日本学術会議とは、科学に関する職務を行う、政府から独立した特別機関です。
今回は
- 日本学術会議とは
- 日本学術会議の組織構成
- 日本学術会議が主催する取り組み
- 日本学術会議の任命拒否問題
などについてご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、日本学術会議とは
日本学術会議とは、科学を国の発展に活用するため、内閣総理大臣が所管する、政府から独立した特別の機関です。
以下の科学分野、約87万人の科学者を代表する機関でもあります。
- 人文科学
- 社会科学
- 生命科学
- 理学
- 工学
日本学術会議の職務は、主に次の2つです。
-
科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
-
科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
引用:日本学術会議
日本学術会議の主な役割は、以下の4つとされています。
- 政策の提言
- 国際的活動
- 科学者間ネットワークを構築すること
- 科学の役割について世論を啓発
参考:日本学術会議
日本学術会議の人経費や運営費などの費用は、国の予算で賄われており、年間支出は10億円程です。
その支出には以下のようなものが挙げられます。
- 人件費
- 委員会などへの出席手当
- 旅費
参考:NHK
2、日本学術会議の組織
日本学術会議は
- 約210人の会員
- 約2000人の連携会員
で構成されています。
そして日本学術会議の組織は
- 総会
- 幹事会
- 部
- 委員会
- 地区会議
- 若手アカデミー
- 事務局
で構成されます。
部は、以下3つに分かれています。
- 第1部:人文・社会科学
- 第2部:生命科学
- 第3部:理学・工学
また委員会は、
- 機能別委員会
- 分野別委員会
- 課題別委員会
で組織されています。
これら3つの委員会について詳しくみていきましょう。
(1)機能別委員会
機能別委員会とは、日本学術会議の運営を円滑に行うための委員会です。
主に以下の4つに大別されます。
- 選考委員会:日本学術会議の会員と連携会員の選考について審議
- 科学者委員会:科学者たちのコミュニティの問題を審議
- 科学と社会委員会:社会に向けて発表すべきことを審議
- 国際委員会:国際的な学術団体との共同作業について審議
(2)分野別委員会
分野別委員会とは、各科学分野の課題について審議する委員会です。
主に以下の領域を30の学術分野に分割し、審議します。
- 人文科学
- 社会科学
- 生命科学
- 理学
- 工学
具体的な分野別委員会には、以下のようなものがあります。
- 言語・文学委員会
- 哲学委員会
- 心理学・教育学委員会
- 社会学委員会
(3)課題別委員会
課題別委員会は、社会がその時に抱える、特に重要な課題を審議する臨時の委員会です。
2020年12月時点での、具体的な課題別委員会には以下のものがあります。
- 防災減災学術連携委員会
- 医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方検討委員会
- フューチャー・アースの推進と連携に関する委員会
- 自動車の自動運転の推進と社会的課題に関する委員会
- 人口縮小社会における問題解決のための検討委員会
自動運転や人口縮小といった日本の重大な課題を取り扱っていることがわかります。
参考:日本学術会議
少子高齢化とは?人口減少が招く社会問題を簡単解説
3、日本学術会議が主催する取り組み
日本学術会議では
- 公開講演会
- 地方学術会議
などを主催し、行っています。
それぞれについて見ていきましょう。
(1)公開講演会
日本学術会議は、公開講演会を通して、研究成果を積極的に国民に還元しようとしています。
2020年に計画実施された開講演会には以下のようなものがあります。
- 公開シンポジウム「COVID-19パンデミックを契機として考える日本の結晶学の現状と今後」
- 学術フォーラム「コロナとの共生の時代における分析化学の果たす役割」
- 日本学術会議in山口 公開講演会「AI戦略の地方への展開-大学におけるデータサイエンス教育と地域連携 AIは我々の生活をどう変えうるのか」
- 公開シンポジウム「感覚器におけるスマートフォンの光と影」
- 公開シンポジウム「理数系教育とジェンダー:学校教育にできること」
新型コロナウイルス、AI、スマホ、ジェンダーといった今日的な問題を取り扱っていることがわかります。
参考:日本学術会議
(2)地方学術会議
日本学術会議は、地方での取り組みを強化するため、2018年度から地方学術会議を開催しています。
地方学術会議では、日本学術会議の科学者たちが、地域のリーダーと意見交換などを行い、地域の課題解決を目指します。
例えば2019年には札幌市で「日本学術会議in北海道」が開催されました。
この地方学術会議では、主に北海道におけるSociety 5.0の実現可能性を探りました。
Society5.0とは、AI、IoT、ネットワークなどの高度な情報技術で
- 経済成長
- 健康長寿社会の形成
- 社会変革
を実現していく取り組みです。
参考:日本学術会議
4、日本学術会議の任命拒否問題とは
日本学術会議の任命拒否問題とは、日本学術委員会が推薦した会員候補の一部を菅総理大臣が任命しなかったことを指します。
一般的に会員と連携会員は主に以下のような流れで選出されます。
- 会員と連携会員が「優れた研究または業績がある科学者」を推薦する
- 選考委員会が推薦された科学者を選考して会員候補者と連携会員候補者を決める
- 内閣総理大臣が候補者を任命する
参考:日本学術会議選出方法
現行の選出制度ができてから、総理大臣が会員候補を任命しなかったのは初めてなので、様々な議論を呼んだと言われています。
まとめ
今回は日本学術会議についてご紹介しました。
日本学術会議は、政府から独立して、科学を国の発展に活用する職務を行う特別な機関です。
日本学術会議の役割は、科学を推進し、社会の課題解決を目的として重要な提言を行うことです。
日本学術会議の今後の取り組みに注目です。