
最近、宿泊税の導入と、その活用方法をめぐるニュースが増えています。宿泊税は観光という私たちにとっても身近なレジャーに関わる税金ですが、どのような目的で導入され、何が課題となっているのでしょうか。
今回は、宿泊税とは何か、その概要から最近の動向までわかりやすく解説してお届けします。
宿泊税とは何か
宿泊税とは、ホテルや旅館などの宿泊施設を利用する際に課される税金のことを意味します。
これは法定外目的税で、地方税の一つとなっています。地方自治体が条例を制定し、総務大臣が同意すれば導入できる税金であり、宿泊者が負担し、宿泊施設が徴収して自治体に納める仕組みとなっています。
宿泊税は2002年、全国で初めて東京都が導入しました。現在は、大阪府、京都府、福岡市、金沢市など、2025年1月時点では11の自治体で宿泊税の徴収が行われており、課税基準や税率は地域ごとに異なります。
例えば、東京都では1泊1人あたり10,000円以上15,000円未満の宿泊に対して100円、15,000円以上の宿泊に対して200円が課されます。なお、10,000円未満の宿泊に対しては課税されません。
一方、大阪府では7,000円以上15,000円未満の宿泊に対して100円、15,000円以上20,000円未満の宿泊に対して200円、20,000円以上の宿泊に対して300円の宿泊税がかかります。なお、7,000円未満の宿泊に対しては課税されません。
宿泊税が導入された経緯
宿泊税が導入された背景には、訪日観光客の増加や観光財源の確保の必要性が挙げられます。特に、2000年代以降、日本政府は「観光立国」を推進し、多くの自治体が観光産業の活性化を目指してきました。
宿泊税を導入した自治体では、税収入を観光PRやインフラ整備に活用し、持続可能な観光振興を目指しています。
最近、宿泊税が話題になっている理由
宿泊税が注目されている理由の一つは、観光需要の回復と地方自治体の財政問題です。新型コロナウイルスの影響で観光産業は大きな打撃を受けたものの、2023年以降、訪日外国人観光客の増加に伴い、宿泊税のあり方が再び議論されています。
特に、京都市が宿泊税の引き上げを検討していることが話題となっています。京都市は2025年1月14日、宿泊者に対して1泊当たり200〜1000円を課していた宿泊税について、最高額を1万円まで引き上げる方針を発表したのです。
京都市では観光客の増加により「オーバーツーリズム」が問題となっており、宿泊税収入を活用して観光対策を強化する方針を示しています。
また、他の自治体でも宿泊税の導入を検討する動きが活発化しています。2025年度以降の導入を決めた自治体は、北海道や宮城県、広島県、札幌市、仙台市など14道県市村あるほか、沖縄県や千葉県、熊本市などが導入を検討中と報じられています。
参考)朝日新聞
宿泊税のメリットとデメリット
宿泊税のメリットとしては、観光財源の確保が挙げられます。宿泊税収入を観光振興やインフラ整備に充てることで、地域経済の活性化につながるとしています。
また、観光客の負担による公平性も挙げられます。宿泊施設を利用する人が負担するため、地域住民の税負担を増やさずに済むという意見があります。
そして、近年問題になっているオーバーツーリズム対策も挙げられます。過度な観光客流入による問題を解決する財源として活用されるからです。
その一方で、宿泊税のデメリットとしては、観光客の負担増加が挙げられます。宿泊料金が高くなることで、観光客が減少する可能性も指摘されています。また、宿泊税の徴収・申告手続きが宿泊施設の業務負担となるとする意見もあります。そして、自治体ごとに制度が違うことから、観光客にとって分かりにくいとする声もあります。
まとめ
宿泊税は、観光振興や地域財源の確保を目的として導入されており、今後も導入する自治体がますます増える可能性があります。
観光産業の回復が進む中で、宿泊税をどのような形で導入・活用するのか。あるいはそのほかの仕組みや制度を導入することで、地域経済の発展につなげるのかが、重要な課題となっています。
