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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー日本らしい静かなリーダーシップで普遍的価値観を守る外交を続けたい。自由民主党・英利アルフィヤ議員インタビュー

日本らしい静かなリーダーシップで普遍的価値観を守る外交を続けたい。自由民主党・英利アルフィヤ議員インタビュー

投稿日2025.5.12
最終更新日2025.05.12

日銀そして国連と幅広いキャリアで活躍された自由民主党(以下、自民党)・英利アルフィヤ議員は、昨年11月に外務政務官に就任され各国を飛び回っています。英利議員が国連職員から政治を目指すと決意した理由や、外務政務官として感じる国際関係の中での日本の役割などについてうかがいました。
(取材日:2025年4月3日)
(文責:株式会社PoliPoli 児島花生里)

英利アルフィヤ議員インタビュー

英利アルフィヤ(えり・あるふぃや)議員
1988年生まれ。
米ジョージタウン大学外交政策学部国際政治学科、
同外交政策大学院 修士課程 修了。
日本銀行、国連事務局本部の勤務を経て、2022年参議院選挙に立候補。
2023年衆議院補欠選挙(千葉5区)に立候補し初当選(現在2期目)。

国連職員から政治家を目指すと決めた2つの理由

—英利議員は、日本銀行そして国連と幅広いキャリアで活躍された後に政治の世界に入られています。最初に政治を目指そうと決意したきっかけを教えてください。

私が政治を目指そうと思ったのは、やはり国連での経験が大きいです。その中で大きな理由は2つあります。私は国連で2016年から2022年まで約6年働きました。その間は各国でジェンダーパリティ、いわゆる職場や社会のあらゆる場における男性と女性の代表率を同等にする取り組みが前進した時期です。国連には世界各国から国連総会などの会議のために代表団が来るのですが、なぜか日本の代表団はいつも一定の年齢層かつバックグラウンドを持つ男性ばかりで、国際機関は極めて多様性の高い所なので違和感を抱かざるを得ませんでした。国際社会の現場で自分と同じ属性を持つ多くの日本人が代表されていないな、と思ったことが政治を目指そうと思った原点です。

国際会議などに参加するのが全員同じような男性では、日本では男性しか前に立てないのでは? 代表は男性だけだと思っているのでは?、と実際とは異なる歪んだイメージを国際社会で抱かれてしまいます。これはもったいないです。多様な政治参加を通じて、日本本来の姿を世界に見せるような政治を作っていきたいと思いました。

—もう1つの理由はどういったものでしょうか?

私が国連にいた数年間は、人権・民主主義・法の支配といったものの縮小が続き、国連時代の最後はロシアによるウクライナ侵攻に対応しました。国連の仕事を通じて、安全保障の問題に大きな危機感を抱いたのが政治家を目指したもう1つの理由です。国際社会の中でリーダーシップを取ることができる日本を作っていきたい、また外交そして安全保障でしっかりと自国を守れるようにしたい、と強く思いました。

男性中心の政界における女性議員の活躍について

—女性の社会進出という観点では、日本は世界的に見て国会議員の女性比率の低さが指摘されています。英利議員が女性議員として活動する中で、目に見えない壁や葛藤を感じることはありますか?

日本に限らずどこの国でも、ジェンダーにおいては基本的に民間が先に進んで政治はその後、という流れが多く、女性の政治進出も各国で課題となっています。そして私自身が実際に政治の世界に飛び込んで感じたのは、思っていたよりも居心地が良い、ということです。最初に自民党から参議院選挙に出た際に、ここまで女性候補を自民党は応援するんだ、と失礼ながらよい意味で驚きました。

英利アルフィヤ議員インタビュー

ただし、政治は長く男性が大多数でやってきた世界のため、特に自民党の伝統的な選挙ノウハウは、男性が有利な活動内容となっています。例えば、朝早く起きて駅に立ち、夜も駅に立って靴の底が磨り減るほど走り回るのが選挙活動の基本で、体力勝負の世界です。私は最初の衆議院補選の時に疲労骨折してしまいました。女性の身体であることと向き合い、女性の強みを活かす選挙活動を行う必要性を感じます。また子育てや介護がある場合、24時間365日政治活動をする訳にはいきません。様々な人が政治参加するためにも、ワークライフバランスを真剣に捉えて、仕事の時間と個人の時間を切り分けられる活動を目指すべきです。

—国会議員のハードワークを解決するアイディアなどはありますか?

本当に難しいところですね。ただし国連職員として忙しく過ごした経験からは、生産性やメリハリの問題もあるのではないでしょうか。例えば選挙の時はハードワークはやむを得ないとしても、平時は工夫の余地が残されています。例えば自民党では、朝8時から部会、9時からは委員会、その後は国会の本会議、というスケジュールで、食事を取る時間も限られるように1日が進んで行きます。全員が一律で動くのではなく、コアタイムを決めるなど工夫の余地はあります。子育てが終わった世代の男性のみが対応できる現在の政治の状態は、民主主義にとってよいとは思えません。若い男性議員も、これは変えないといけない、と普通に感じておられるので、世代的な問題の面も大きいと思います。

国連職員の経験が本当に活きている、外務政務官としての活動について

—英利議員は昨年11月に外務政務官に就任されました。これまでのご経験が活かされていると感じる点はありますか?

外務政務官になって、本当にこれまでの経験が役立っています。外務省の仲間や海外のカウンターパートの中には前職で接点のあった方が多く、前職の経験やネットワークが活きています。国連にいた約6年間で得た経験やスキルも政務官として活かせるのは本当にありがたいです。国連でのキャリアにいったん区切りを付けて政治の世界に飛び込みましたが、外務政務官となり過去に積み上げたものが役立っています。

—既にカンボジア、ペルー、エチオピアなどを訪問されていますね。

私の外務政務官としての担当地域は北米、南米・カリブ、アフリカです。またテーマとして軍縮と経済も担当しています。まず全ての担当地域とテーマについて、これまでの4ヵ月で一度は公務としての出張を行いました。

—アフリカについては、今年8月に横浜でアフリカ開発会議(TICAD9)が開催されます。

2月にエチオピアで開催されたアフリカ連合の総会に合わせて、エチオピアを訪問しました。総会の参加各国の外務大臣などとの会談で、TICAD9に首脳レベルやそれに準じる方の参加をお願いしました。

また現在、法の支配・自由・民主主義という我が国が大切にする価値観を共有する国々との連携が迫られる状況下、日本もリーダーシップを取ってその価値観を守って行くと各国に伝えるとともに、同じ価値観を持つ国々に、一緒に頑張って欲しい、とお伝えして意思疎通を図りました。

—アフリカの若者の産業人材育成施策である“ABEイニシアティブ”の修了生との意見交換も行われたそうですね。

“ABEイニシアティブ”の修了生の方々との会合は、本当に私にとって勉強となるものでした。エチオピアには長い歴史があり、エチオピアの方々は、シャイで礼儀正しく発言が柔らかく、また立ち振る舞いなども日本人に似ている部分があります。ABEイニシアティブの修了生の方々は日本語もお上手であり、日本人っぽいな、と感じる部分も多かったです。こういった方々との交流が日本のソフトパワーになること、また日本の理解者が様々な場所で活躍することが、本当にこれまでの日本の成果であり大切にする必要があると感じました。アフリカは2050年には世界人口の4分の1を占めると予想される若者の多い地域で、若くてエネルギーと可能性を秘めた地域です。アフリカの若者達に日本に来ていただき、日本のことを理解してもらうことは本当に大切なので、これからも日本とアフリカの関係強化の活動を続けたいですね。

里帰りした国連で政治家としての念願の1つを果たす

—国連の会議にも参加されたそうですね。

国連の女性の地位向上委員会(CSW)に日本の代表団団長として出席し、かつての職場に里帰りしました。冒頭に申しましたが、私が政治家を志した大きな理由の1つは、国際会議の日本の代表団にはなぜ多様な日本人の姿が代表されていないんだろう、という疑問です。

もっと日本の今の顔が見える政治や外交をしたいという想いから3年。たった3年という短期間で、海外にルーツを持つ36歳の女性かつ都市部選出の議員である私が団長を務めることができ、微力ながら今の日本のイメージを代表する一つの形をつくることができたと思います。これはひとえに国民の皆様、とくに千葉の有権者の皆様のおかげだと思っています。政治家としてやりたいことの1つを実現することができました。

ポピュリズム、ナショナリズム、排他主義などの台頭を背景に世界中で女性の権利や民主主義が守られるスペースの縮小が危ぶまれています。しかしその中でも、日本はしっかりと前に進んでいる、と世界に表明できたことは、非常に大きな成果だったと思います。

日本らしい平和な静かなリーダーシップで普遍的価値観を守る外交が求められている

—今後の活動の方向性などについて教えてください。

国内については、私の選挙区の千葉5区(市川市・浦安市)は都市部の選挙区で、若者、現役世代も多く多様性があり、日本の未来の姿が見える選挙区です。市川・浦安、そして国内でも喫緊の課題である物価高、子育てを含む社会保障、防災・減災に重点的に取り組みたいと考えています。また、全ての取り組みを通じ、全ての日本人が自分らしく活き活きとできる日本を作っていきたいと考えています。

—外交分野はいかがでしょうか?

外務政務官として外交に携わるようになり、本当に日本が国際的なリーダーシップを取れる時代、また取らなければいけない時代になったと感じています。自由・民主主義や法の支配といった普遍的価値観が脅かされている今、アジアの中で最も経済力の高い民主主義であり、G7で唯一のアジアの国である日本の果たすべき役割は本当に大きいです。私は“静かなリーダーシップ”と呼んでいますが、日本らしい平和な“静かなリーダーシップ”で、淡々と普遍的価値をパートナー国と共に守る、一貫性のある外交が今必要とされています。

—最後に読者に対するメッセージをお願いします。

日本にいるとどうしても、周りに合わせる、前例を踏襲する、目立つことは良くないという考えが、特に若者には染み付いてしまうのではないかと思います。周りに気を遣うことは日本社会の良い所でもあるのですが、若者の方には、ぜひ一人一人の今持っている問題意識や価値観を疑わず思う所に突き進んでいただきたいと思います。自分らしく生きやすい社会を築くためにも、一人一人の力の大きさに自信を持って、どの場においても自分の持ち場で頑張っていただきたいですね。

この記事の監修者
秋圭史(株式会社PoliPoli 渉外部門)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。その傍ら、株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当している。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)

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