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厚生労働省とは?具体的な業務を簡単解説

投稿日2020.5.20
最終更新日2020.07.13

最近新型コロナの影響で、厚生労働省という言葉を耳にする機会も多いですよね。
厚生労働省とは、国民の生活の向上を目指し、医療や食品の安全性から雇用や社会保障、年金制度まで幅広い分野を扱う機関です。

けれど、なんとなくのイメージだけで具体的に自分にどう影響があるのかわからないという人も多いでしょう。

そこで今回は、

  • 厚生労働省の概要
  • 厚生労働省の具体的業務
  • 厚生労働省の組織図
  • 研究課題や不正問題

などについて、わかりやすくご説明します。
ぜひ、参考にしてみてください。

1、厚生労働省とは


厚生労働省とは、中央官庁の1つです。
医政局や健康局、生活衛生局や労働基準局などから構成されており、社会保障や人材の育成、商品の安全チェックなど国民生活の向上を目的としています。

かんたんに言えば、私たち国民が安心して暮らせるためのインフラを整える「縁の下の力持ち的存在」です。

2010年からはTwitterを利用した新しい制度やイベントなどの情報発信をスタートしました。
最近では、新型コロナに関する分析結果やクラスター対策に役立つ情報を厚生労働省公式アカウントから発信しています。
「見たことがある!」「Twitterをフォローしている」という人も多いかもしれませんね。

このように国民の生活への影響力の大きさから、「社会と安全」という国の礎を築く行政機関とも評されています。

(1)どんな組織なのか?

厚生労働省の歴史は、1998年成立の中央官庁改革基本法を受け、2001年の中央省庁の再編により厚生省と労働者を統合したことから始まります。

旧厚生省は、1938年に旧内務省の衛生局や社会局を統合した役所で、旧労働省は戦後1947年に厚生省から分離された役所でした。

中央官庁の再編の狙いは、従来の行政のタテ割りシステムを打ち破ることと組織の簡易化です。

当時の日本では官僚の立場が今よりも強く、事実上官僚のトップである事務次官が握っていると言われるほどでした。
そこで首相のリーダーシップを強くするとともに、政治主導の実現を測ったのです。

分離と廃止と統合を繰り返して誕生した行政機関こそ、現在の厚労省です。
また、急速に高齢化を迎えている日本の医療や介護制度は、アジアを始め、世界から注目を受けています。
この分野は厚生労働省の管轄の一部になっています。

(2)厚生労働省の現在のトップ

厚生労働省のトップは「厚生労働大臣」のことです。
2020年現在は、加藤勝信自民党衆議院議員が、働き方改革も兼ねて厚生労働大臣を務めています。

厚生労働省のトップは厚生労働大臣ですが、もう1つ中央官庁の事務方のトップとして「厚生労働事務次官」と言うポストがあります。

大臣については内閣総理大臣が選べますが、事務次官は出世レースを勝ち上がってきた人が選ばれます。

ここでいう出世コースとは入省後に主査から係長、課長補佐を経て室長や管理長になり、大臣官房課長(総務課長や会計会長、人事課長)へ。

そこから審議官、総括審議官、局長から事務次官に次ぐポストである厚生労働審議官、そして厚生労働事務次官というのが大まかな流れです。

人事異動のサイクルは必ずしも決まっているわけではありませんが、だいたい1つのポストを1~2年務めてから移動というイメージで良いでしょう。

2020年現在の厚生労働事務次官である鈴木俊彦は東大法学部出身です。
厚生労働省に入省後、年金局長や保険局長を経て、2018年に就任しました。

(3)具体的な業務

具体的な業務は、

  • 社会保障政策
  • 公衆衛生の向上
  • 社会福祉事業の発達、改善
  • 医療の普及や指導、監督
  • 疫病の予防や研究
  • 労働の権利保障や調整、監督
  • 水道
  • 麻薬や毒物の取り締まり
  • 子育て支援
  • 保険関連

など。

加えて、戦没者の遺族に対する援護なども厚生労働省の業務です。

厚生労働省が担当するテーマは幅広く、各省庁の中でも業務量がとくに多いと言われています。
これは管轄する範囲の広さに加えて、国民の関心も強く、その割に前進させるためには様々な対立や衝突が免れないからです。

例えば、年金問題です。
日本の人口構成や財政を考えれば、この先年金を減らすという方法を厚生労働省が取る可能性はゼロではないでしょう。

ですが、減給案を出せば、世論による反発は必須です。
そのため、案を出すときは法案の準備という本来の業務だけでなく、世論の反発を防ぐ工夫まで考えなければなりません。
国民の生活に密着しているからこそ、反発を受けやすいのが厚生労働省なのです。

その分、厚生労働省は予算の規模も大きく、とくに社会保障関係は約33兆円にのぼるほど。
省庁における予算規模のトップは厚生労働省です。

2、厚生労働省の組織図

厚生労働省の組織は、以下のように分かれています。

厚生労働省組織図

出典:組織図

このなかから、とくに私たちの暮らしと関係が深い「医政局」「労働基準局」「保険局」「健康局」についてみていきましょう。

(1)医政局

近年の高齢化や医療の質の向上を求める国民の声に対応すべく、主に医療政策などを扱っているのが「医政局」です。
全身は厚生省健康政策局で、2001年に厚生省と労働省が統合された時に組織変更されました。

医政局が実際に担当する具体的業務は、

  • 保険医療に関する政策や立案
  • 医療の指導や監督
  • 医療機関の整備
  • 病院の安全管理
  • 医者や看護師、診療放射線技師やはり師などに関すること
  • 医薬品や医療機器などの研究や製造、改善
  • 医療機器などの配置
  • 国立ハンセン病療養所での医療提供や研修
  • 地域医療機能推進機構の組織運営
  • 国立高度専門医療研究センターの組織運営

などです。
新たな医療の在り方や医師・看護師の働き方など、医療関連の政策や改革などを担っています。

(2)労働基準局

東京都の厚生労働省内に1つだけある行政機関で、名前の通り、労働を担当する役所です。
労働基準局がおこなう業務は、大まかに分けて3つあります。

  • 労働局や労働基準監督署の指揮監督
  • 労働関連法令の施行や通達の発行
  • 労働に関する全体的施策

「労働基準局」は、各都道府県にある労働局や労働基準監督所の上司的な組織にあたります。
そのため、労働基準局の主な業務は、各都道府県の労働局や労働基準監督署がちゃんと法令に沿って活動しているかのチェックです。

個別の紛争などの対応は地方が独自にできますが、地方によって対応がバラバラだと不正や癒着が横行してしまうこともあります。

そのようなことがないよう、労働基準局が監視しているのです。
上記にある労働に関する全体的施策とは、

  • 契約
  • 賃金
  • 労働時間
  • 労働者の安全
  • 災害補償

などが当てはまります。

ただし、労働基準局では、一般人からの個別相談を基本的には受け付けていないので注意しましょう。
パワハラや残業代など労使間でトラブルが発生した場合は、各地の都道府県にある労働局や労働基準監督署に相談してくださいね。

(3)保険局

おもに健康保険や船員保険、国民健康保険など公的医療制度を扱うのが「保険局」です。
前身は厚生保険局で、2001年の統合により組織変更されました。

保険局のおもな業務は、

  • 健康保険
  • 船員保険
  • 国民健康保険
  • 後期高齢者医療制度
  • 医療保険制度の調整
  • 保険医療の普及

などです。
また、医療保険だけでなく診察報酬や薬の価格設定なども保険局がおこなっています。

(4)健康局

おもに健康づくりや疫病対策など国民の健康管理についてさまざまな取り組みをおこなうのが「健康局」です。
保健所を通じて情報収集をおこない、国民の健康づくり事業をおこなっています。

現在、新型コロナウイルスが世界的に爆発的に拡大したことで、その対応にとくに振り回されているので「健康局」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。

健康局の主な業務は、

  • 生活慣習病
  • 感染症の発生や蔓延の予防
  • ワクチンの生産や流通
  • 検疫関連
  • 臓器や造血幹細胞の移植関連
  • 難病の予防や治療

などです。
加えて、原子爆弾被爆者に対する援護もおこなっています。

ちなみに、感染者の対応や濃厚接触者の調査など新型コロナウイルスと奮闘している「保険所」は厚生労働省の健康局の管理機関です。

3、厚生労働省の課題

最後に、厚生労働省について学ぶうえで知っておくべきことを紹介します。

(1)研究課題

国民の生活に深く関わっている厚生労働省は、保険や医療、労働分野に対して科学的根拠から正しい政策を導くために日々研究活動をおこなっています。

現在、研究が進んでいるのは以下の6項目です。

  • 糖尿病予防
  • 自殺対策
  • がん
  • エイズ予防
  • 感覚器疾患
  • 腎臓患重病化予防

日本は世界的にみても自殺率が高い国とされています。
その高さは、1998年以降G7の中でもトップを走り続けているほどです。

2012年からは前年より減少傾向にありますが、それでも2019年は全国おおよそ2万人の自殺者が確認されています。

そこで厚生労働省は、自殺の原因の多くは未然に防げる社会的問題であるとして、保険や医療、教育現場や労働などとの連携を取っています。

たとえば、2017年に策定した自殺総合対策大網では、2026年までに30%以上減少させるとの目標を提示しました。

SNSサイトでの相談対応を強化し、従来のように電話ではなくLINEやチャットで悩みが相談できるようにしています。
ほかにも、地域レベルでさらなる自殺予防の推進など、積極的な連携をおこなっています。

また、HIVやエイズ感染症は、多剤を併用することでコントロール可能な慢性疾患にまで抑えられるようになりました。
ですが、まだ副作用や変異型まで対応可能とは言えないため、現在も研究が続けられています。

このように厚生労働省は制度や法案の提出だけでなく、解決法の追及という面からも私たちの日々の暮らしを支えているのです。

(2)厚生労働省の統計不正問題

そもそもの発端は、「毎月勤労統計」の調査ミスでした。
厚生労働省が実施している「毎月勤労統計」が、不適切な方法による誤ったデータだったことが2019年に発覚したのです。

毎月勤労統計とは、都道府県ごとの労働者の給与や労働時間、雇用の変化をチェックするもので、国の重要な調査のひとつです。

従業員5人以上の事務所から対象とし、とくに500人以上の常用従業員がいる事務所はひとつ残らず事務所調査がおこなわれています。

にもかかわらず、東京都だけは大規模事業所のうちおおよそ3分の1に対してしか調査をしていませんでした。
その結果、おおよそ900の対象事務所が除外された状態になります。
しかも、この一部だけの調査は今に始まったことではなく、2004年から続けられていたのです。

この影響で、同統計をベースに給付水準が決まる雇用保険や労災保険が10年以上にわたって本来よりも少なく支給されていたことも判明しました。

その対象は2,000万人以上、総額530億円にものぼると言われています。

つまり厚生労働省は、

  • 3分の1のみという不適切な調査
  • 必要な補正作業もなし
  • 一連の不正事実を隠蔽

という調査のもと政策を長くおこなっていたのです。

このことは、日本の先進国として信頼を揺るがすだけでなく、国民から強い不信を招かねないとして政府は追及を進めています。

まとめ

厚生労働省が扱うテーマは、社会保障や福祉事業の発達、疫病の予防や労働権利の保障です。
さらには、麻薬の取り締まりから子育て支援、戦没者の遺族への援護など、多岐にわたります。
その結果が、国民の生活を向上し、私たちの安心へとつながっています。

現在、厚生労働省は、新型コロナの対策で学童保育への対応や雇用への影響、国会での対応など緊急事態に伴うさまざまな対応が求められています。

よりよい世の中をつくるために奮闘を続ける厚生労働省についてよく知り、理解するために本記事が参考になれば幸いです。