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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の重要性とは?小田原議員が実現したい日本外交のあり方

日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の重要性とは?小田原議員が実現したい日本外交のあり方

投稿日2023.5.24
最終更新日2023.12.22

日本が提唱した外交構想である「自由で開かれたインド太平洋」(英:Free and Open Indo-Pacific=FOIP、以下「FOIP」)。2023年3月20日に、岸田内閣総理大臣が訪問先のインドにて、「インド太平洋の未来~『自由で開かれたインド太平洋』のための日本の新たなプラン~“必要不可欠なパートナーであるインドと共に”」と題する政策スピーチを行い、新しいプランを発表したことで、世界各国から大きな注目を集めています。

今日はFOIPについて、第一次岸田内閣で外務副大臣も務めた小田原潔衆議院議員に、FOIPが誕生した経緯やその重要性、小田原議員が実現したい政策などについて伺いました。

小田原 潔 氏1964年5月23日生まれ 日野市在住。
令和 3(2021)年 衆議院議員 4期目当選、外務副大臣。

1987年東京大学経済学部経済学科 卒業後、株式会社富士銀行に入社。

その後、ゴールドマン・サックス証券株式会社やモルガン・スタンレー証券株式会社でキャリアを積み、2012年衆議院総選挙にて初当選。

1、「政治の力」で実現した沖縄返還に感動し、政治家として外交の道へ

小田原潔議員

ーFOIPについてお伺いする前に、小田原議員がそもそもなぜ政治家を目指そうと思ったのか、お伺いします。

小田原議員:

私が政治家になりたいと思ったきっかけは、8歳の時に目の当たりにした沖縄返還です。

私の父親は自衛官だったため、「いざという時は親が命を失うかもしれない。ただ無謀な命令によって殉職してほしくはない」と考えていました。そんな時、政治の力によって、一発の銃弾も発射せず、一滴の血も流さずに沖縄が日本に返還されました。それに感動し、政治家になりたいと考えるようになりました。

2、FOIPが誕生した経緯と重要性

FOIP

参照:外務省

小田原潔議員

ーそもそもFOIPとはどのようなもので、誕生の背景には何があったのでしょうか?

小田原議員:

FOIPとは、成長著しい「アジア」と潜在力に溢れる「アフリカ」という2つの大陸と、「インド洋」と「太平洋」という2つの大洋を一体に捉え、この地域の平和・安定・繁栄の促進を目指す外交のコンセプトです。国連の機能を補完し、世界秩序を維持するために我が国(日本)が主導し推進した概念です。

自由貿易や法の支配などFOIPを構成する重要な価値はいくつかありますが、とりわけ重要なミッションは、シーレーンを守り、航行の自由を確保することです。

誕生の背景の1つに、この地域における中国の台頭があります。インド洋と太平洋の結節点である東シナ海において、中国による南沙諸島の埋立や軍事基地の建設が人工衛星の画像から明らかになっています。

これにより、我が国を含むインド太平洋諸国は、物流の面で大きな脅威にさらされています。シーレーンにおける航行の自由の確保と安定した物流網の構築は、人々の暮らしを守るためには欠かせません。

しかし、現実の国際社会には、警察官も道徳の先生も風紀委員も存在しません。他国の意思を正確に把握することは不可能です。

したがって、国民の命や財産を守る責任のある政治家は最悪のケースに備え、能動的に行動していく必要があります。ウクライナの状況を見てもわかるように、平和はそれを唱えるだけでは実現できません。だからこそ、価値観を共有する他国と協力し、シーレーンを守らねばなりません。これがFOIPが起草された背景の一つです。

小田原潔議員

ーFOIPはどういった観点で重要なのでしょうか?

小田原議員:

FOIPは国際秩序を維持し、平和・安定・繁栄を促進するための地域的枠組みとして重要です。アミタフ・アチャリア氏の『アメリカ国際秩序の終焉』にも、国際秩序を維持するためには地域的な枠組みが機能することが有効であると示されています。

枠組みの目的を明確にすることが、効果的な地域枠組みを構築する上で重要です。FOIPは、明確な目標に基づき各国が協力している点で成功を収めている地域枠組みの一つと言えるでしょう。

地域的な枠組みを十分に機能させるためには、地域外の国も枠組みに参加することが求められます。例えば現在、NATOに日本が、ASEANにアメリカがオブザーバーとして参加しています。地域外の国が参加することで情報共有が進み、より正確な意思決定が期待できます。

3、自由で開かれたインド太平洋が機能した要因と諸外国の反応

小田原潔議員

ーFOIPがうまく機能している要因は何でしょうか?

小田原議員:

さまざまな側面から、中国との信頼関係の構築が難しいと考える国々が増加しているからではないでしょうか。

中国との協力関係を構築することを難しいと感じる背景には、中国が著しい経済成長をとげ、インド太平洋地域の開発途上国に、インフラ整備を中心とする経済援助を行ってきたことがあります。

この経済援助は、基本的に無償で提供されてきました。これには理由が2つあります。

一つ目は、「一帯一路構想」の推進のためです。ヨーロッパからアジアにかけた地域諸国と中国との経済的な結びつきを強めるためのものです。

二つ目は、国内向けの雇用対策です。中国は2010年までは毎年8%以上の経済成長を達成していましたが、中所得層が出現すると成長率は落ち込みます。ただ国内にはより豊かになりたいと考える人々を多く抱え、彼らに雇用を提供する必要が生まれました。アジア・アフリカ諸国でのインフラ整備に力を入れることで、自国民に対する雇用を生み出そうとしていたんですね。

ただ、中国によって提供された各種資本によって建設された交通インフラや情報網には、杜撰な部分も垣間見えます。建設した高層ビルの耐久性が脆弱であったり、最近では一部情報が中国に筒抜けになっていたりすることが報道されました。中国に対する信頼感が失われることで、日本や欧米各国が提唱する価値や考え方に共感する国が増えたことも、FOIPの推進につながっていると感じています。

小田原潔議員

ー小田原議員は外務副大臣として、さまざまな国を訪問されたと思います。FOIPについて印象に残っている諸外国の反応や、エピソードなどはありますか?

小田原議員:

FOIPは外交の場で度々話題になりました。元米国務省の外交立案責任者・リチャード=ハース氏や、ユーラシアグループ社長で政治学者のイアン=ブレマー氏など、国際政治に精通する方々とお話しした際もそうです。ウクライナ情勢よりも、台湾海峡をめぐる情勢について話したがる彼らの姿勢が非常に印象に残っています。

中国は今後、米国に対抗して勢力を拡大することを目指しています。その隣に位置し、アメリカとの関係も深い日本が、地域秩序を維持するために果たす役割に非常に大きな関心を持っているんですね。

地域秩序を揺り動かすシナリオとして想定されているのが、台湾有事です。その中で最も懸念されているのが、「中国と台湾が一緒になってもよいのではないか」と考える台湾人が政権を取り、「台湾は中国になります」と宣言するシナリオです。

中国にとって、台湾は地理的に太平洋の玄関口にあたります。その台湾が中国の支配下に入ることは日本にとって安全保障上、直接的な脅威となります。仮に実現した場合、これまでの世界秩序は大きく変動するでしょう。

このシナリオは現在の世界秩序の維持・発展を主導する日本としては受け入れ難い。この脅威に対応するために、FOIPを主導する日本に対する期待が高まっていると言えます。

4、小田原議員の政治家としての「3つの使命」

小田原潔議員

ー最後に、小田原さん自身が政治家として実現したい政策や今後の意気込みがあればお伺いしてもよろしいでしょうか?

小田原議員:

次の三つのうち一つでも達成することができれば、国会議員としての使命を全うすることができたと胸を張れると思います。

  1. 北方領土の返還
  2. 国連憲章における敵国条項の削除
  3. 日本の国連常任理事国入り

北方領土は現在ロシアに不当占拠されたままになっていますが、1956年に締結した日ソ基本条約では平和条約の締結後、二島を引き渡すこととされています。北方領土の島々に祖先が暮らしていた人が日本には多くいらっしゃいます。北方領土にルーツを持つ方々に報いるため、また日本国としての尊厳や主権を取り戻すために、なんとしても実現したいのです。

国連憲章における敵国条項の削除も重要な問題です。敵国条項はあまりに時代遅れで不当な条項だからです。

当該条項には明確に「日本、ドイツ、イタリアは連合国の敵である」旨、書かれています。ユナイテッドネーションズ(国際連合)が、第二次世界大戦の戦勝国によって主導し設立された名残として今でも残っている条項です。

日本は長年にわたって国連に対して第2位(現在は第3位)の拠出金を支払ってきているにもかかわらず、このような扱いを受けていることは受け入れ難いものです。

我が国は何度もこの問題を提起してきましたが、ロシアや中国からは「もう死文化しているので、このままにしておこう」と言われています。

それでも私はこの問題を日本国民の尊厳に関わる問題だと捉えています。私たちは差別されているのと同じ扱いを受けているわけですから、これを放置するわけにはいきません。だからこそこの問題に粘り強く取り組みたいのです。

我が国の常任理事国入りも安全保障上、非常に重要な問題です。常任理事国という地位そのものが重要なわけではありません。常任理事国になれば、世界の重要な出来事について、必ず相談を受け、発言する権利を持つことができます。

常任理事国入りの実現は後の世代に残すことができる大事な遺産になります。

国会議員としてこれら3つの大切な目標に向かって引き続き努力をしていきたいと考えています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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