「骨太の方針」は「経済財政運営と改革の基本方針」の通称で、政権の重要課題や翌年度の予算の方向性を示す政策の基本骨格です。
この方針は政府と民間有識者による「経済財政諮問会議」で決定されます。
本記事では、以下について解説を行います。
- 骨太の方針の概要
- 骨太の方針2023の概要
- 女性版骨太の方針2023の概要
1.骨太の方針とは
骨太の方針は、2001年の小泉純一郎政権の「聖域なき構造改革」のために設置された「経済財政諮問会議」の議論を、当時の宮澤喜一財務大臣が「骨太」と表現したことが始まりです。
正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」で、毎年6月頃に政府が閣議決定します。
予算や省庁の主要な取組の方向性が示されるため、政府の経済政策の基本的な姿勢を知る上で非常に重要な文書です。
そのため、骨太の方針を元に多くの政策が編成されます。
参考:内閣府 経済財政諮問会議
2.骨太の方針2023の概要
2023年6月16日に「骨太の方針2023」が、閣僚による会議(閣議)で正式に決定されました。
(1)マクロ経済運営の基本的な考え方
骨太の方針は5つのパートに分かれています。
まず最初に、マクロ経済運営の基本的な考え方について書かれています。
主要な取り組みとして、以下が挙げられています。
項目 | 内容 |
経済の成長戦略 | 経済の持続的な成長を目指し、企業の投資を拡大。構造改革を推進し、国際競争力の強化を図る。 |
財政の健全化 | 財政改革の進行を目指す。歳出の抑制とともに、社会保障や少子化対策のための財源確保を強化する。 |
地方創生 | 地方の経済活性化や独自性を重視した政策を推進。地方との連携を強化し、地域毎の課題解決を促進する。 |
このマクロ経済の運営の基本的な考え方をもとに、政府は各省庁や地方自治体と連携して具体的な政策の編成や予算の配分を行い、経済の安定と成長を目指しています。
(2)新しい資本主義の加速
資本主義とは、経済体制の一形態であり、個人的な所有者や企業が生産手段や資本を私有し、市場経済において自由な競争と利益追求を基盤とするシステムを指します。
「新しい資本主義」とは、岸田内閣の主要政策の一つで、伝統的な経済成長を追求するだけでなく、持続可能性や社会的価値の創出に重きを置く経済の形成を指します。
①労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化
新しい資本主義の実現に向けて、労働市場の改革や構造的賃上げの推進は、社会全体の持続可能な経済成長とともに、個人の生活の質の向上をもたらすことが期待されています。
項目 | 詳細 |
労働市場の改革 | 非正規雇用の安定化、多様な働き方の受け入れと推進を進める。 |
構造的賃上げの推進 | 企業の業績向上と従業員の生産性向上を連動させた賃上げを実現する。 |
人への投資 | 職業教育の充実や再教育の機会拡大など、人材育成に関する取り組みを強化する。 |
政府はこれらの取り組みを進めることで、企業の競争力向上とともに、労働者の生活安定を図る方針を明確にしています。
②少子化対策・こども政策の抜本的強化
日本の少子化問題は深刻化しており、少子化対策の強化は、社会全体の持続可能性や経済の健全な成長のためにも不可欠です。
項目 | 詳細 |
こども・子育て支援 | 地方自治体との連携を強化し、子育て世代のサポートを充実させる。 |
社会保障の再編成 | 少子化対策を中心とした社会保障制度の見直しを進める。 |
経済的支援 | 財政的な支援を拡大し、子育て家庭の経済的負担を軽減する。 |
③投資の拡大と経済社会改革の実行
骨太の方針2023では、日本経済成長のために、企業投資や個人投資の拡大、地方経済の活性化と、社会保証制度の改革を進める方針が強調されています。
項目 | 詳細 |
企業投資の促進 | 技術革新や研究開発への投資を拡大し、企業の競争力を強化する。 |
地方経済の活性化 | 各地の特色や資源を活かした地域創生に注力し、投資を推進する。 |
社会保障制度の改革 | 高齢化社会に対応するための社会保障制度を構築し、そのための財源確保や歳出の最適化を進める。 |
政府は、経済の拡大を図るための投資と、それを支える社会保障改革の両輪で、国民の豊かな生活の実現を目指しています。
④包括社会の実現
包括社会の実現とは、すべての市民が社会の一員として活躍し、その能力を最大限に発揮できる社会を目指すものです。
項目 | 詳細 |
性別平等の推進 | 女性の活躍を促進し、男女平等な社会を実現するための取り組みを強化する。 |
少子化対策 | 出産や子育てを支援し、子どもの数が減少する問題に対応する。 |
地方創生 | 地方の特色や資源を活かし、各地域での活動や事業を推進することで、地方の経済や文化を活性化させる。 |
⑤地域・中小企業の活性化
地域経済と中小企業は、日本経済の基盤となる部分です。骨太の方針2023では、これらの活性化を通じて、経済の底上げを図る方針が強化されています。
地域では、少子化対策や地方創生を進めるための戦略が重視され、各地の特色や資源を活かした経済活動の促進が求められています。
中小企業については、投資の拡大や経済環境の変化に対応した経営改革が期待され、政府はこれをサポートする方針を明確にしています。
さらに、経済の持続的な成長を実現するため、財政改革や社会保障制度の見直しも進められています。これらの取り組みを通じて、地域や中小企業の活力が増し、経済全体の成長が期待されています。
(3)我が国を取り巻く環境変化への対応
国際環境変化への対応
日本が国際社会の中でさまざまな変化や課題に直面する中で、特に、経済的な変動や新たなリスクへの備えが重要視されています。
ポイント | 詳細 |
国際的経済変動への対応 | グローバルな経済の変動や不確実性への適切な対策 |
新たなリスクへの備え | 国際的な政治・経済の動向に基づくリスクマネジメントの強化 |
外交戦略の見直し | 変化する国際情勢に合わせた柔軟な外交戦略の構築 |
企業グローバル展開支援 | 日本企業の海外展開を支援するための政策・戦略の強化 |
(4)中長期の経済財政運営
経済の持続的な成長と安定した財政運営は、国の将来にとって極めて重要です。そのため、骨太の方針2023では、中長期的な視点を持ちながら、持続可能な経済財政運営の方策を強化しています。
①中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営
骨太の方針2023において、中長期的な視点からの経済と財政の持続可能な運営が重点とされています。では、社会保障制度の持続可能性確保や財政改革を進めることで、歳出の編成や財源の確保を目指す方針が示されています。
ポイント | 詳細 |
財政改革 | 財政の持続可能性を高めるための改革 |
社会保障制度の見直し | 少子化対策や高齢化対策を踏まえた制度の再編 |
企業の活性化 | 経済の成長を支えるための企業活性化策 |
投資の促進 | 新しい成長分野への投資を促進 |
参考:内閣府「中長期の経済財政に関する試算(令和5年7月25日経済財政諮問会議提出)」
②持続可能な社会保障制度の構築
2023年の骨太の方針2023において、社会保障制度の持続可能性が強調されています。特に、少子化対策や高齢化の進行に伴い、社会保障制度の適切な見直しが求められています。
ポイント | 詳細 |
社会保障制度の見直し | 少子化や高齢化といった課題に対応した制度の改革 |
財源の確保 | 持続可能な社会保障制度を支えるための財源確保策 |
経済の活性化 | 社会保障制度の持続可能性を高めるための経済成長策 |
地方との連携 | 地方自治体との連携を強化し、地域ごとのニーズに応じたサービス提供 |
(5)当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方
令和6年度の予算編成においては、経済の回復と持続的な成長を目指すための施策を重視しています。その中で、社会保障、地方財政、企業活動の支援など、多岐にわたる領域での取り組みが提案されています。
ポイント | 詳細 |
社会保障の確保 | 社会保障制度の持続可能性を保つための取り組み |
地方財政の強化 | 地方自治体の財政基盤を強化し、多様な地域課題への対応を促進 |
企業活動の支援 | 企業の投資や成長を促進するための施策の拡大 |
財政改革の推進 | 財政健全化のための構造改革を継続的に推進 |
経済の持続的な成長を実現するために、政府は予算編成を通じて、これらの領域での取り組みを強化していく方針を示しています。
参考:
内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~(令和5年6月16日閣議決定)」
内閣府「経済財政運営と改⾰の基本⽅針2023」
3.女性版骨太の方針2023の概要
骨太の方針2023には、女性の活躍をより一層推進するための「女性版骨太の方針」も取り入れられています。これは、女性の活躍と経済成長の好循環を実現することを目的としており、女性の社会進出と活躍、男女差などを無くす目的もあります。
主なポイントは3つです。
(1)女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けた取組の推進
日本の経済成長を持続的に支えるため、女性の更なる活躍を促進していく施策が挙げられています。
- 企業での女性の登用増加:「プライム市場上場企業を対象に、2030年までに女性役員の比率30%以上を目指す」など目標数値設定
- 女性起業家への投資促進、教育機会の均等化
(2)女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の強化
男女が家事・育児等を分担して、ともにライフイベントとキャリア形成を両立できる環境づくりのための施策が盛り込まれています。
- 多様で柔軟な働き方の推進:長時間労働の是正、「男性育休」推進など
- 女性デジタル人材育成やリスキリング
- 地域のニーズに応じた女性活躍を支える各地の「男女共同参画センター」などの強化
(3)女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現
女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現するため、ハラスメント対策などの施策が挙げられています。
- 配偶者などからの暴力対策の強化
- 性犯罪、性暴力対策の強化
- 困難な問題を抱える女性の支援体制整備
- 女性の健康支援:「ナショナルセンター」の創設、フェムテックの利活用など
PoliPoliで公開されている男女共同参画国会関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政策共創プラットフォーム『PoliPoli』では、ママもパパも!望めばみんなが育休取得!政策について、以下のような政策が掲載されています。
あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
(1)ママもパパも!望めばみんなが育休取得!政策の政策提案者
議員名 | 伊藤 孝恵 |
政党 | 参議院議員・国民民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/UjZ0MPl8EOj5dUugcw2M/profile |
(2)ママもパパも!望めばみんなが育休取得!政策の政策目標
政策目標は主に以下の通りです。
- 男性育休が当たり前の日本に
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
- 育休中の収入補填
- 家事育児はママと いう無意識の偏見の払拭
- 男性が育休取 得出来る職場環境の創出
この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。
まとめ
骨太の方針とは、経済や財政の基本的な方向性を示す政府の基本方針であり、毎年6月にまとめられます。この方針を基に翌年度の各省庁の予算編成が行われます。
日本の政治を知る上で、骨太の方針に注目すると政府の方針や狙いがより理解しやすくなるといえます。