
近年、「就職氷河期世代」に改めて注目が集まっています。日本政府は、2020~2022年度の3年間で、就職氷河期世代の正社員数を30万人増やす目標を掲げたことを皮切りに、様々な対策を実施しています。一方で、野党は就職氷河期世代が抱えている課題への対応がいまだ不十分であるとして、新たな制度の制定や救済策などを提案しています。
就職氷河期世代とは、どのような世代なのでしょうか。以下では、就職氷河期世代の概要から、抱えている課題、今後の対策まで詳しく説明します。
1. 就職氷河期世代とは
厚生労働省では、就職氷河期世代について、「バブル崩壊後の1990〜2000年代、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行い、現在も様々な課題に直面している方々」としています。
そのため、特に1970年代前半〜1980年代前半生まれの人々が多く該当します。
バブル崩壊後、日本経済は長期不況に陥り、企業は採用を大幅に抑制しました。1993年〜2005年頃は新卒者の求人倍率が低く、大卒でも正社員になれない人が続出しました。例えば、1999年卒の大卒求人倍率は1.0倍を下回り、希望する職種につけずフリーターや契約社員になる人が増えました。
引用:厚生労働省
2. 就職氷河期世代の課題とは
① 収入・生活の不安定さ
日本企業は新卒一括採用を重視し、中途採用枠が少ないことから、当時正社員として就職できなかった人は正社員になる機会が乏しかったと言えます。そのため、就職氷河期世代は非正規雇用率が高く、それに加えてキャリア形成も難しく、同世代の正社員よりも収入が低い傾向にあります。
最近では、人手不足などを背景に就職氷河期世代の男性の正社員率がバブル並みになったとする指摘もありますが、生涯賃金や貯蓄、年金といった点で、他の世代と比べて格差があるとされています。
参考:日本経済新聞
② 社会的孤立と精神的問題
新卒での就職に失敗し、長期にわたって非正規雇用や無職の状態が続いた人の中には、社会と疎遠になってしまうケースもあります。
例えば、中高年のひきこもりの中心層は就職氷河期世代の40〜50代とされています。さらに、50代のひきこもり当事者を、80代を迎えた親が支える「8050問題」は、経済的・社会的な窮状として注目されるようになり、政府も問題視しています。
3. 就職氷河期世代に対する政治的取り組み
政府はこの問題を解決するために、以下の施策を行っています。
① 就職支援策の強化
就職氷河期世代活躍支援プランによる、正社員雇用の増加を目指す施策
2020〜2022年度の3年間で、就職氷河期世代の正社員数を30万人増やす目標を掲げたが、目標に達せず2年の延長を行う。
就職氷河期世代の活躍支援のための、各種助成金
企業に氷河期世代を正社員として雇用した場合に、助成金(例:1人採用で最大60万円支給)を支給する施策
② 職業訓練・資格取得支援
ハローワークでの就職相談強化(キャリアコンサルタントを配置)
リカレント教育(学び直し支援)で、ITスキルや介護・福祉などの職業訓練を実施
国家資格取得の補助(例:介護福祉士、電気工事士など)
③ 社会保障の充実
低所得の就職氷河期世代向けに、生活困窮者自立支援制度を拡充
住宅確保給付金など、住居支援も強化
4. 今後の就職氷河期世代への対策について
日本政府は引き続き就職氷河期世代の救済を重視していますが、野党の中には2025年の参院選を前にイシュー化する政党も現れています。
例えば、国民民主党は「就職氷河期世代政策に関する提言」として、以下の提言を行っています。
就職氷河期世代の固定イメージ(男性×非正規)の払拭
①就職氷河期世代の実態調査と政府施策の検証
就職氷河期世代を中心とする中高年層の年金不安への対応
②厚生年金の「過去遡及納付」と「最低保障年金制度」の構築
就職氷河期世代に“履歴書と面接を入口としない採用”を
③国主導によるソーシャルファームの全国展開 <民間企業採用促進>
就職氷河期採用凍結による人材の世代不均衡是正
④公務員採用を拡大 <公企業採用促進>
就職氷河期世代のリカレント・リスキリングに生活支援で伴走
⑤求職者ベーシックインカムの導入
切実な就職氷河期世代の親介護問題
⑥ビジネスケアラー支援策の充実
引用:国民民主党
まとめ
就職氷河期世代の問題は、今後の日本社会にとって重要な課題であり、引き続き政府や企業、社会全体での取り組みが必要とされます。今夏の参院選を前に、各党がどのように取り組もうとしているのか、その政策に注目が集まっています。
