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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー立憲民主党・松木けんこう議員に聞く!持続可能な未来へ「しあわせの土台づくり」のための政策とは

立憲民主党・松木けんこう議員に聞く!持続可能な未来へ「しあわせの土台づくり」のための政策とは

投稿日2024.9.17
最終更新日2024.09.17

SDGs(持続可能な開発目標:2030年までに持続可能でよりよい世界を実現する上で達成すべき国際目標)では気候変動やエネルギーなど、17項目の目標が定められ、あらゆる政策の基盤となっています。

今回のインタビューでは、自らの政治理念を「しあわせの土台づくり」と掲げる立憲民主党・松木けんこう議員に、環境政策や少子化対策など、持続的な社会をつくるための政策についてお伺いしました。

(取材日:2024年8月1日)
(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 井出光)

松木けんこう議員インタビュー

松木けんこう議員
1959年札幌市生まれ。2003年衆議院選挙で初当選(6期)。
農林水産大臣政務官、衆議院決算行政監視委員長などを歴任。大学と幼稚園の理事長なども務める。
本名は謙公(しずひろ)、政治家としてはけんこうを名乗る。
趣味はスポーツ観戦と美術館めぐり。

藤波孝生に惚れ込み、政治家の道へ

松木けんこう議員インタビュー

ー松木議員が政治家を志したきっかけは何だったのでしょうか。

元々は政治にまったく興味はなかったのです。実は、プロボクサーを目指していました。

「永遠のチャンプ」と呼ばれ、23歳の若さで交通事故で亡くなったボクサー・大場政夫さんに本気で憧れ、東京のジムに通うために札幌市から上京し、青山学院大学(東京・渋谷区)に入学しました。

東京では親のおかげで何不自由のない生活をすることができました。何から何までお金を出してもらって。感謝しかありませんでしたが、申し訳ないなという気持ちも徐々に生まれ、このままプロボクサーを目指すよりは、親の言うことを少し聞いてみようという考えになっていました。

ある時、父親から「どうせ大学に通っても勉強しないんだから、藤波孝生事務所で世の中の勉強をしたらどうだ」と提案を受けました。「誰?事務所?」という感じでしたが、のちに藤波孝生は自由民主党所属の国会議員で、「事務所」とは議員会館にある政治家の事務所、ということがわかりました。とりあえず行ってみるか、と大学1年生のときに初めて永田町に足を踏み入れたのです。

松木けんこう議員インタビュー

事務所では車の運転をはじめ、多くの仕事を経験させていただきました。はじめて藤波を乗せて運転するとき、助手席に座られたのにはびっくりしました。普通、後ろに座るじゃないですか。「変な人だな〜」と思いながら、2回目の運転の時には藤波が後部座席に座ったので、運転に安心してもらえたのかなと(笑)。

1979年当時は「四十日抗争」の真っ最中でした。自民党が衆議院総選挙で負け、第二次大平内閣の発足までのおよそ40日間、党内で激しい抗争が起きていたのです。ハマコーさん(故・浜田幸一議員)が自民党党本部に机でバリケードを作って大暴れするなど、今では考えられない、大荒れの状況でした。朝7時頃から夜中の2時ごろまで藤波と一緒に過ごす日が40日間続きました。今では考えられない働き方ですね。

こうした秘書デビューから、気がつけば46年、永田町に身を置いています。

ー当時の激しい世界を目の当たりにして政治への道に引き込まれたのでしょうか。

というよりは、この藤波孝生という政治家に魅了されました。近くでご一緒して、この人は本当に国民のことを考えてるなと思い、この人のためにずっと秘書を続ける覚悟でした。

そんな中、1989年にリクルート事件が起き、藤波は在宅起訴されます。公務員採用時期を民間企業の就職協定の時期に合わせる請託をリクルート社から受けた受託収賄罪でした。私も藤波に近い立場として、東京地検による取り調べを何度も受けましたが、秘書は辞めませんでした。それくらい藤波孝生という人間に惚れ込んでいました。

そんな中で、周りから「藤波は後継を育てることができなかった」と言われることが非常に悔しくて。もし後継者がいないのであれば、自分がやってもいいと。そういった気持ちが徐々に芽生えてきたことが、政治家になることを意識した第一歩でした。

1996年に地元、北海道2区(札幌)から初出馬したものの、自民党の公認争いで負け、落選。2000年に無所属で出馬しましたがまた落選し、3回目の選挙で当時民主党の小沢一郎議員に支援していただき、北海道12区でようやく当選、政治家としてデビューできました。

「しあわせの土台づくり」とは

ー松木議員は政治理念として「しあわせの土台づくり」を掲げています。どのような思いがあるのでしょうか。

この「しあわせの土台づくり」は自分でつくった言葉です。政治家を志した時から一貫して掲げています。

このフレーズの原点は、藤波と交わした会話です。ある日、藤波が地球儀を持ってきて、一緒に見ながら「日本ってこうして見ると小さいよな。でもGDPでは世界の15%も占めている。すごいよな」という話になりました。

「すごいですけど、日本人って働きすぎではないでしょうか」と返すと、「きみ、面白いな、俺もそう考えていたんだ」と。「国として成長を続けるのも大事だけれど、国民が身をすり減らし、人生に余裕がなくなり幸せでなくなってしまうのはよくないよな」と一緒に盛り上がりましたね。

そこから国民が幸せになる土台を整えることこそが政治の仕事だと思うに至ったのです。「幸せ」と一言で言ってもその感じ方は人それぞれです。だからこそ政治家は決して国民の幸せをつくるのではなく、その土台をつくり、幸せになるお手伝いをするものではないかと。こうした思いが根底にあります。

ー通常国会では環境委員会に所属され積極的な議論をしていた印象です。

この地球に暮らし続けていくためにもSDGs(持続可能な開発目標)を達成することは非常に重要になってきています。SDGsが掲げる目標の中にはあらゆる分野の解決するべき課題が網羅されており、今後もあらゆる政策の基本となっていくでしょう。

たとえば温暖化。生活にも目に見えて環境変化の影響は出ていて、地元の札幌市でも今年の夏は温度が上がったなと実感しますし、取れる農作物や魚介類が変わってきました。温暖化を食い止めるための環境政策は待ったなしの状況です。

今年の通常国会では、衆議院・環境委員会で3つの法案が可決・成立しました:

地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律
地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律
資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律

環境政策で最も大きな政策目標の一つが2050年のカーボンニュートラルの達成です。これに関連して、委員会では脱炭素に成果を出した企業の法人税を減税するなど、企業に対する実質的なメリットを示さないと、いい流れが生まれないのではないか、といった提案を行いました。

日本は技術大国で、燃料電池や全固体電池などの優れた技術がたくさんあります。技術が社会に普及することにつながるような政策をしなければ、脱炭素を実現することは難しいと思います。

松木けんこう議員インタビュー

ー松木議員はCO2の出ない、再生可能エネルギーの積極的な導入とともに将来的な脱原発を掲げていますね。

たしかにCO2排出量を減らすためには原発は有効な手段の一つです。ただ原発に依存しすぎることもやはり避けたほうがよいのではないかと考えています。

私たちは2011年の東日本大震災で原発の恐怖を目の当たりにしました。個人としても妻の家族が福島第一原子力発電所に近い福島県大熊町に住んでおり、郡山市の避難所での生活を余儀なくされました。

もちろん明日にも全ての原発を止めることは非現実的かもしれません。しかし、そのあり方を再考する必要があります。原発の管理を一電力会社に任せっきりにせず、国が資金面を含めて企業を支援し、協力しながら運営していくべきだと考えています。

少子化対策には結婚をしやすい環境を整えることが重要

ー少子化対策ではどのような政策が必要でしょうか。

結婚の支援から始めるべきだと考えています。

2021年の「結婚と出産に関する全国調査」によると「妻の初婚年齢が 25~ 29歳の夫婦」の平均出生子ども数は1.87です。政府が目標としている出生率は1.8ですから、それを上回る。なので、まずは結婚が身近になる土壌づくりが必要だと考えています。

「3人目の子どもへの補助」のような形では実際に恩恵を受けられる人は限定的です。一律で子どもの教育費と医療費の無償化をすれば「子どもを育てることは大変」というイメージは変わるのではないでしょうか。

他には返済不要の奨学金を拡充することにも効果があると考えています。私は小さな会社の経営もしていますが、従業員にアンケートをしたところ、20人ほどが奨学金の返済中であることがわかりました。毎月およそ3万円を返済していたのです。

そこで、昨年11月から、従業員の奨学金を会社で返済することを決めました。毎月の返済がなくなるだけで人生に対する余裕、家族観にもいい影響があるのではないかと思います。立憲民主党が政権をとった暁には、とにかく教育の無償化は絶対必要で、財源は「こども国債」の発行です。

松木けんこう議員インタビュー

少子化対策は政府も熱心ですが、実は本当に若い人のためになる政策が打たれているようで打たれていないんです。

政府が緊張感を持って政策を進めるためには、若い人たちが政治に参加することが大切です。SNSやメディアなど参加しやすいものであればなんでもいい。政治は遠そうに見えて、生活と切り離すことができないものですから。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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