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社会実験とは?実験の進め方や検証事例について簡単解説

投稿日2022.9.27
最終更新日2023.02.16

社会実験とは、新しい制度等を導入する前に、期間や地域を限定し、制度の有効性を試す取り組みです。
本記事では

  • 社会実験とは
  • 国土交通省道路局による社会実験の進め方
  • 国土交通省道路局による社会実験の事例
  • 地方自治体による社会実験の事例

について解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、社会実験とは

社会実験とは、新しい制度や技術を社会に導入する前に、期間や地域を限定し、それを試す取り組みです。

社会実験によって、実際の導入前に、制度や技術の有効性や問題点を明らかにできます。
日本で初めて社会実験が試行されたのは1999年です。

国土交通省道路局が、道路に関する社会実験の公募を始めたことがきっかけでした。

社会実験画像引用:社会実験とは 国土交通省

2、国土交通省道路局による社会実験の進め方

国土交通省道路局では、

  • 企画立案
  • 計画策定
  • 実験実施
  • 評価

の4つの段階に分けて社会実験を進めています。

社会実験


画像引用:社会実験とは 国土交通省

(1)段階1:企画立案

企画立案では、社会実験のテーマを設定します。

基本的には、対象地域の将来像を考えます。
そして、その将来像を実現するために

  • 導入すべき施策
  • 住民と合意すべき事項

などを整理し、実験テーマを設定します。

(2)段階2:計画策定

計画策定では、実験を行うための体制を組織します。
つまり、計画を実施するためのメンバーを決める段階です。

組織には

  • 利用者
  • 地域住民
  • 公的機関

などが参加します。
参加者の決定後、具体的な実験計画の策定に進みます。

(3)段階3:実験実施

実験実施の段階では、

  • 道路管理者
  • 地域住民

などの関係者が協働し、実験をスタートします。

リアルタイムで得た意見を実験に反映し、実験内容の見直しを繰り返します。

(4)段階4:評価

評価では、実験で得られた結果を分析します。
分析された評価は

  • 本格実施
  • 見直し(継続)
  • 中止

の3つに分けられ、市民に公表されます。

参考:社会実験とは 国土交通省

3、国土交通省道路局による社会実験の事例

国土交通省道路局では1999年から社会実験を積極的に試行しています。

  • オープンカフェ等地域主体の道活用の社会実験
  • 通り名による道案内の社会実験

の2つの事例についてご紹介します。

(1)オープンカフェ等地域主体の道活用の社会実験

「オープンカフェ等地域主体の道活用の社会実験」とは、道路にオープンカフェを設置することで、人の流れや地域のにぎわいがどの程度変化するかを調べた実験です。

オープンカフェとは、店舗前のテラス(道路)に客席を配置した飲食店です。

社会実験

画像引用元:事例番号 116 水辺からのまちづくり(広島県広島市)国土交通省

実験により、道路にオープンカフェを設置することで、

  • 地域のにぎわいを取り戻せる
  • 地域住民の交流の場を創出できる
  • 観光客の集客ができる
  • 河川や公園の利用者を増加させる
  • 地域の環境整備につながる

といったメリットが期待できることが分かりました。

オープンカフェ実施エリアでは、実施前と比べて、通行者数が約6割増加したというデータを発表しています。

社会実験画像引用元:国土交通省における取組 国土交通省

また、通行者数の増加だけではなく、回遊距離(人が動く距離、観光のために歩く距離)の増加も期待されています。

社会実験


画像引用元:国土交通省における取組 国土交通省

参考:河川空間のオープン化活用事例集 国土交通省

(2)通り名による道案内の社会実験

「通り名による道案内の社会実験」とは、標識板に通り名(道の名前)と距離を表す番号を記載することで、目的地への案内に効果があるのかを検証した実験です。

社会実験


画像引用元:通り名で道案内 国土交通省

上の画像は六本木通りの標識板です。
「#6」は通りの起点から60m離れていることを表しています。

社会実験

画像引用元:「通り名で道案内」の3つの基本要素 国土交通省

日本では、〇丁目〇番地のように、区画されたブロックに番号を振る「街区方式」が一般的です。

欧米では、道路に番号を振る「道路方式」が採用されています。
通り名による道案内によって、欧米のように道路に番号を振ることの効果を検証しました。

実験地域の1つである高梁市では、来訪者の72%が「プレートによる道案内が役に立った」と回答。

社会実験

グラフ引用元:2.取組への評価 「通り名で道案内」社会実験を踏まえて 国土交通省

また、長崎市でも

  • 住民の約54%が「プレートによる道案内を継続してほしい」
  • 来訪者の約74%が「ほかの地域でも展開してほしい」

と答えています。

社会実験

グラフ引用元:2.取組への評価 「通り名で道案内」社会実験を踏まえて 国土交通省

社会実験
グラフ引用元:2.取組への評価 「通り名で道案内」社会実験を踏まえて 国土交通省

4、地方自治体による社会実験の事例

地方自治体ではどのような社会実験を行っているのでしょうか?

  • 熊本県熊本市
  • 北海道歌登町

の事例についてご紹介します。

(1)熊本市の節水社会実験

熊本県熊本市では、2005年から「節水社会実験」を実施しています(2008年から節水強化月間に名称を変更)。

節水社会実験とは、市民に対し、節水を呼びかける運動です。
1人あたりの1日の生活用水量を、210リットルに収めることを目標に掲げています。

社会実験

画像引用元:節水市民運動とは? 熊本市

熊本市では、市民に積極的に節水に参加してもらうために、「わくわく節水倶楽部」を発足しました。

わくわく節水倶楽部に参加することで、

  • 水に関する情報を掲載した会報誌の購読
  • 市のホームページに名前を記載

ができます。

そのほかにも、熊本市では

  • 夏季の期間(7~8月)は、1人1日あたりの生活用水使用量を毎日公表する
  • 節水器具を取り扱う店舗を熊本市で登録する

などの取り組みを行っています。

参考:わくわく節水倶楽部 熊本市
参考:節水市民運動とは? 熊本市

(2)北海道歌登町下水道ディスポーザー社会実験

北海道歌登町では、町営住宅300世帯にディスポーザーを試験的に導入する、社会実験をしています。

ディスポーザーとは、シンク下に取り付ける生ゴミ粉砕機です。

社会実験


画像引用元:ディスポーザーとは?下水道接続、ディスポーザー設置工事及びディスポーザーの使用について 魚津市

ディスポーザーの社会実験が実施された理由は、歌登町の冬の気候が厳しいためです。
冬の歌登町のゴミステーションには大量の雪が積もります。

これにより、

  • 住民によるゴミ出し
  • 行政によるゴミ回収

が困難な状態になっていました。

この問題を解決するために、ディスポーザーによって、生ゴミを家庭で処理できるようにしたのです。
家庭内で多くのゴミを処理することで、ゴミ出しとゴミ回収にかかる負担の軽減を期待できます。

参考:歌登町下水道ディスポーザー社会実験 国土交通省

社会実験に関するQ&A

1.社会実験とはどんな取り組み?

社会実験とは、新しい制度や技術を社会に導入する前に、期間や地域を限定し、それを試す取り組みです。

2.社会実験の進め方は?

国土交通省道路局では、

  • 企画立案
  • 計画策定
  • 実験実施
  • 評価

の4つの段階に分けて社会実験を進めています。

3.社会実験の事例は?

例をあげると、

  • オープンカフェ等地域主体の道活用の社会実験
  • 通り名による道案内の社会実験

などが実際に実施されました。

まとめ

今回は社会実験について解説しました。

社会実験は制度や技術を導入するために必要な取り組みです。
新しい制度や設備の導入には、多額の費用を要することもあります。

社会実験で問題点や課題を明らかにすることで、より効果的な導入を期待できます。

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この記事の監修者
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