどん削りながら、山だけ何とか高くしようとやってきた。私はこの社会を変えたい。日本の潜在力だって捨てたものではありません。

今の若い世代は昨日より今日、今日より明日がよくなるっていう感覚がないまま育ってきた人が多いのではないでしょうか。政治の方向性を少し変えて、安心と安定を作り出す。それを基盤に安心してチャレンジすることができる国になれば、社会にもう一度活力が復活してくる。今なら間に合うと思います。ぜひ一緒に頑張っていきましょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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