経済格差とは収入や貯金において格差があることを指します。
例えば日本国内では正規雇用(契約期間が限定されておらずフルタイムが原則)の労働者が減少し、パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者が増加したことなどが1つの要因となり、経済格差を作り上げて来ました。
そこで今回は日本と世界で深刻化している「経済格差」についてご説明します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、経済格差とは
「経済格差」とは個人間・地域間・国の間に生まれる経済力の差のことで、経済格差が定着し、経済力によって区別される階層がある社会を「格差社会」といいます。
格差社会では下の階層から上の階層へ行くことは困難で、上の階層から下の階層に落ちれば簡単に這い上がれない傾向があります。
つまり、富裕層と貧困層の間に見えない壁が存在し、同じ社会に生きていても知らない間に所得の格差が生まれてしまうのです。
2、日本及び世界における経済格差
まず初めに、日本や世界でどのような経済格差があるのかみていきましょう。
(1)日本の現状
2017年に発表されたOECD経済審査報告書によると日本の貧困相対率は世界で7位です。
先進国ではアメリカの次に高い貧困率を記録しています。
日本の経済格差の実態を見てみましょう。
社会格差を測る目安に「ジニ係数」と呼ばれるものがあり、ジニ係数は平等な状態を「0」とし、「1」に近づくほど不平等になります。
近年、人口構成の高齢化、単身世帯化が進む中で、ジニ係数で見ると緩やかに格差が拡大してきています。
しかし社会保障制度による再分配で何とか横ばいを維持している部分もあり。
日本の貧困問題が深刻になった原因には、戦後の高度経済成長から一億総中流時代に突入し、バブル崩壊まで水面下で増加していた貧困層への対応が遅れたことが考えられます。
それだけではなく高齢化の進展を和らげる人口問題への取組、若年層の貧困問題の適切な対応、社会保障制度の持続可能性の確保など、格差の問題は、重要な経済・社会政策の真価が問われる重要な問題なのです。
(2)世界の現状
では世界ではどうなっているのか詳しく見てみましょう。
①貧困地域
世界銀行によると1日1.9ドル(約200円)で暮らす貧困人口は7億6000万人です。
1990年の貧困率36%から2015年は貧困率10%まで減少していますが、いまだに貧困問題は解決していません。
下記の図は世界銀行が発表した貧困の分布地図ですが、南半球のアフリカや南米に貧困が集中し、地域間で経済格差が生まれていることがわかります。
②富裕層の存在
経済格差の頂点には「超富裕層」と呼ばれる人々がいます。
Wealth-XのThe World Ultra Wealth Report 2019によると5億円(3000万ドル)以上の資産を持つ人々は「超富裕層」とも呼ばれ、そのうちの72%が10カ国に集中し、10カ国の内訳はアメリカ、中国、日本、ドイツ、カナダ、フランス、イギリス、香港、イタリア、スイスの順となっています。
参考:The World Ultra Wealth Report 2019 WEALTH-X
このようなデータからも目に見えない格差が存在していることがわかります。
③南北問題
超富裕層の国順位を見てみると北半球の国ばかりの名前が挙がります。
これは「南北問題」と呼ばれる経済格差のことで、北半球に富が、南半球に貧困が集中している現状があり、JICA(国際協力機構)のデータによると1日1.25ドル(約130円)で暮らす人の割合はサハラ以南のアフリカ地域で51%と、2人に1人が深刻な貧困に陥っています。
3、日本に及び世界における経済格差の原因
日本及び世界で経済格差が起きている原因をここで見ていきましょう。
(1)日本で経済格差が起きる原因
まずは日本国内の要因を取り上げていきます。
①非正規雇用の増加
日本の格差社会に拍車をかけたのは、バブル崩壊による非正規雇用の増加です。
1993年にバブルの崩壊と1998年の金融危機を経て正規雇用者の数は減少し、企業は人件費がかからない非正規社員を採用するようになりました。
その後、リーマンショックが起きる2008年まで労働者派遣法は次々と緩和しましたが、リーマンショックを機に約25万人の非正規雇用が失業しました。
非正規雇用者は正社員よりも雇われやすいメリットがあるものの、賃金が低く、手当や保証も少ないため、安易にクビにされやすいデメリットもあります。
②実力主義について
グローバル化に伴い、日本でも「実力主義」が重視されるようになってきました。
終身雇用や年功序列が撤廃され、国内以外の労働者(外国人労働者)と競争しなければいけない日も近づいてきています。
実力主義は経済を活性させる良い考えではありますが、格差社会では残酷な結果をもたらす可能性もあります。
たとえば、貧困家庭に生まれた子どもと裕福な家庭に生まれた子どもでは学習の機会に差があり、実力だけで判断される社会は「持てる者と持たざる者」の溝をより深くするかもしれないのです。
(2)世界各国で経済格差が起きる原因
続いて世界規模の要因について見ていきましょう。
①気候変動
2019年に開かれた国連の温暖化対策会議COP25では「気候アパルトヘイト」という言葉が流行し、気候変動による格差の拡大が懸念されています。
「気候変動と貧困は関係あるの?」と感じる人もいるかもしれませんが、異常気象による洪水やハリケーンで家を失った貧困層の人々は簡単に立ち直ることはできず、温暖化による光熱費の増加、異常気象による食料品の高騰は彼らの家計を圧迫するケースがあります。
このまま経済格差と気候変動が同時に進めば、貧困層の人々は生きていくことさえも難しくなってしまうのです。
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②植民地支配の歴史
南北問題にあるように南半球の国々が貧困に陥った原因には先進国による植民地支配の歴史があります。
貧困率が深刻なアフリカの例を見てみましょう。
大航海時代の1513年、スペインが奴隷供給契約許可証を発給し、アフリカで本格的な奴隷制度が開始されました。
その後、人権上の問題から奴隷制度が撤廃されたものの、アフリカの植民地化が始まります。
先進国によるモノカルチャー経済がまん延し、自国政治は腐敗しました。
過去の植民地化の歴史が「援助なくして国が維持できないアフリカ」の現在を引き起こしています。
③貿易上の問題点
オーガニックマークと同じように「フェアトレードマーク」という言葉を耳にしたことはありませんか?
これは先進国が途上国の人々を安価な労働力として酷使したり、不平等な貿易を押し付けたりすることを防ぐマークのことで、先進国による途上国への不当な取引を「アンフェアトレード」と呼びます。
このアンフェアトレードによって途上国は損失を被りそのしわ寄せは直接国民を苦しめ、経済格差はさらに拡大していきます。
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4、日本及び世界規模での取り組み
では、そういった経済格差をどのように是正していけばよいか詳しく見ていきましょう。
(1)日本の取り組み
まずは日本の取り組みから取り上げていきます。
①同一賃金同一労働
安倍政権による働き方改革によって2020年から「同一賃金同一労働」が始まり、ガイドラインが定められました。
このガイドラインでは、格差社会の温床となっていた正社員と非正規雇用の待遇の格差をなくし、双方が平等に扱われる社会の実現を目指しています。
また、世界でも国際労働機関(ILO)がILO憲章に基づき、
- 非正規雇用の社会的保護の強化
- 介護や育児など非正規雇用の生活ニーズに応じた雇用の創出
など、さまざま対策が進められています。
②最低賃金の引き上げ
都道府県別に決められている最低賃金ですが、東京の最低賃金1013円と最も低い都道府県の790円を比べると223円もの地域差があります。
“東京は時給が高く、地方は安い”という地域格差が首都圏への人口集中や地方の過疎化に直結しているため、最低賃金を全都道府県で引き上げれば貧困層の生活は底上げされ、地域格差も解消する糸口にもなります。
③ベーシックインカム|生活保護制度
コロナウィルスの10万円定額給付金をきっかけに「ベーシックインカム」が注目を集めています。
ベーシックインカムとは、最低限の生活費が国から毎月支給される所得保証制度のことで、世界でも試験的に実施が始まっています。
たとえば、フィンランドでは2017年から2018年にかけて無作為に選ばれた失業者に対して月7万円を2年間給付されました。
(2)世界の取り組み
世界の取り組みをご紹介します。
①SDGsを設定
国連は2015年に開かれたサミットで持続可能な開発目標(SDGs)を発表しました。
この目標には2030年までに実現したい17の世界目標が掲げられ、貧困問題や格差社会の解決も含まれています。
日本は2019年に「SDGsアクションプラン2020」を発表し、働き方改革の着実な実施を取り組みの1つとして取り上げています。
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②開発援助|投資
途上国の貧困を解決するためには、先進国による開発援助と投資が必要です。
最近では一方的な援助は途上国の自立を妨げるという考えから「開発援助という名の投資」に注目が集まっています。
途上国だけでは難しい専門的な投資の問題も、世界銀行のグループである国際金融公社と多数国間投資保証機関が途上国への投資を支援し、民間投資の促進と投資保険の提供を行っています。
③貿易問題の是正
アンフェアトレードやタックスヘイブン(税金逃れ)にあるように貿易の不平等が世界の格差社会を悪化させています。
国際機関である世界貿易機関(WTO)は、途上国が先進国と対等に貿易ができるように関税や補助金などの面で「途上国優遇制度」を整備し、途上国の立場を保護しています。
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まとめ
今回は「経済格差」について解説しました。
格差は目に見えなくても、格差を知って声を挙げることはできます。
“きちんと働けば相応の豊かな生活を暮らせる社会”をSDGsとともに一緒に実現していきましょう。