予算委員会とは、日本の衆議院・参議院それぞれに17個ずつ設置された常任委員会の1つで、予算について審議する委員会となっています。
テレビでも生中継され、国会の委員会の中でも国民の注目度の高い予算委員会ですが、具体的にどんな役割を担っているのか、誰が所属しているのかということについてテレビだけで把握することは難しいと思われます。
そこで今回は
- 予算委員会は何をしているのか
- 予算委員会を構成するメンバー
- 予算委員会の抱える問題点
などについてご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、予算委員会とは
予算委員会とは、その名の通り、予算について審議する委員会です。
行政を担う内閣の役割の一つとして、「予算を作成して国会に提出すること」が日本国憲法73条で定められています。
その予算案を審査したり、予算の実施状況に関しての議論を行ったりする場が予算委員会です。
予算委員会では、さまざまな質問がなされていますが、実は衆議院規則92条・参議院規則74条において、予算委員会で審議される事項は「予算」としか書かれていません。
ほかの常任委員会は、「厚生労働省の所管に属する事項」が厚生労働委員会、「農林水産省の所管に属する事項」が農林水産委員会、と役割が決まっているのに対して、予算委員会だけ範囲がかなり広くなっているのです。
ですから、内閣が提出した予算案についての審議を行うことが基本とはいえ、予算の「作成」と「執行」という内閣の政策すべてに対しての質疑が行われているのです。
閣僚の資質を問う内容の質問が出るのも、こういった理由からです。
1年間の予算を決める場であるため、予算委員会の役割というのは、まず内閣が提出した予算案が適正なものなのかを話し合う場になっています。
1年間の予算についての議論となることから、内閣の政策方針を主としたあらゆる事項についての審議がなされます。
2020年世間を騒がせている「桜を見る会」や「IR(統合型リゾート)問題」も国家予算が使われている事業です。
これらの予算が適正なのかどうかを判断するのが予算委員会の役割であり、予算が何に使われていたのかの議論も行うことができます。
そのため2019年まで行われていた「桜を見る会」について長時間議論してしまい、肝心な2020年度の予算についての審議が十分に行われない、という問題も現状抱えています。
2、予算委員会のメンバー
予算委員会は、衆議院が50人、参議院が45人で構成されることが、衆議院規則92条、参議院規則74条で決められています。どちらも委員長1名、理事9名が選出または指名されます。
予算委員会で一番重要なポストは、予算委員長です。
国政全般を取り扱う予算委員会をスムーズに取り仕切る進行役であることから、与野党問わず委員から信頼されている人物が選ばれます。
衆議院 参議院
2020年(令和2年)10月30日 2019年(令和元年)10月19日
役職 | 氏名 | 会派 | 役職 | 氏名 | 会派 | |
委員長 | 金田勝年 | 自由民主党 | 委員長 | 山本順三 | 自由民主党 | |
理事
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後藤茂之 |
自由民主党
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理事
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青木一彦 |
自由民主党
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齋藤健 | 滝波宏文 | |||||
橋本岳 | 馬場成志 | |||||
藤原崇 | 藤川政人 | |||||
細田健一 | 白眞勲 |
立憲民主党
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山際大志郎 | 森ゆうこ | |||||
奥野総一郎 |
立憲民主党
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石川博崇 | 公明党 | |||
辻元清美 | 浅田均 | 日本維新の会 | ||||
浜地雅一 | 公明党 | 山添拓 | 日本共産党 | |||
委員
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秋葉賢也 |
自由民主党
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委員
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青山繁晴 |
自由民主党
|
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秋本真利 | 磯崎仁彦 | |||||
伊藤達也 | 上野通子 | |||||
石破茂 | 片山さつき | |||||
今村雅弘 | 北村経夫 | |||||
岩屋毅 | 佐藤正久 | |||||
うえの賢一郎 | 櫻井充 | |||||
江藤拓 | 進藤金日子 | |||||
衛藤征士郎 | 高階恵美子 | |||||
小倉將信 | 高野光二郎 | |||||
神山佐市 | 藤木眞也 | |||||
河村建夫 | 古川俊治 | |||||
菅原一秀 | 三木亨 | |||||
田中和徳 | 三宅伸吾 | |||||
竹本直一 | 宮島喜文 | |||||
根本匠 | 山田修路 | |||||
野田毅 | 山田宏 | |||||
原田義昭 | 石川大我 |
立憲民主党
|
||||
古屋圭司 | 打越さく良 | |||||
村井英樹 | 熊谷裕人 | |||||
村上誠一郎 | 小西洋之 | |||||
山本幸三 | 田島麻衣子 | |||||
山本有二 | 福島みずほ | |||||
渡辺博道 | 宮沢由佳 | |||||
今井雅人 |
立憲民主党
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河野義博 |
公明党
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|||
大西健介 | 塩田博昭 | |||||
逢坂誠二 | 杉久武 | |||||
岡田克也 | 若松謙維 | |||||
岡本充功 | 石井苗子 |
日本維新の会
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川内博史 | 片山大介 | |||||
玄葉光一郎 | 礒崎哲史 |
国民民主党
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||||
後藤祐一 | 浜口誠 | |||||
本多平直 | 矢田わか子 | |||||
森山浩行 | 田村智子 |
日本共産党
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太田昌孝 |
公明党
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大門実紀史 | ||||
濱村進 | ||||||
藤野保史 |
日本共産党
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宮本徹 | ||||||
藤田文武 | 日本維新の会 | |||||
西岡秀子 | 国民民主党 |
3、予算案審議にみる予算委員会の役割
国家予算を策定する流れの中で、予算委員会が
- どの様な立ち位置であるのか
- その役割について
詳しく見ていきましょう。
(1)原案作成から本会議へ
まず予算案は財務省が作成し、その後衆議院に提出されます。
これは憲法第60条1項で予算先議権が定められており、予算の作成の場面においては衆議院から先に審議を開始しないといけないとなっているためです。
予算案は、通常国会の召集日に内閣から衆議院に提出され、予算委員会に委ねられます。
そして本会議において、総理大臣が施政方針演説を行い、財務大臣が財政演説の中で予算の説明を行います。
さらに委員会においては、趣旨説明は財務大臣が行い、補足説明は財務副大臣が行います。
通常国会において、まず衆議院予算委員会に送られた内閣予算案について審議が行われます。
予算案の趣旨説明があり、そのあと質疑が行われます。
日程については予算委員会の理事会で決定されますが、通常国会の前半に行われるのが通常で、その時期は1月から3月となっています。
各会派の質問が一巡するように時間の配分も決められています。
この時期以外にも「予算の執行状況に関する調査」という名目で予算委員会が開催されることもあります。
予算委員会は、国民が関心を持つテーマを扱うことが多いことから、本会議や党首討論と同様に注目される委員会です。
そのためテレビ中継も行われ、与野党ともに党の代表など一般的に認知度の高い政治家が質疑を繰り返しています。
衆議院の予算委員会において、予算審議が終盤になってくると各省庁に分かれて分科会で審議が行われます。
(2)分科会
分科会とは各省庁に分かれて予算についてより細かく審議する場のことです。
以下の様になっています。
- 第一分科会:皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省
- 第二分科会:総務
- 第三分科会:財務省
- 第四分科会:文部科学省
- 第五分科会:厚生労働省
- 第六分科会:農林水産省及び環境省
- 第七分科会:経済産業省
- 第八分科会:国土交通省
分科会がおよそ1日半行われた後、全閣僚出席のもと締めくくり質疑が行われ、各党各会派の代表が意見を述べる討論を行い、採決が行われます。
3月2日まで予算が衆議院を通過した場合、参議院で議決が行われなくても年度内に自然成立することが憲法に定められているため、審議日程の決定についても与野党は攻防を繰り広げます。
(3)本会議|予算案策定
その後、本会議でも採決が行われ、賛成多数であれば予算が衆議院を通過、参議院でもほぼ同様の流れで進みます。
ただ、参議院では分科会は行わず、各委員会に委嘱するという形で、各省庁別の予算を審議します。
もし参議院と衆議院の議決が異なった場合、衆議院は両院協議会を求めなければいけません。
もしその協議も成立しない場合は、衆議院の議決が国会の総意とされます。
さらに4月4日までに予算が成立しない場合は、省庁の歳出に影響が出てきてしまうため、審議が終わるまでは暫定予算が組まれることになっています。
ただ、この流れの中で予算案が変更されることは実はありません。
日本の国会は「委員会中心主義」と呼ばれており、委員会で採択された時に予算についての審議は終結している場合がほとんどです。
国家予算ができるまでの工程は以下の関連記事でより詳しく解説していますので是非ご覧下さい。
国家予算とは?成立までの8つのプロセスを簡単解説!
まとめ
予算委員会という名前はよく耳にしますが、実にさまざまな問題を扱っているため、「予算委員会」とは何なのかという疑問を持ってしまう方も少なくありません。
ニュースで取り扱われているのは約2週間程度行われている予算委員会の中のほんの数分です。
ニュースでは国民の関心が高い部分を取り上げるために一見無駄なことをしている様に見えてしまうかもしれませんが、それ以外のことも取り扱われています。
国民が予算委員会をはじめとした国会の動き、また政治家の働きをしっかり見届けていないと、国民のための政治にはなっていきません。
国民として、国会で何を話し合っているのか、行われている政策は必要なものなのか、しっかり見極めて、一人一人が声をあげていくことが重要です。