政治ドットコム環境・社会環境問題2050年カーボンニュートラルとは?国内外の動きも簡単解説

2050年カーボンニュートラルとは?国内外の動きも簡単解説

投稿日2021.6.29
最終更新日2021.06.29
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

2050年カーボンニュートラルとは、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする、という目標です。

本記事では

  • 2050年カーボンニュートラルとは
  • 2050年カーボンニュートラル実現を目指す理由
  • 2050年カーボンニュートラル実現のための取り組み
  • 企業のカーボンニュートラルへの取り組み事例
  • 脱炭素社会に向けた世界の取り組み

についてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、2050年カーボンニュートラルとは

2050年カーボンニュートラル
2005年カーボンニュートラルとは、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする、という目標です。

日本では菅総理が、2020年10月の所信表明演説で、2050年カーボンニュートラルに関する宣言をしました。

宣言内容は以下の通りです。

「菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。日本は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。」

引用元:三 グリーン社会の実現 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説 首相官邸 

2、2050年カーボンニュートラルを目指す理由

2050年カーボンニュートラル実現を目指す理由には、地球温暖化の問題があります。
2050年カーボンニュートラルについての理解を深めるために

  • 地球温暖化とは
  • カーボンニュートラルとは

について解説します。

(1)地球温暖化とは

地球温暖化とは、地球の平均気温が上昇する現象です。

2050年カーボンニュートラル グラフ引用元:世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2020年)世界の年平均気温 気象庁

地球の気温が上がることによって、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。

地球温暖化の原因は、二酸化炭素等の温室効果ガスです。

温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素の排出をなくすこと(=脱炭素)が、地球温暖化対策につながると考えられています。

2050年カーボンニュートラル
グラフ引用元:第1章 低炭素社会の構築 第2部 各分野の施策等に関する報告 環境省

(2)カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、「排出」される二酸化炭素と「吸収」される二酸化炭素の量が、同じであるという状態です。

2050年カーボンニュートラル画像引用元:「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?
経済産業省 資源エネルギー庁

カーボンニュートラルの実現には、主に以下2つの方法があります。

  • 化石燃料の代わりに、植物由来の燃料を利用する
  • 排出された二酸化炭素を、森林保護や植林によって相殺する

3、2050年カーボンニュートラル実現ための政府の取り組み

2050年かーボンニュートラル
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、政府はどのような取り組みを行っているのでしょうか?

この章では、経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の一部をご紹介します。

※政策内容は令和2年12月の資料に基づく

参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 内閣官房

(1)電力部門における改革

2020年12月の経済産業省の資料によると、二酸化炭素の排出割合は、

  • 電力由来:37%
  • 産業:25%
  • 運輸:17%
  • 業務家庭:10%
  • その他:11%

となっています。

2050年カーボンニュートラル

グラフ引用元:1(2).2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 内閣官房

排出される二酸化炭素の大部分を占める、電力部門における脱炭素化は、温暖化対策において非常に重要な取り組みです。

従来の化石燃料を用いた、火力発電の利用を最小限にし、

  • 再生可能発電
  • 水素発電
  • 原子力発電

などの、化石燃料を使わない発電方法に注目が集まっています。

参考:1(2).2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 内閣官房

(2)予算や税制について

政府は、企業の脱炭素化を促進するために、企業へ税制支援を行う予定です。
政府による、3つの税制支援についてご紹介します。

①カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設

「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設」とは、企業のカーボンニュートラル投資に対する税制支援です。

  • 脱炭素効果を持つ製品が利用された設備の導入
  • 炭素生産性(付加価値額など)を向上させるための設備の導入

といった、設備投資が支援対象になります。
2050年カーボンニュートラル
画像引用元:カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設 省エネ関連設備が活用可能な税制措置 経済産業省 資源エネルギー庁

産業競争力強化法の計画認定制度に基づき、以下どちらかの税制優遇を利用できます。

  • 最大10%の税額控除
  • 50%の特別償却

この税制の有効期限は、2023年度末です。

②繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例の創設

「繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例の創設」とは、カーボンニュートラル実現等を含めた、経営改革に取り組む企業を対象とした、税制支援です。

産業競争力強化法の計画認定制度に基づき、コロナ禍で生じた欠損金の繰越控除の上限を、投資額の範囲で、50%から最大100%に引き上げることができます。

期間は最長5事業年度までです。

2050年カーボンニュートラル

画像引用元:(1-3)コロナ禍において経営改革に取り組む企業向け「繰越欠損金の控除上限」の特例 1. 「新たな日常」に向けた企業の経営改革を実現する投資促進 令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について 経済産業省

③研究開発税制の拡充

「研究開発税制の拡充」とは、2050年カーボンニュートラル実現を含めた、イノベーションの創出拡大に対する税制支援です。

コロナ前に比べて売上金額が2%以上減少していても、研究開発税制の控除上限を、法人税額の25%から30%までに引き上げることができます。

参考:(2)カーボンニュートラルに向けた税制 4.分野横断的な主要政策ツール 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 内閣官房

2050カーボンニュートラル画像引用元:研究開発税制概要(令和3年4月1日~)研究開発税制の概要と令和3年度税制改正について 経済産業省産業技術環境局

(3)規制改革

カーボンニュートラルに対する投資を促進するために、市場における規制改革を行う予定です。
政府による3つの規制改革をご紹介します。

①クレジット取引

クレジット取引とは、CO2を削減する活動に「価値」を付け、市場ベースで行う取引です。
政府は、小売電気事業者に、一定比率以上のカーボンフリー電源の調達を義務づける予定です。

これにより、

  • カーボンフリー価値の取引市場
  • Jクレジットによる取引市場

の整備を目指しています。

②炭素税

炭素税とは、使用する化石燃料内の炭素含有量に応じて、企業や個人に課される税金です。

日本では「地球温暖化対策のための税」の導入が進められています。

政府では、カーボンニュートラル実現のために、より深い議論が必要であると考えられています。

③国境調整措置

国境調整措置とは、気候変動対策国が、気候変動対策をしていない国からの、輸入品に対する課税措置です。

自国輸出品に、炭素コスト分の還付をすることもあります。
国境調整措置は、ヨーロッパやアメリカで議論が進んでおり、政府は諸外国と連携した対応を検討しています。

参考:(4)規制改革・標準化(カーボンプライシング)4.分野横断的な主要政策ツール 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 内閣官房

(4)国際連携

前述の国境調整措置を含め、政府は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、諸外国との国際連携を重要視しています。
2050年カーボンニュートラル
画像引用元:(5)国際連携 4.分野横断的な主要政策ツール 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 内閣官房

米国・欧州との間では、

  • イノベーション政策における連携
  • 第3国支援を含む個別プロジェクトの推進
  • 要素技術の標準化とルールメイキングの連携

の強化を図っています。

新興国との間では、

  • 脱炭素化に対する幅広い解決策の提示
  • 市場獲得を踏まえた2国間及び多国間の協力

が進められる予定です。

参考:(5)国際連携 4.分野横断的な主要政策ツール 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 内閣官房

4、企業のカーボンニュートラルへの取り組み事例

企業による、カーボンニュートラルへの取り組み事例について、ご紹介します。

(1)阪急電鉄の事例

阪急電鉄は、摂津市駅を、日本初の「カーボン・ニュートラル・ステーション」としました。
カーボン・ニュートラル・ステーションとは、駅から排出されるCO2量を、ゼロにする駅を指します。

省エネ設備によって、CO2を削減。
直接的に削減が困難なCO2については、排出枠購入等の方法を取っているのです。

2050年カーボンニュートラル画像引用元:環境対策 摂津市駅の取り組み 阪急電鉄

摂津市駅では、省エネ設備として

  • 太陽光発電
  • 無水トイレ
  • 雨水利用設備

を導入しました。
また、駅周辺に緑を植えることで、CO2の吸収を促しています。

参考:摂津市駅の取り組み 阪急電鉄

(2)三菱重工の事例

三菱重工は、2020年11月に、「エナジートランジション」というプロジェクトを発表しました。

エナジートランジションとは、以下4つのステップで、ネットゼロカーボンの達成を目指す取り組みです。

  • 第1ステップ:火力発電の脱炭素化と原子力によるCO2削減
  • 第2ステップ:産業用エナジーの効率的な活用
  • 第3ステップ:カーボンリサイクルの推進
  • 第4ステップ:水素バリューチェーンの構築

参考:三菱重工、2050年カーボンニュートラルに向けた戦略「エナジートランジション」を発表 原子力産業新聞 

5、脱炭素社会に向けた世界の取り組み

 脱炭素社会に向けた、主要国での取り組みや指針についてご紹介します。

(1)アメリカ

バイデン大統領は、2021年4月の気候変動サミットで、温室効果ガス排出量の削減目標を発表しました。

2030年までに、温室効果ガスの排出量を2005年より、50%~52%削減することを宣言。

バイデン大統領の選挙公約では、「気候変動対策関連に2兆ドルの投資」という公約も掲げられているため、今後の政策に注目が集まっています。

参考:米 温室効果ガス排出量“2030年までに半減” 新たな目標表明へ NHK
バイデン政権発足で変革する気候変動政策(米国) 日本貿易振興機構(ジェトロ) 

(2)ヨーロッパ

ヨーロッパでは、欧州連合(EU)が2050年カーボンニュートラル実現を目指し、2019年に「欧州グリーンディール」を発表しています。

欧州グリーンディールとは、2050年までに、EU域内の温室効果ガス排出をゼロにするという政策です。

EUでは、欧州グリーンディールを推進するために、2021年3月に「欧州気候法」を制定しました。

また、将来的な指針となる「欧州気候協約」に対する意見の公募も始めています。

参考:脱炭素と経済成長の両立を図る「欧州グリーンディール」 EU MAG 欧州委、気候中立を盛り込んだ気候法案発表 日本貿易振興気候(ジェトロ)

(3)中国

習近平主席は、2020年9月の国連総会で、2060年カーボンニュートラル目標を発表しました。

2060年カーボンニュートラル目標とは、2030年までに、CO2排出量を減少に転じさせ、2060年までに、CO2の排出量を実質ゼロにする、という目標です。

中国は2020年12月の「気候野心サミット2020」で、2030年までに、GDPに対するCO2排出量を2005年より、65%以上減らすことを宣言しています。

参考:中国 2060年までにCO2排出「実質ゼロ」 習主席が国連総会で発表 毎日新聞 

まとめ

今回は2050年カーボンニュートラルについて解説しました。

2050年カーボンニュートラルとは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標です。

日本だけではなく、世界各国がカーボンニュートラルを掲げています。

従来のように、直接的なCO2削減だけではなく、直接的に削減できないCO2をどのように、実質ゼロにしていくのかが、重要な点になってくるでしょう。