確定申告とは、1年間で課される税金を確定させるために、収入などを税務署に申告することです。
申告の対象者は、個人事業主、副業をしている会社員、投資で利益を得た人など様々です。
今回の記事では、以下についてわかりやすく解説します。
- 確定申告の概要
- 確定申告の義務がある人
- 確定申告の流れ
- 青色申告と白色申告の違い
- 年末調整との違い
本記事がお役に立てば幸いです。
1、確定申告とは
確定申告とは、「この1年で私はこれだけの所得があったので、私が払う所得税は○○円です」というように、納めるべき税額を税務署へ報告する手続きのことです。
ここでは、
- 所得の種類
- 申告に期限
について見ていきましょう。
(1)所得の種類
確定申告で納める所得税は、「所得」にかかるものですが、収入がすべて「所得」になるとは限りません。
所得は以下のように定まります。
「所得」=「得た収入」―「経費などの必要経費(控除額も含む)」
日本の所得税法では、以下10種類が所得税の課税対象です。
- 給与所得(おもに給料ボーナスなど)
- 事業所得(農業や漁業、製造業やサービス業など)
- 不動産所得(土地や建物、借地権などの貸付など)
- 利子所得(預貯金や債権の利子、投資信託の分配など)
- 配当所得(株式の分配金など)
- 退職所得(退職金など)
- 山林所得(山林伐採や立ち木の売却など)
- 譲渡所得(建物やゴルフ会員権のような資産の売却など)
- 一時所得(保険金や懸賞の賞金など)
- 雑所得(以上のいずれにも当てはまらない所得)
所得の種類や金額によって、申告不要となるケースもあります。
(2)申告の期限
確定申告を行うのは、年に1回です。
原則「2月16日~3月15日」の1ヶ月間に、前年1月1日~12月31日までの所得を申告し、納税します。
期限を過ぎると「期限後申告」となり、「延滞税」が課される場合があります。
「還付申告」をする場合は、上記の申告期間を過ぎてもかまいません。
申告対象期間の翌年1月1日以降なら、いつでも還付申告の手続きができます。
受付期間は、5年です。
還付申告の対象者は、以下になります。
- 医療費控除・寄付金控除を受けたい人
- 住宅ローンを受けたい会社員(初年度のみ)
- 特定の寄附をした人
- 退職後、年末調整しておらず、所得税を支払いすぎている人
参考:確定申告特集|国税庁
2、確定申告の義務がある人
以下に該当する人は、確定申告の義務が発生します。
- 個人事業主
- 一定の条件を超える会社員
- 公的年金等の収入額が400万円を超える人
- 投資で利益を得た人
それぞれについて、以下で確認していきましょう。
(1)個人事業主
個人事業主とは、個人で事業を行っている人のことです。
家族経営の飲食店事業者や、個人弁護士・税理士などが当たります。
ただ、
- 売上が赤字である
- 所得控除額が売上よりも大きく、納める税金がない
という場合には、申告義務は生じません。
(2)一定の条件を超える会社員
一般的な会社員は、源泉徴収という形で、会社がまとめて納税手続きをするので、確定申告は不要です。
ただし、
- 年収が2000万円以上の人
- 2ヶ所以上から給与をもらっている人
- 副業などの合計額が20万円以上の人
- 外国企業などから退職金をもらった人
に当てはまる人は、正しい所得を明確にするために、確定申告をする必要が出てくる場合があります。
(3)公的年金等の収入額が400万円を超える人
年間の公的年金が400万円を超える人は、確定申告が必要です。
また、公的年金に関する所得以外に、20万円以上の所得がある人も、確定申告を行わなければなりません。
画像出典:ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度|政府広報オンライン
(4)投資で利益を得た人
不動産や株式などへの投資で利益を得た人は、その合計額や所得状況によって、確定申告の義務が発生します。
株式投資による利益の納税については、独自のルールがあるため、個別に調べる必要があります。
一例としては、「NISAを利用している場合、120万円までの利益なら申告は必要ない」といったものです。
3、確定申告の流れ
確定申告には、確定申告書を税務署に提出する必要があります。
ここでは、確定申告の主な流れである
- 必要書類の準備
- 確定申告書の作成
- 税務署への提出
- 税金の納付または還付
について解説していきます。
(1)必要書類を準備する
申告内容に応じて、必要なものを準備しておきましょう。
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 印鑑
- 金融機関の記帳もしくは口座番号
- 確定申告書
- 所得を証明する書類
- 控除を受けるための書類
所得を証明する書類は、
- 源泉徴収票
- 青色申告決算書
- 収支内訳書
- 株の年間取引計算書
が当てはまります。
控除を受ける場合にも、控除の種類によって必要書類が異なるので、調べておきましょう。
たとえば、医療費控除では、医療費の領収証が必要です。
(2)確定申告書を作成する
確定申告書の入手方法は、以下の3通りです。
- 国税庁のHPからダウンロードする
- 税務署や税務課、確定申告相談会場で受け取る
- 税務署から郵送で取り寄せる
確定申告書には、
- 確定申告書A
- 確定申告書B
の2つがあります。
確定申告書Aは、会社員やアルバイトなど、給与や年金を受け取っている人向けの申告書です。
確定申告書Bは、収入の種類に関係なく、誰でも利用できる申告書ですが、Aと比べ記入項目が多くあります。
確定申告書を入手したら、「所得控除の金額」を計算し、「納める分の税金」もしくは「還付される税金」を書きます。
還付を受ける場合は、振込先の口座も記入しましょう。
国税庁のHPには、「確定申告書等作成コーナー」という確定申告書を作成できるWebサービスがあります。
画面の案内に沿って金額等を入力するだけで、申告書を作成できます。
(3)税務署へ提出する
税務署への確定申告書の提出する方法は、以下3つです。
- 税務署の窓口で手渡しする
- 税務署へ郵送する
- e-Tax(電子申告システム)を利用する
窓口で提出する場合、
- マイナンバーが確認できる書類
- 身分証明書
が必要になります。
郵送の場合には、コピーを同封しましょう。
e-Taxでは、「確定申告書等作成コーナー」からオンラインでの提出ができます。
2019年1月には、
- マイナンバーカード方式
- ID・パスワード方式
の2つの方法から、e-Taxを利用できるようになりました。
また2020年1月31日からは、スマートフォンでの申告も可能となり、行政手続きの電子化が進んでいます。
(4)税金の納付・還付
未払い分の税金がある場合には、別途税務署へ納税する必要があります。
納税期限は、確定申告と同じ3月15日までです。
還付を申告した場合は、通常1~2ヶ月程度で「国税還付金」として、指定口座に入金されます。
参考:確定申告特集|国税庁
参考:確定申告書等作成コーナー|国税庁
4、青色申告と白色申告の違い
確定申告には、
- 青色申告
- 白色申告
の2種類があります。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
(1)青色申告
青色申告とは、一定の要件を満たすことで、税制上の優遇が受けられる申告です。
対象となるのは、以下の所得がある人になります。
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
申告形式は、
- 55万円もしくは65万円が控除される「複合簿記」
- 10万円が控除される「簡易簿記」
のどちらかです。
青色申告のメリットとしては、
- 身内に給料を払って経費にできる
- 10万円以上30万円未満の高額の物を一括で経費にできる
- 家賃や電気代などの経費になり得る
- 最大で65万円の控除を受けられる
- 赤字を3年間繰り越せる
などがあります。
青色申請のメリットを受けるためには、事前に
- 開業届
- 青色申告承認申請書
を提出し、承認されることが必要です。
「開業2ヶ月後以内」または「1月1日から3月15日の間」に、「青色申告承認申請書」を申請しなければ、来年からの適用となるので、申請時期には注意しましょう。
参考:青色申告制度|国税庁
(2)白色申告
白色申告とは、青色申告以外の人が利用する申告になります。
申請形式は記入項目が少ない「単式簿記」で、事前申請も必要ありません。
2014年1月から、事業所得が300万円以下でも、帳簿の記帳・保存が義務化されました。
参考:個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について|国税庁
5、年末調整との違い
年末調整とは、会社が行う所得税額を計算する手続きのことです。
一方、確定申告は、個人が自分で計算して税務署に申告・納税する手続きになります。
毎月の源泉徴収額は
- 給与の額は1年間変わらない
- 控除の金額が変わらない
ことを前提としているため、実際の所得税と異なるケースが出てきます。
年末に、会社が最終的な所得額に調整することで、ズレのない所得税額を確定させるのです。
給与所得が一箇所しかない場合は、年末調整だけで所得税額が確定するので、確定申告は不要になります。
ただし、以下に当てはまる人は、確定申告を行う必要が出てきます。
- 給与年収が2000万円を超える人
- 20万円以上の副業収入がある会社員
- 医療費や寄付金控除などを受けた人
参考:年末調整|国税庁
年末調整について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
年末調整とは?控除の種類・確定申告との違いについて簡単解説
まとめ
今回は「確定申告」について解説しました。
最近では、確定申告ソフトやスマートフォン向けアプリの普及により、比較的簡単に確定申告ができるサービスが増えています。
また副業を解禁している企業も増え、確定申告はより身近な手続きとなるでしょう。
正しい知識を身につけ、過不足のない自分に適した確定申告をしましょう。