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MMT(現代貨幣理論)とは?新しい経済理論を簡単解説

投稿日2020.3.15
最終更新日2020.06.24

MMT(現代貨幣理論)とは、ある条件下で政府は国債をいくらでも発行して良いという考え方を指します。
これは政府債務の拡大(借金を増やすこと)を歓迎する新しい経済理論であり、昨今では経済学者の間で議論や批判の対象になっています。

ニュースなどで耳にするかもしれませんね。
しかしMMT(現代貨幣理論)が具体的にどんな理論なのか、これだけではさっぱりわからないという方もいるでしょう。
そもそも国債とは何なのかわからないという方もいらっしゃると思われます。

そこで今回は

  • MMT(現代貨幣理論)の概要、国債とは何か?
  • MMT(現代貨幣理論)の目的や適用条件
  • 日本の現在の経済体制とMMT(現代貨幣理論)

などについてご紹介させて頂きます。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、MMT(現代貨幣理論)とは

MMT(現代貨幣理論)
MMT(現代貨幣理論)とは、簡単に言うとある条件において国はいくらでも借金(国債発行)をしてもよいという考え方であり、ステファニーケルトンによって提唱されました。

まず国債とは政府の債務(借金)であり、貸しているのは国民になります。
政府は国債が買われるとその金額に利子をつけて買った人に返す、ということを約束しているのでこれが国民に対する借金に当たります。

では国は借りたお金で何をしているのでしょうか。
国は公共事業など(ダムや堤防を造る、道路を舗装する)を行なう必要がありますが、お金が無いと事業は行えません。
この公共事業などの財政政策に国民から借りたお金を使っているのです。

これを踏まえると、MMT(現代貨幣理論)は国に対して沢山借金をして公共事業を起こし、雇用を生み出すべきという考え方になります。

国債について更に詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。

国債費とは?国債(国の借金)について簡単に解説!

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2、MMT(現代貨幣理論)が適用されるとどうなる?

公共政策
理論肯定派の主張では、「MMT(現代貨幣理論)に基づいた経済政策を実施すると景気が良くなる」と言われています。
「景気が良い」というのは、先進国においては緩やかな経済成長が続き、GDPが大きくなることです。

GDPというのは私たちの所得の合計とも言えますから、GDPが大きくなれば私たちが豊かになるということで間違いありません。

では景気が良くなるまでの流れなど、MMT(現代貨幣理論)の目的を整理していきます。

(1)借りたお金で政策を実施

MMT(現代貨幣理論)においては経済政策を打つ主体が政府となります。
原則的に政府債務の拡大を推進する立場なので、国債をどんどん発行し調達した資金で公共事業などの政府支出を行います。

(2)MMTで雇用増加|インフレ

国の経済政策が実施されると雇用が増えます。

公共事業であれば建設業で人手が必要になりますし、教育投資でプログラミングの授業を増やすのであれば、専門知識を持った指導者を募集する必要があります。

そのようにして雇用が増えれば物価が上がります。
これは新しく増えた人材が売上に貢献し企業の業績が上がること、その人が得た給料で消費を行うことという2つの要因があります。

加えて、失業率とインフレ率には負の相関があります。
負の相関とはどちらかの数字が下がれば、もう1つの数字が上がるという意味です。

失業率が下がればインフレ率は上がる仕組みになっており、政府支出によって失業者にもアプローチができれば、経済成長の勢いはさらに加速します。

MMT(現代貨幣理論)の目的はこの様な雇用を繰り返し業績がさらに良くなって給料が上がり…という経済的な好循環です。

(3)デフレ下では市民が消費しない

MMT(現代貨幣理論)ではデフレを嫌います。
デフレとは経済学の定義を元に述べると「一般物価水準の継続的下落」となります。

正しく言い換えると「消費者物価指数が2年ほど下がり続けたらデフレ」となります。
物価とはモノの値段の平均価格のことですが、物価が下がり続けるということはモノが安くなるため良いことと思われがちです。

しかしバーゲンセールなどのように一時的に値段が下がるのではなく、継続的に下落するため、「もっと安くなるまで待っておこう」と国民は消費を控えるようになり、不況が進みます。
加えてデフレは物価が下がることなので、相対的に円の価値が上がっていきます。

従ってモノと円を比較するとデフレ時は円の値打ちが高くなるので、国民は貴重な日本円を手放したくないマインドに陥り、更に消費が行われなくなります。

結果的に企業の業績は悪化し、リストラの増加や低報酬の求人の増加が起き、国民生活にも直接的に悪影響が及びます。

(4)ハイパーインフレについて

ハイパーインフレ
MMT(現代貨幣理論)に反対する立場の人たちからは「MMT(現代貨幣理論)を適用するとハイパーインフレになる」という主張があります。

そもそもハイパーインフレとは急激な物価の上昇のことで、アメリカの経済学者であるフィリップ・ケーガン氏は「インフレ率が毎月50%を超えること」と定義しています。
これがどの様な事態かと言うとお金の価値がとても下がり、物が買えなくなってしまうということです。

これは大きな問題点ですが、日本で仮にMMT(現代貨幣理論)が適用されてもハイパーインフレになる可能性は低いかもしれません。

①日本の現状

現在の内閣総理大臣の安倍首相はアベノミクスという経済政策によりインフレ率2%を目指しています。

経済政策を積極的に行うという点ではMMT(現代貨幣理論)と共通する部分がありますが、施行からかなりの時間が経過しても未だ2%に達していません。

毎月50%を超えるというのは逆に難易度の高い話であると考えられます。
またこれまでの歴史を振り返っても、ハイパーインフレが起きたのは革命や敗戦、生産設備が多数破壊されたなどのケースが多数です。

先進国が経済政策を誤ってハイパーインフレを起こすというのは予測しづらい事態ではあります。

②MMT(現代貨幣理論)の目的と合致しない

MMT(現代貨幣理論)の目的はデフレを脱却し、適度なインフレを維持することです。
つまりハイパーインフレを起こすのが目的でないため、インフレ率が目的値まで上昇したら経済政策をストップさせます。
目標の数値を超えたら財政政策は緊縮させるため、ハイパーインフレは起こりづらいでしょう。

3、MMT(現代貨幣理論)適用条件

銀行

一見すると万能に見えるMMT(現代貨幣理論)ですが、適用するための条件があります。

  • 自国通貨を自国中央銀行で発行できる国
  • ハイパーインフレに陥らない

という2つの要件です。

(1)自国通貨を中央銀行で発行できる

1つ目の条件は「自国通貨を発行できる中央銀行がある国である」ということです。
日本だと自国通貨である日本円を発行できる中央銀行の日本銀行がありますね。

であれば、仮に債務(国債)が現状で返済できそうにない場合、日銀が日本銀行券を刷って返済することができます。
一方で例えばEU加盟国であればどうでしょう。

仮に不況になってしまい、借金を返さなければいけなくなった場合に頼れる彼らの中央銀行は欧州中央銀行です。
自国の中央銀行であれば発券ができますが、欧州中央銀行は加盟国共通のセントラルバンクであるため、一国の都合でユーロを好きに刷ることはできません。

EU加盟国であるギリシャとアルゼンチンは実際、過去にデフォルト(国が借金を返せなくなってしまうこと)しています。
自国の通貨を発行できる中央銀行がなければ、国債を財源とするMMT(現代貨幣理論)の適用は不可能です。

(2)ハイパーインフレに陥らないこと

これは先ほど述べた通りで、先進国においてハイパーインフレが起きる可能性は低いです。
特に日本などではかなり難易度の高いことです。
自国通貨建て国債と通貨の発行できる先進国であればMMT(現代貨幣理論)の適用は可能かもしれません。

4、日本の経済体制とMMT

経済政策
現在の日本の経済政策はアベノミクスの考え方が反映され続けています。
日本中央銀行が金融緩和により世に出るお金を増やし、政府は財政政策によって公共投資を行うといった形です。

第二次安倍政権発足後、国債の発行額は増えていますが、その一方で金利(国債を買った人には利息付きでお金が帰ってきます。その際の利率のこと)は低水準を維持しています。

買い手からすれば低い金利はあまりお得でないので嬉しくありません。
しかし金利が低いままキープされているということは、まだまだ買い手がいる証拠です。

日本の財政が本当に悪いのなら、そんな国の借金を(しかもローリターンなのにも関わらず)わざわざ買いません。
これはまだ国債発行に余裕があることが分かります。

このように金融・財政ともに拡大路線ですが、アベノミクスはMMT(現代貨幣理論)ではありません。
理由にはアベノミクスにおいては金融政策がメインで実施されてきたことと、財務大臣である麻生太郎氏と日銀総裁の黒田東彦氏が明確に否定しているということがあります。

麻生大臣はデフォルトを考慮しないMMT(現代貨幣理論)には懐疑的なようです。

【参考】BLOGOS

日本の財政に大きく関わる財務省についてもご興味がある方は是非以下の記事も併せてご確認下さい。

財務省とは?4つの大きな役割を簡単解説

財務省とは国家予算の編成や税制度の見直しを行う部門です。 ニュースや新聞を見ていると財務省という単語を目にすることがあるかもしれませんが、実際に財務省という機関が何をしているのかわからないので気になる、という方もいらっしゃるかと思われます。 そこで今回は 財務省の概要 財務省の役割 などについてご紹介致します。本記事がお役に立てば幸いです。 1、財務省とは (画像...

まとめ

MMT(現代貨幣理論)とは現代貨幣理論とも呼ばれる新たな経済理論で、政府債務の拡大を容認する斬新な考え方です。
自国通貨建ての国債を財源に大規模な財政政策を続け、デフレを脱却するのが目的になります。

米国の経済学者や評論家や政治家の間など、世界中で話題の経済理論ですが、麻生財務大臣をはじめとする日本の政府関係者はMMT(現代貨幣理論)に対して慎重な姿勢を取り続けています。
これまでの伝統的な経済理論を重んじる主流派からすると衝撃的な内容の理論なのかもしれません。

しかしMMTの提唱者であるケルトン本人は日本がMMTの成功モデルであると言う風に考えているようです。
対照的に日本は緩やかではありますが、消費税の増税を行いながら税収を増やそうとしています。

今後はこの理論がより注目を浴び、更なる研究の必要性がMMT論者から訴えられるでしょう。