コンプライアンスとは、直訳すると「法令遵守」と訳される言葉です。
今日では「倫理・道徳や常識といった社会規範に従って企業活動を行うこと」という意味合いで、用いられる傾向にあります。
「企業コンプライアンス」における文脈で、用いられることが多い言葉です。
頻繁に耳にする言葉ではありますが、CSRやコーポレート・ガバナンスとの違いなど、言葉の意味が明確によくわからない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回はコンプライアンスについて、以下のとおりご紹介します。
- コンプライアンスの概要
- コンプライアンス違反事例
- CSRやコーポレートガバナンスとの違い
- 公益通報者保護法とコンプライアンスの関係
本記事がお役に立てば幸いです。
1、コンプライアンスとは
コンプライアンスとは直訳すると「法令遵守」です。
今日使われている「企業コンプライアンス」としてのコンプライアンスは、より広い意味を表します。
法令遵守を前提として、更に「法律として明文化されていなくとも“社会的ルールとして認識されているルール”に従うこと」も含まれます。
上記の意味でのコンプライアンスが、企業経営において重視されているのです。
現代社会におけるコンプライアンスという言葉には、法令だけではなく、倫理や社会規範なども守るべきである、という考え方を含んでいるようです。
2、コンプライアンス違反事例
ここで、コンプライアンス違反事例を3つ紹介します。
より具体的な内容に触れることで、コンプライアンスの意味や重要性をより理解いただけたら幸いです。
(1)電通事件
1つ目は、電通事件です。
大手広告代理店の電通では、1991年と2015年の2度、社員が過労死する事件が起きました。
どちらも、過労死ラインを越える残業の強制とパワハラ・セクハラによって、社員がうつ状態に追い込まれてしまったのです。
大々的な報道もあり、この電通事件は社会的に激しい糾弾を受けました。
過労死まで追い詰められる状況を作ってしまった要因は、
- 労働環境を軽視していたこと
- ハラスメントが常態化していたこと
など複数要因が合わさり、発生した事件だと言われています。
最終的には
- 遺族から安全配慮義務違反や労働基準法違反を訴えられたこと
- 過労による自殺が労災として認定されたこと
などから、社会に大きな影響を与えました。
特に過労による自殺に関して、様々な意見が交わされるきっかけになった事例の1つです。
(2)JR福知山線脱線事故
2つ目は、JR福知山線脱線事故です。
2005年4月25日に発生した、JR福知山線脱線事故では、107人の命が奪われました。
大規模かつ悲惨な鉄道事故だったので、記憶にある方も多いのではないでしょうか。
事故の原因は、
- 鉄道の安全システムの不足
- 人為的なミス(運転手の速度超過)
などが挙げられています。
しかし、更に根深い原因として指摘されたものが「組織的な激しいパワハラ」です。
当時のJR西日本では、車両の停止位置を誤るオーバーランなどの、人為的な運転ミスに対して、「日勤教育」という名の再教育プログラムが実施されていました。
二度とミスを繰り返さないという反省自体はとても大事なことですが、この日勤教育は度を越えていたと言われています。
オーバーランなどのミスをした運転手は、日勤教育を恐れるあまり、生じた運行遅れを取り戻そうとした結果、速度超過による脱線事故へとつながってしまったと考えられています。
パワハラという1つのコンプライアンス違反が、従業員を萎縮させたことが原因で、別のコンプライアンス違反を引き起こし、最終的には大きな事故に繋がってしまった事例です。
(3)ケフィア事業振興会における不当な資金集め
3つ目は、ケフィア事業振興会における不当な資金集めです。
2018年、通信販売会社「ケフィア事業振興会」の出資法違反により、戦後最大級の詐欺とも言われる事件が起きました。
ケフィア事業振興会は、既に経営が破綻しかけているにも関わらず、不正に経理状況を隠して出資を募り続けたのです。
経営の実態を曖昧にするために、様々な違法手段を取り、悪質な違反を重ねていきました。
このように不当な資金集めを続けていましたが、遂には1,001億円の負債を抱えて倒産しました。
結果として、被害者数は全国で3万人以上、被害総額は約1,000億円に達したのです。
3、CSR及びコーポレートガバナンスとの違い
コンプライアンスとよく似た言葉に、CSRとコーポレートガバナンスがあります。
ここでは、それぞれの言葉の意味をご説明します。
CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略称で「企業の社会的責任」のことです。
具体的に言うと、全ての企業は「自社の利益追求だけではなく、社会に対する影響について責任を持つ必要がある」という考え方です。
コンプライアンスも、法令・倫理・社会規範などのルールを守るという考え方ですが、CSRは、より広義な意味で、社会の要請・要求に応える考え方です。
組織が大きいほど、企業活動が社会に与える影響も大きくなります。
そのため、CSRは特に大企業に対して、強く求められる傾向にあるのです。
一方で、コーポレートガバナンスとは、「企業統治」を意味する言葉です。
企業統治とは、企業を監視する仕組み全体を指します。
具体的には「組織の経営が適切に行われているかどうか」を、企業の外側から監視する仕組みのことです。
「適切な経営」には、法令や内部統制システムなどの遵守も含むため、コンプライアンスはコーポレートガバナンスの一部と言えるかもしれません。
4、公益通報者保護法とコンプライアンスの関係について
最後に、公益通報者保護法とコンプライアンスの関係についてご説明します。
公益通報者保護法とは、事業者の法令遵守経営を強化するために、2006年に施行された法律です。
事業者の法令違反行為を、労働者が通報した場合に、解雇などの不利益な扱いから、労働者を保護することを目的としています。
企業がコンプライアンスを遵守する上で、内部通報の制度は、とても重要な意味を持ちます。
2020年には、罰則の強化や通報者の保護条件などについて、法改正が行われました。
なお、通報先の例としては、総務省における監察室や公益通報受付窓口が該当します。
まとめ
今回はコンプライアンスについて詳しくご紹介しました。
コンプライアンスの概要に加えて、重視されるようになった背景や、似た意味の用語との違い、についてもおわかりいただけたのではないでしょうか。
企業運営において、コンプライアンスの遵守は不可欠です。
本記事が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。