
塩村あやか しおむら あやか 議員
1978年広島県で被爆2世として生まれる。
放送作家として日本テレビ「シューイチ」「24時間テレビ」などを担当。
2013年東京都議会議員選挙に初当選。
2019年参議院議員選挙当選(2期)
2025年7月20日に投開票が行われた第27回参議院選挙では、自民・公明の連立与党が衆議院に続いて過半数割れに陥り、代わって野党の新勢力が台頭する結果となりました。今回のインタビューでは立憲民主党の塩村あやか議員に、参院選の振り返りや今後のビジョンをお聞きしました。
(取材日:2025年8月4日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
参院選を振り返って
ー当選おめでとうございます。今回の参院選は、いかがでしたか。
猛暑の中で長い参院選を戦い抜くのは大変でした。今回は外に出て一票でも多く獲得して回らないと落選するのが目に見えていたので、熱中症の危険を冒しながら必死で街頭に立ちました。この時期の選挙は、特に女性にとっては体の負担が大きいですね。
今回の選挙で特に感じたのですが、選挙対策本部と候補者をつなぐリエゾン役を置いて、その人に一定の権限を持たせて伴走する仕組みが必要ではないでしょうか。特に、女性の候補者には女性のリエゾン役を置き、体調面も含めてサポートする必要があると思います。
ー今回は新しい勢力の台頭も注目を集めましたが、どのような戦い方を意識されたのでしょうか。
私たちは「政権を取る」を目標に戦っているので、あまり突飛なことは言わず、実現可能な政策を掲げています。ただ、東京のように無党派層が多く、新人候補が多く当選する選挙区にはあまり向いていないかもしれません。だから今回は1人区に力を入れ、実際に1人区は勝ち越すことができました。でも、福岡や茨城のように本来勝てていた複数区を落としているので、都市部や複数区での戦い方については検証が必要です。
ーメッセージの発信の仕方に何か課題があったのでしょうか。
まず私の基本姿勢として、参議院は「良識の府」なので、政党ごとの対立を深める必要はないと思っています。衆議院で生まれた対立を参議院で修復する、という側面もあります。党は違っても、力を合わせられるところは合わせるのが「良識の府」たる所以だと思います。だから、無理に違いを出す必要はないと考えています。
ただ、選挙を戦う上で何らかの違いを示さなければならない、となったときに、私たちは「誰一人取り残さない政治をやってきた」という点にフォーカスしすぎたのかもしれません。立憲民主党は自民党に負けないくらい分厚い政策集を持っていて、あらゆる立場の人のための政策に取り組んでいます。でもそれがうまく伝わらず、こぼれ落ちそうな人だけを見て政治をしているような見え方になっていたのではないでしょうか。
大多数の人が物価高に苦しむ中、「マジョリティを見ずに、マイノリティのためだけの政治をするのが立憲民主党なのか」と思われた可能性は否定できません。確かにマイノリティの支援は自分たちの強みですが、それ以上に「みんなのための政治をしています」ということを発信できていれば、結果は変わっていたかもしれません。
「税金を払っているからこそ安心して暮らせる」と感じる国に
ー参院選では物価高対策や減税が主な争点になりましたが、党としては財源論とセットで発信されていた印象があります。この争点について、どのように見ていますか。
私は減税の議論に持って行ったこと自体が失敗だと思っています。高齢化が進むなか、消費税を減税すれば最終的に福祉財源を減らすことになります。その影響が将来的に現役世代に降りかかることへの不安こそが景気悪化を招く要因ではないでしょうか。本当に景気を良くしていくのであれば、賃金がきちんと物価より上がる国を作ることで、税収もしっかりと確保すべきです。
税金を悪者にするのではなく、「税金を払っているからこそ安心して暮らせる」という国にしていかないと、国家を維持できないと思います。高度成長の時代はもう終わり、人口減少の中で国民を福祉で支えていかなければならない時代です。支えきれずにこぼれ落ちてしまう人が多数出てくると社会が不安定になるので、税金を正しく活用しながら誰もこぼれ落ちない国を保つ必要があります。
これまで、短期的に状況が改善する政策が称賛されることもありました。労働者派遣法のように大企業の利益を確保する法律がプラスに捉えられた時代もありますが、結局失敗でしたよね。あのような目先の利益だけを追う政策から脱却すべきフェーズに私たちは立っているのです。
3年の任期でも、できることはたくさんある
ー塩村議員は2019年に参議院議員に初当選されましたが、この6年間で主に力を入れてきたことは何ですか。
1期目は「被害を生まないための政治」を心がけてきたつもりです。もっと詳しく言うと、「目の前に落とし穴があるんだったら、その穴を埋めて、皆がその上を走っても落ちないようにする政治」という感じです。悪質ホストの対策や、アダルトビデオ出演の被害者救済など、一定の成果を残せたと思います。
ー今回、塩村議員は非改選議員の欠員補充の枠で当選されたため任期が3年間ですが、どのようなことに取り組みたいですか。
すぐに取り組めるものでいうと、奨学金返済の税額控除があります。最近は企業の代理返済も広がってきましたが、中小企業に就職された方の多くはその恩恵を受けられません。教育無償化の議論も進んでいますが、それに間に合わなかった30代の人がたくさんいると思いますので、返済分が確定申告できちんと控除される形にしたいと考えています。
また、今回の選挙でも重点的に訴えたことですが、介護士の処遇改善にも力を入れたいと思っています。現在、介護事業者の倒産が相次いでおり、物価高に耐えられるような報酬を維持する必要があります。その解決策として提唱したいのが「公務員介護士」の復活です。地方には訪問介護事業者がゼロの行政区もあり、都会で働いている現役世代が親の介護のために離職して地方に戻る、というケースもあります。公務員という安定した立場の介護士を地方で復活させれば、介護離職の必要もなくなりますし、若い人が地元に残って働くための選択肢にもなるのです。
ー1期目では「痛くない乳がん検診」の導入にも取り組んでいましたね。
2021年に参議院本会議で無痛分娩や乳がん検診など、女性視点からの少子化対策について質問させていただき、企業や地域によっては「痛くない乳がん検診」の導入への足がかりを作ることができました。乳がんでの死亡率が上がっているにも関わらず、従来のマンモグラフィー検査は「痛いから受けない」という人が多いのです。さらに、この検査では乳腺も病変部分も白く映るので見落とされるケースも少なくありません。だからMRIを使った無痛の検査をもっと広げていく必要があります。
ー長期的な視点で力を入れていきたいことはありますか。
社会保障と福祉にはもちろん力を入れていきますが、あとは地方創生も大切だと考えています。私は広島から東京に出てきた人間ですが、「地方を忘れてはいけない」と言い続けてきました。今も多くの人が地方から東京に出てきますが、その中にも「地元に残れるなら残りたい」という人が一定数いると思います。農業をはじめ、地方の魅力を高める産業はたくさんあるので、そこにもっと予算を投じるべきではないでしょうか。
「地方創生」といいながら謎の用途に使われる予算もありますよね。農業国のフランスでは政府の予算がしっかりと農業に回って、100%に近い自給率を実現しているわけです。島国で、有事の際に孤立する可能性のある日本こそ、そうするべきです。個別所得補償を充実させて、新規就農への導入予算を10倍に増やすような目標を掲げても良かったのかな、と思います。
声を聞くべき相手も重要で、地方創生というと地方に残った人の声ばかり聞きがちですが、私は地方から都市に出てきた人の声を聞くべきだと訴えています。なぜ地方に残れなかったのか、東京に出て来ざるを得なかったのか。その声を聞いて、根本原因を探る必要があるのではないでしょうか。
ー最後に、2期目の抱負や読者へのメッセージをお願いします。
私は議席数6の選挙区で7位になり、欠員補充での当選だったので、選挙結果としては負けです。しかし、できることはたくさんあるので、マイナスには捉えていません。「次こそ東京選挙区で勝ち抜いて」と言ってくれる有権者の方もいますし、3年の任期とわかっていても応援してくださる方はいます。その方たちの期待に応えるためにも、ネット受けしない地道なことでも堅実に向き合っていきます。それが私のモットーです。